アクティブ・レンジャー日記
ツマアカ女王バチ市民駆除大作戦の結果ご報告
2020年08月12日初めまして、この4月から対馬自然保護官事務所厳原事務室ARとして働かせていただいております、加藤と申します。
今回は対馬での「ツマアカ女王バチ駆除大作戦」の結果についてご紹介します。"ツマアカ"とは、ツマアカスズメバチのことで、西はアフガニスタン東は台湾までを自然分布域とする特定外来生物のスズメバチです。日本では2012年にこの対馬で初めて働き蜂が確認され、日本では対馬でのみ定着しています。
ツマアカスズメバチに限らず、特定外来生物はそこに生息する在来種の生態を脅かします。例えば、小笠原諸島の父島・母島で野生化したグリーンアノールは、絶滅危惧ⅠA類に指定されているオガサワラシジミなどの在来種を捕食し被害を与えています。
ではツマアカスズメバチの場合はどうかと言いますと、ツマアカスズメバチは対馬で養蜂に用いられているニホンミツバチを捕食します。ニホンミツバチによって作られる蜂蜜は非常に貴重で、その糖度の高さから卸値が一升あたり2万円を超えることもあるそうです。そのため、ツマアカスズメバチの防除は在来種を守るだけでなく、対馬の伝統を守るための取組みでもあります。
▲対馬の養蜂で用いられる蜂洞(はちどう)。対馬では至る所に設置されている。
この取組みの一環として行われているのが、今回ご紹介する「ツマアカ女王バチ市民駆除大作戦」です。この作戦は、冬眠明けに活動を開始する女王バチを捕獲の対象として、市民の皆様にこれを捕獲するためのトラップを仕掛けていただくというものです。
▲穴を空けたペットボトルにカルピス・水・ドライイーストを混ぜた物を木に吊す。
穴の部分が返しになっており一度入ったツマアカスズメバチは外に出られず溺死する。
今年も多くの方にご協力いただき、対馬全島で推定3,800匹のツマアカ女王バチを捕獲することが出来ました。この場をお借りしてお礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
さて、この結果の評価をしますと、昨年捕獲されたのは約12,000匹だったので、この数字を見ると昨年に比べて生息数がかなり減少しているのではないかと期待できそうです。昨年は台風等の悪天候が重なり、木の上に作る巣の多くが壊されたのではないかと思われ、これが今回の結果に大きな影響を与えていると考えています。これをチャンスと捉え、対馬の豊かな自然とニホンミツバチを守るため、本種の防除により一層取り組んでいきたいと思います。