アクティブ・レンジャー日記
交通事故における野生動物へのダメージ【やんばる地域】
2017年07月11日やんばる自然保護官事務所の皆藤です。
梅雨が明けました!!ここ最近やんばるでは、本格的に暑い日が続いており、早くも夏真っ盛りという印象です。
先月、6月22日に県道2号線にて交通事故に遭い救護されたヤンバルクイナが治療を受け回復したため、6月27日に放鳥(ほうちょう)を行いました。交通事故にあったヤンバルクイナを放鳥するのは今年で2件目になります。今年はヤンバルクイナの交通事故が現時点で合計17件発生していますが、残りの15件は死亡13件、治療中2件となっており、放鳥までこぎ着けられる個体は非常にまれです。
▶猛ダッシュで森へ帰っていく救護されたヤンバルクイナ(2017年6月27日撮影)
▶あっという間にやんばるの森の中へ消えていきました(2017年6月27日撮影)
実は今回の交通事故、野生動物のロードキル被害の防止を考える上で、学ぶことが非常に多い1件でした。この個体は、「ヤンバルクイナを轢いてしまった!」と、ドライバーから直接連絡を受けて救護されました。この方は自然関係のお仕事をされている方で、普段からロードキルに気を付けて低速で運転されていたそうです。しかしながら、このときはヤンバルクイナが車に向かって飛び出してきて、避けきれずにぶつかってしまったそうです。
▶事故現場。向かって右手側からヤンバルクイナが飛び出してきたとのこと(2017年7月8日撮影)
ヤンバルクイナの交通事故現場は、道路に血や羽、ときには内蔵が散乱しており、個体はすでに手遅れ、というケースが大半です。しかしながら、今回のケースの場合、現場にはそれらが何もありませんでした。轢かれた個体はというと、車にぶつかった後、路上でジタバタしているところをすぐに保護され、2時間後には動物病院で治療が開始、5日後には放鳥となりました。こうした状況は、交通事故発生時のヤンバルクイナへのダメージがとても少なかったことを物語っています。
一口に"交通事故"といっても、個々のケースの実態は千差万別です。ここが大変重要なポイントで、安全運転を心がけるべき真の意義が見いだされてきます。すなわち、
"衝突する時の車の速度が遅ければ、ヤンバルクイナへのダメージを大幅に減らせる"
という紛うことなき事実が、今回の1件から改めて示されました。
野生動物が時として車に向かって猛スピードで飛び出してくることがある以上、どんなに見通しの良い道路で、どんなに気を付けていても、誰でも希少野生動物との交通事故を起こしてしまう可能性があります。速度を落としたからといって交通事故に遭うリスクをゼロにすることはできませんが、少しだけ速度を落として運転するだけで、交通事故から救われる命がたくさんあります。希少野生動物を不可抗力で轢いてしまっても罪に問われることはありません。万が一、轢いてしまったら、お手数ですが、すぐに野生生物保護センターへご連絡ください。