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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

希少植物の山採り(違法採取、盗掘) 【屋久島地域】

2019年07月02日
屋久島 池田 裕二

 屋久島在住の方から、国立公園内での希少植物の山採り(違法採取、盗掘)について通報を受けました。

 今から40年ほど前の山野草ブームの頃には県外から山採り業者がやってきて、ランの花などを大量に盗掘していったそうですが、現在でも、島内外の愛好家による盗掘が細々と続いているようです。

 自然公園法では、自然公園(国立公園、国定公園等)の特別地域内におけるランや高山植物などを含む指定植物の採取、損傷を禁止しています。特別保護地区では植物の採取等は一切禁止です。また鹿児島県の条例でも指定種があり、それらの採取や損傷等は禁止しています。

 園芸品種を珍重する山野草業界では、花色や葉の模様などの特別な変異の無い野生種の金銭的価値は低く、かつて高価だった品種も栽培増殖品が安価で十分量が出回っている中、なぜ盗掘が無くならないのか不思議です。

 自生地には金銭には代えられない価値がありますし、一度減ってしまった植物たちの回復には長い年月を要するか、あるいは元に戻らないこともあり得ます。実際に、数十年前は屋久島でたくさん見られたという野生ランの多くは、今ではほぼ見られなくなってしまったので、環境省の選定する絶滅危惧種にされているのです。森林開発や山崩れ等の自生地消失もありますが、盗掘による個体数減少も大きな問題です。

 屋久島では、数十年前から現在まで、特にカンラン(寒蘭)、フウラン(風蘭)、ナゴラン(名護蘭)、エビネの仲間、カンアオイの仲間が盗掘で狙われています。

 これらの個体数は激減して、今では滅多に見ることができません。

 もし盗掘が無くなり、自生地が良い状態で保たれていれば、今から100年後、200年後にはかつて見られたような希少植物の花咲く森が復活しているかもしれません。

 期待を込めて、今ある自生地を大切に守っていきたいですね。

▼細々と生きているカンアオイの仲間を見つけました。個体数はとても少ないです。

オニカンアオイ