アクティブ・レンジャー日記
雲仙のミヤマキリシマを守る。【雲仙地域】
2017年08月18日はじめまして。
平成29年4月から、雲仙自然保護官事務所でアクティブレンジャーをしています。
永峰です。よろしくお願いします。
さて、皆さま、「ミヤマキリシマ」という植物をご存知でしょうか?
九州ではかなりメジャーな花なので、そんなことを聞くと何を今さら、と言われそうですが軽く説明させて下さい。
▲ミヤマキリシマ
「ミヤマキリシマ」は、九州各地の高山で見られるツツジの一種で、花期の5月にはピンク色の花が山一面に広がる景色が見られます。
平地で見られるツツジよりも、葉っぱも花も小さいのが特徴です。
毎年この花を見るのを楽しみにしている方も多く、私が雲仙に来たばかりの頃は、いろんな方から「ミヤマキリシマはいつが見ごろなの?」と聞かれました。
雲仙市の花にも指定されていて、地元の方からは「雲仙つつじ」とも呼ばれて親しまれています。
さて、そんないろいろな方から愛されるミヤマキリシマですが、雲仙では昔に比べるとその数が減って来ています。
なぜかと言うと、放牧が減ってきているからです。
かつて島原半島の山岳地域では、牛馬の放牧が行われており、広大な草原が広がっていました。
牛や馬は生えてくる草や木の芽を食べましたが、毒があるミヤマキリシマの葉は食べなかったため、ミヤマキリシマは草原の中で生き残り、群落を作っていたのです。
しかし、近年、馬の需要が減り、牛が牛舎で飼われるようになってきて放牧が減っていくと、今まで牛や馬が食べていた草や木の芽が大きくなっていきました。
それらはどんどん大きくなり、ヤブになり、森になろうとしています。
そうなってしまうと、ミヤマキリシマは他の植物の成長に負けてしまって、光に当たることができず、枯れてしまいます。
そんな、「放牧という人の営み」と「ミヤマキリシマという自然」が両立する素晴らしい環境を、このまま衰退させてはいけないと、雲仙の「田代原」ではNPO法人「奥雲仙の自然を守る会」の皆さんが日々活動をされています。
「田代原」は雲仙地域の中で唯一、放牧によってミヤマキリシマが保たれている場所なのです。
▲「田代原」の放牧草原とミヤマキリシマ。人懐っこく、近付くと寄ってきたりもします。
しかし、牛の放牧頭数は減ってきており、田代原でも放牧だけでのミヤマキリシマの維持は困難で、人の手で草刈りを行っています。
その活動に、雲仙のパークボランティアも参加させて頂いています!
去る7月23日(日)も、燦々と降り注ぐ太陽のもと、雲仙パークボランティアと奥雲仙の自然を守る会、長崎大学の有志の方たちで、ミヤマキリシマ周辺の草刈りを行いました。
この時期の草は本当に元気な上に、トゲのあるものやツタ状のものも多く、間違ってミヤマキリシマを傷付けてしまわないように注意しながらの作業でしたが、普段から活動されているNPO法人「奥雲仙の自然を守る会」の皆さんは慣れた手つきでどんどん草を刈っていました!
大学生の方ももくもくと作業を頑張っていて、周りにも気を利かせてすごくよく働いていました!地元の若い人たちが、こうして一生懸命頑張っている姿はとても頼もしかったです!
▲作業の様子。炎天下の中、皆さん集中して頑張っています!
▲九千部岳と刈った草の山の前で集合写真。皆さん、いい顔をされています。
こういった保全活動は一人の力では続けていけません。
もっとたくさんの方に、興味を持って参加して頂けたらな、と思います。
NPO法人「奥雲仙の自然を守る会」は、日々さまざまな自然体験や農業体験、イベントなどを行っています。興味のある方は、ぜひホームページをのぞいてみて下さい!
【NPO法人「奥雲仙の自然を守る会」ホームページ】
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