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アクティブ・レンジャー日記

野鳥のヒナを拾わないで!【屋久島地域】

2018年05月21日
屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川

みなさん、こんにちは!

屋久島自然保護官事務所の水川です。

先日、友人から「巣から落ちていたヒナを保護したから飼育の仕方を教えてほしい。」と電話がかかってきました。

 

落ちていた野鳥のヒナ

▲落ちていたヒナ。

 

私はすぐに元の場所に戻すよう伝えました。

野生鳥獣を無断で捕獲・飼育することは鳥獣法で禁止されています。

ただ、元に戻すよう伝えたのは他にも理由があります。

 

春から初夏、まさに今の時期は、野鳥の子育てシーズンです。

この時期、巣立ち直後のヒナが地面に落ちていることがあります。

まだうまく飛べず、じっとしているので、巣から落ちてしまったのか、親鳥とはぐれたのかと心配になる方がいるかもしれませんね。

でも、「元気になるまで家で育ててあげよう!」と、家に連れて帰ってはいけません。

 

実は、野鳥のヒナは、ある程度大きくなると、巣から出て兄弟や親鳥と飛んだり餌をとる練習をします。

もちろんまだ上手に飛べないので、地面に落ちてしまうこともあります。

でも大丈夫。必ず親鳥が近くにいます。

親鳥は一緒にいる時間を徐々に減らして自立を促すので、ヒナが一羽でいることも多いですが、ヒナの元にちゃんとエサも運んできます。

仮に人の手で育てたら、そのヒナはどうなるでしょうか?

野生動物を育てるのは想像をはるかに超えて難しいです。

1日に何度も何度も餌を与えなければなりません。

人間よりも体温が高い動物は温める必要があるかもしれません。

また野生動物にとって人間に捕まえられることは大きなストレスです。保護されて嬉しいと感じることはありません。

 

また、人に育てられた生き物は、野生に復帰できるでしょうか?

人は、餌のとり方、飛び方、天敵を教えてあげることができません。

その子は厳しい自然界で生き延びる術を備えることなく育ちます。

人に慣れてしまった生き物は、人間との適度な距離が保てず、問題を引き起こしたり、トラブルに巻き込まれることもあります。

最終的に、その生き物にとって不幸なことになることもあるのです。

 

野生動物は自然の中で生きるのが原則です。

厳しい自然界では失われる命もたくさんあります。

ケガや病気をした野生動物を人が助けたいと思う気持ちもよく分かりますが、失われる命は食物連鎖によって他の命の助けになることもきちんと理解しましょう。

 

これからの時期、野鳥のヒナを見かけることがあるかもしれませんが、大人になるための大切な訓練期間なので、そっと見守ってください。

 

もし羽が生えていない生まれたばかりのヒナが巣の下に落ちていたら、巣に戻してあげてもいいでしょう。

人の臭いがついても親鳥がヒナを見捨てることはないと言われていますが、安全面や衛生面から手袋は必ずはめましょう。

 

保護対象になっている希少種が傷ついていたり、人間のイタズラや虐待など事件性が疑われる傷病鳥獣を発見した場合は、各都道府県に相談してみましょう。

 

日本野鳥の会HPに詳しい情報が掲載されています。

【日本野鳥の会HPhttps://www.birdfan.net/about/faq/find_hina.html

 

友人がヒナを元の場所に戻しに行くと、ヒナが大きな声で鳴き、親鳥がすぐに駆け付けたそうです。