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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

タデ原湿原 輪地切りを行いました【くじゅう地域】

2020年09月18日
阿蘇くじゅう国立公園 大島 将貴

こんにちは。

阿蘇くじゅう国立公園と言えば、草原景観が魅力の一つでもあるのですが、この草原の維持のために野焼きが行われています。野焼きは春に行われ、この後の真っ黒になった草原も阿蘇くじゅうを代表する春の景色でもあります。

   

【野焼き】                    【春の野焼き後】

この野焼きを行うために、毎年秋に「輪地切り」を行っています。これは野焼きの時、隣接地の山林や建物に火がうつらないように、草を切っておくものです。また、その後、切った草を燃やす「輪地焼き」を行い、防火帯と呼ばれる幅10メートルほどのラインを作っていきます。

  

【輪地焼き】                   【防火帯】

現在、くじゅうでは猪ノ瀬戸湿原、由布岳、坊ガツル、タデ原湿原・飯田高原周辺、久住高原で野焼きが行われています。昔の形態のまま、地域で野焼きを実行するところもあれば、形態を変え、実行委員会として活動するところなど、様々な歴史をたどりながら野焼きを継続しています。

今回輪地切りを行ったタデ原湿原では、昭和の時代には牛の放牧が行われており、地域での利用がなされていました。地域の共有地として土地を管理し、農繁期以外に各戸が牛を放牧してきました。また、家畜のための干し草、茅葺き屋根を葺き替えるための建材としての利用もなされていました。

  

【干し草を運搬】※長者原VC提供

以前は地域の暮らしに関わっていた草原ですが、放牧の必要のない農業形態、家畜を飼わない生活形態により草原の利用が減少していき、野焼きが中断されていた時期があります。その時期を経て、地域有志の実行委員会により、野焼きを復活させ、現在も継続してタデ原湿原での野焼きが行われています。

 

【昭和36年】※長者原VC提供           【令和2年】

上の写真を見ていただくと、59年の時を経ていますが、当時と変わらず草原が広がっています。様々な課題もありますが、当たり前のように受け継がれてきたものを、当たり前に次の世代に受け継いでいければと思います。

野焼きに関しては、今後の野焼き継続に向けて、課題解決に繋がるように輪地切りや輪地焼き等の作業だけではなく、輪地切り箇所の情報をまとめ、整理することを昨年度から行っています。

今回はタデ原湿原と隣接する建物、森林沿いの輪地切りを地域の観光協会有志で行いました。7月の豪雨の影響で地形が変わってしまった場所などあったのですが、無事作業を終えることが出来ました。引き続き10月に輪地焼きを行います。

【輪地切り作業中】

輪地切り、輪地焼きが終わると、山頂付近から紅葉が始まり、冬へと向かっていきます。

少し肌寒い中、すすきの草原に囲まれて歩くタデ原は最高です。

昼間ももちろん気持ちが良いのですが、早朝、夕方は利用者も少なく特別な時間が味わえます。

最後に、今回長者原ビジターセンターより、やまなみハイウェイができる前のタデ原湿原や、湿原に牛が入っていた時代の貴重な写真を提供して頂きました。ありがとうございました。