アクティブ・レンジャー日記
パークボランティア研修「相ノ島調査」
2019年09月30日こんにちは!
佐世保自然保護官事務所の岡山です。
8月3日-8月4日、パークボランティア研修のスタッフとして平戸市宮ノ浦港からチャーター船を利用して20数名の参加者と「相ノ島(新上五島町)調査・研修」に行ってきました。相ノ島は花崗岩がマグマによって持ち上げられてできた島であり、五島列島中通島の東に位置し、宮ノ浦港からは33kmほど離れた場所にあります。無人島の相ノ島ですが昔はヤギの放牧も行っていたそうで、現在も船着き場や神社が残っています。
左:相ノ島全景 / 右:御手洗神社
写真の植物はモロコシソウとハマボッス。前者は海が近い山の木陰などに生え、黄色い花を咲かせます。後者は海岸などに生え、白い花を咲かせます。葉の付き方が互生と対生で異なっている点など、見た目では似ているようには感じないのですが、調べてみると実は両種ともオカトラノオ属に含まれており、近縁種であることがわかりました。
左:モロコシソウ / 右:ハマボッス
1日目の夜、宿泊先の赤尾郷の公民館で五島有川小学校元教諭の吉居氏から、坂本龍馬ゆかりの慰霊碑についてのお話がありました。司馬遼太郎著『竜馬がゆく』には、坂本龍馬が結成した亀山社中の船「ワイル・ウエフ号」が五島の塩屋崎で暴風により沈没し、死者11名、生存者3名の事故があり、亡くなった同志の慰霊碑を建てるため龍馬が五島列島を訪れたという旨の記載があります。五島には塩屋崎という地名はないため、吉居氏を含む3名の教諭たちは潮合崎のことではないかと推測し、現地で偶然出会った老人から事故当時の様子が歌われた俗謡を聴き、ついには江ノ浜にて石碑を見つけることができたという小説のような体験を聞くことができました。吉居氏は最後に、「身近なところにも必ず何らかの研究に足る素材があるのではないか。それらに興味を示し、研究を続けたい。」と話を締めました。
左:坂本龍馬が建てた慰霊碑(新上五島町観光商工課提供) / 右:中通島地図
翌日は、自然や歴史・文化などいくつかの班に分かれて上五島を調査することになり、私は自然観察班に参加しました。中通島の向山では、植物以外にも普段なかなか見られない動物などを見ることができました。
林道で休憩しているとヒナカマキリという小さなカマキリがいました。本種は日本で最も小さいカマキリで、成虫でも20mm程度しかありません。秋に成虫になるので写真の個体はまだ大人になりきれていない高校生くらいといったところのようです。本州、四国、九州などに生息しているため分布域は狭くはないのですが、小さい上に落ち葉などに紛れているので見つけにくく、今回は運良く見つけることができました。
ヒナカマキリ
さらに林道を歩いていると、斜面に白っぽいキノコが生えていました。もしかして、と思い掘ってみると思った通り、ツクツクボウシタケでした。一般的に冬虫夏草と呼ばれるものの一種である本種は、名前の通りツクツクボウシを宿主とする菌類です。国内では東北南部以南で広く確認されていますが、知らないと見逃してしまうので私も実際に見るのは初めてでした。調べるために持ち帰った後、九十九島ビジターセンターに提供し、生体展示コーナーで紹介してもらうことになりました。
左:ツクツクボウシタケ / 右:ビジターセンターでの展示の様子
今回の研修では平戸・九十九島地区での調査では見られなかったものや気づかなかったことを発見することができました。参加者も、普段の活動地域とは離れた島での研修ということで、動植物や歴史、地質など様々な分野について多くの発見があったようで充実した研修になりました。