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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

希少な野生植物アオイガワラビを追え!【屋久島地域】

2019年03月11日
屋久島国立公園 池田 裕二

 「種の保存法」で国内希少野生動植物種※に指定されているシダ植物、アオイガワラビの自生地調査を行いました。巨木の残る照葉樹林内で、イスノキやスダジイなどが多く生えています。

アオイガワラビ

▲アオイガワラビ

 アオイガワラビ(青毬蕨)は、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類に指定されている大変貴重な植物で、国内では屋久島にしか自生していません。絶滅危惧ⅠA類というランクは、イリオモテヤマネコやツシマヤマネコと同ランクで、希少な生物に当てはめられます。近年、アオイガワラビの減少率は著しく、100年後の絶滅可能性は100%とされています。

 ワラビと名がありますが山菜として食べることもできるワラビと近い仲間ではなく、容姿が似ていることからそう名付けられたのでしょう。イガという名の通り、葉柄には棘状の鱗片がついているのが特徴です。

 ヤクシカやヤクシマザルなどから身を守るためか、屋久島にはトゲのある植物が多く自生しています。アオイガワラビのトゲは野生動物たちが嫌うほどには鋭く発達していないため、防衛効果のほどはあまりないのかもしれません。

 また、屋久島の林床に生える植物には野生動物が嫌う化学成分を含む植物が多く、苦みや辛み、毒などで動物に食べられないよう身を守っています。屋久島で多くみられるナチシダやコバノシイカグマ、ホソバカナワラビなどはシカが食べることなく、きれいに育っています。よほど不味いのでしょう。植物の生存戦略は面白いですね。アオイガワラビは個体数が減少傾向とのことで、動物が嫌う化学成分が比較的少ないのかもしれませんね。

 通常の巡視では出会うことは稀なアオイガワラビ、今回の調査でその特徴を詳しく観察することができました。シダの同定(種を判別すること)は経験がものをいうので、図鑑を見ただけではわからないことが多いのです。アオイガワラビにはオニヒカゲワラビとの交雑種「ウスゲアオイガワラビ」が存在するそうです。絶滅危惧種を現場でパッと見分けることのできることも、レンジャーやアクティブレンジャーにとって大事なスキルです。

 アオイガワラビはその希少性から、自生地の一部では柵を設置して保護しています。

 絶滅危惧種、希少生物を保護することは生物多様性※の観点から、とても重要なことです。屋久島で見られるような独自の生態系や、今ある自然環境を大切に守っていくことが私たちの未来にとっても必要なことなのです。

アオイガワラビの葉の裏

▲アオイガワラビの羽片の裏側、ソーラスもシダの同定には重要ポイント。

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※昨年9月に国内希少野生動植物種ヤクシマソウについての記事を掲載しました。

こちらもどうぞご覧ください。

【参考:希少な野生植物ヤクシマソウを追え!】

http://kyushu.env.go.jp/blog/2018/09/05/

※生物多様性については屋久島国立公園だよりにも掲載しています。

詳しくはこちらをどうぞご覧ください。

https://www.env.go.jp/park/yakushima/ywhcc/np/np_tayori1807.pdf

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