アクティブ・レンジャー日記
ツシマウラボシシジミ 【対馬厳原地域】
2018年07月02日こんにちは。対馬厳原事務室の近藤です。
先日、生息地を調査してきましたので、今回はツシマウラボシシジミについて紹介したいと思います。
ツシマウラボシシジミの標本
ツシマウラボシシジミは、日本国内では対馬にしか生息していない固有亜種のチョウです。昔は特に珍しくないチョウだったそうですが、2013年に調査を行ったところ、ごく限られた場所でしか生息しておらず、絶滅の危機に瀕していることが分かりました。
そのため、2017年1月に種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定、同じ年の3月に公表された環境省レッドリスト2017では絶滅危惧Ⅱ類から絶滅危惧IA類にカテゴリーが見直され、現在、ツシマウラボシシジミの保護増殖事業が進められています。
現地を見て分かったのは、ツシマウラボシシジミは植生の影響を受けるということです。幼虫の頃に食べる草、成虫になった際に蜜を吸う花がないとこのチョウは生きていけません。幼虫はヌスビトハギやその仲間の植物を食べ、成虫になって蜜を吸う花も限られるそうです。
ツシマウラボシシジミの食草であるヌスビトハギの仲間
これらの植物は、島内で個体数が増えて大きな問題になっているシカの食害を受けており、これによりツシマウラボシジミの生息環境が悪化し、個体数が激減したと言われています。
現在では、食草の植栽、シカ柵の設置、森林の間伐などによる生息環境の改善のほか、島外で個体を繁殖させて対馬島内に野生復帰させるなど、ツシマウラボシシジミの絶滅を防ぐために関係機関で様々な取組みが行われています。
将来、対馬の森の中でひらひらと舞う姿を普通に見ることができる。そうなって欲しいと思いました。
左:卵、中央:幼虫、右:メス成虫
7月から東京・上野の国立科学博物館で開催される特別展「昆虫」でも、ツシマウラボシシジミが一部取り上げられるようなので、機会がありましたら、見てみてください。
国立科学博物館特別展「昆虫」ホームページ