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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

今年度の出前授業が終わりました 【屋久島地域】

2018年12月04日
屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川

みなさん、こんにちは。

屋久島自然保護官事務所の水川です。

 

先日、今年度最後の出前授業が終了しました。

今年は屋久島町立八幡小学校4年生に全5回、小瀬田小学校5年生に全3回、神山小学校4年生に全6回の授業を実施しました。

八幡小学校3回までの授業については下記バックナンバーをご覧ください。

http://kyushu.env.go.jp/blog/2018/07/post-492.html

 

最初に授業が終了したのは小瀬田小学校でした。

毎年小瀬田小は屋久島東部の田代海岸で授業を行っています。

 

田代海岸は屋久島国立公園になっており、屋久島町指定天然記念物の枕状溶岩やウバメガシなどの海岸林が見られ、ウミガメが産卵に訪れるなど、美しい自然海岸が残っています。

 

田代海岸での授業は1012日。

ビンゴゲームをしながら生き物を探したり、海の水の水質調査をしたり、貝殻採集をして自然と触れ合いました。

 

田代海岸で貝殻採集をする様子

▲貝殻採集の様子。

 

教室で貝の種判別をする様子

▲教室に戻って、拾った貝の種判別と標本作成。

図鑑や標本とにらめっこして採集した貝の名前を調べています。

 

田代海岸の生き物地図を作成する様子

▲最後は田代海岸の生き物地図を作成しました。

 

翌週の1019日は、八幡小の最終授業で西部地域に行ってきました。

世界自然遺産エリアである西部地域は、世界遺産になった理由の一つ、植生の垂直分布を見ることができます。

また、西部地域は屋久島で最もサルやシカが多く生息する場所で、観察に適した場所です。

一方で、シカが増えすぎていることから植生に影響が出ている場所でもあります。

 

西部地域で植生の垂直分布を観察する様子

▲まずは植生の垂直分布を見学。

海岸付近の亜熱帯性植物、目線の高さの山肌には照葉樹が広がり、標高が上がるにつれてスギやマツなどの針葉樹が現れ、山頂は厳しい気候条件から背の高い木は育たず、風衝低木林やササに置き換わります。

このように、標高に応じて異なる植生が分布することを植生の垂直分布と呼び、これが海岸から山頂まで途切れることなく残っている屋久島の生態系は、顕著な普遍的価値として世界に認めらています。

 

シカを観察する児童

▲シカを観察する児童。

 

シカを間近で観察する児童

▲シカが児童に大接近!そして突然児童の目の前で「フィーヨーッ!!」と大きな声で鳴きました。

これには皆驚き唖然...。

発情期真っ只中のオスジカが縄張りを主張したのでしょう。貴重な体験でした。

 

シカの糞を採集する児童

▲シカ糞とサル糞も採集。

 

沢で糞を洗う様子

▲沢で糞を洗って...

 

洗った糞の内容物を観察する様子

▲内容物を観察。

 

サル糞とシカ糞の内容物

▲サル糞(左)からは消化できていない葉や実の種子や皮が出てきました。

シカ糞(右)からは消化されて細かくなった葉の繊維が出てきました。

 

糞について考察する児童

▲なぜサルとシカの糞がこんなに違うのだろう?植物と動物の関係は?など、糞から様々な考察ができました。 

 

翌週の1026日には神山小の野外授業の第一回目があり、栗生塚崎海岸に行ってきました。

 

栗生塚崎海岸でビンゴゲームをする様子

▲ビンゴゲームをしながら生き物探し。

 

浜にあった生き物の足跡

▲浜には様々な生き物の足跡がありました。

 

海岸清掃の様子

▲レンジャーのお仕事体験として、海岸清掃をしてもらいました。

台風後ということもあって、浜にはたくさんのゴミが漂着していました。

わずか5分間で大量のゴミが集まりました(右)。

 

児童が作成した海岸の地図

▲教室に帰って海岸の生き物地図を作りました。どの班も個性的で、特に「すなはまっプ」はナイスなネーミングセンスで思わず笑ってしまいました!

 

さらに翌週の11月6日は神山小のふるさと先生授業でした。

ふるさと先生授業とは、地域が育む「かごしまの教育」県民週間中における学校自由参観日の授業の一つで、地域で活動している人を講師に招き、各学年特色ある授業を展開する神山小独自のものです。

毎年4年生のふるさと先生授業に呼んで頂いており、生き物どうしのつながりについて授業をしています。

 

ふるさと先生授業の様子

▲前回の授業で作成した栗生塚崎海岸の地図を使って、地図内の生き物とそのエサとなる生き物を糸でつなげるゲームをしました。つなげていくと、糸がとても複雑に絡み合っていきました。

児童は「ゴチャゴチャになっちゃったよ~。」「訳が分からない!」と嘆きましたが、これでいいのです!

これこそが生き物どうしのつながり。

全く関係ないと思う生き物も、実は複雑につながり関わり合っているのです。

 

最後は、ある生き物が地球からいなくなったと仮定してその生き物の糸を外してみました。

 

ふるさと先生授業の様子

▲糸を外す様子。

 

すると、糸は全部の生き物につながっており、全部の生き物がいなくなってしまいました。

「人間だけで生きていくことはできない。」「たくさんの生き物に支えられている。」「生き物はつながっているからどの生き物もいなくなってはいけない。」と学びました。

 

翌週の1113日には、神山小で西部地域の事前学習を行いました。

今年度から、西部地域の授業の前に、ヤクシカやヤクシマザルの生態、観察の仕方などの事前学習を取り入れることにしました。

 

教室でエゾシカとヤクシカの頭骨を見比べる様子

▲エゾシカとヤクシカの頭骨を持参して児童に見てもらいました。

並べると大きさの違いが歴然でみんな驚いていました!

 

サルとシカへの興味が沸々と湧いたところで、いよいよ最終授業!

1127日に西部地域に出かけました。

 

西部地域にいたサル

▲西部地域に入ってすぐにサルの群れに遭遇!

 

植生保護柵の見学

▲植生保護柵の中と外の林床植生の違いを観察していると...

 

柵の外から中をじっと見つめるシカ

▲柵内に入れる私たちが羨ましかったのか、シカ達が柵のまわりに集まってきて、じーっとこちらを見ていました。

 

そして教室に戻って班ごとに巨大な調査報告書を作成して発表しました。

  

発表の様子

▲発表の様子。

 

わずか1時間でどの班もしっかりまとめました。

児童のみなさんのまとめる力、表現力には大変驚かされました。

 

児童が作成した調査報告書

児童が作成した調査報告書

児童が作成した調査報告書

児童が作成した調査報告書

▲4つの班の調査報告書。

 

こうして今年度の出前授業は全て無事終了しました。

屋久島ならではの貴重な体験ができたと先生方にもおっしゃっていただきました。

こうした機会は屋久島の子ども達にとって重要だと改めて感じました。

来年度はどんな子ども達に会えるかな~