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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

春の訪れ~猪の瀬戸湿原野焼き~【くじゅう地域】

2017年03月03日
くじゅう 兒島音衣

先日、猪の瀬戸湿原の野焼きに参加してきました。ARとして参加したものでは今年初めてです。猪の瀬戸湿原では野焼きを毎年2月の終わり頃に行なっており、例年天気の心配だけでなく残雪の心配もあるのですが、今年は暖かく、好天が続いたおかげで、草はよく乾いていてよく燃えました。

たくさんのボランティアが持ち場につき、トランシーバーで連絡を取り合いながら作業を進めていきました。


夏に作った輪地がしっかりと防火帯の役目を果たします。燃え残った小さな火はボランティアによって消し止められます。その時に使うのが背中に背負ったジェットシューター(水の入ったリュック)です。


▲ものすごい炎があっという間に草を燃やしていきます。最初は無風だったのが、炎によって上昇気流が発生して風が吹いてきました。写真はありませんが、上空には猛禽類が飛んでいて、慌てて飛び出してくる小動物を狙っていました(去年はイノシシが飛び出てきたそうです)

みなさんは猪の瀬戸湿原をご存知でしょうか?

国道11号線・やまなみハイウェイ沿いの、由布岳と鶴見岳の山間にある小規模な湿原です。北西側に見える由布岳、北東の鶴見岳から水が流れ込んでいて、豊富な水量から湿原内にも何筋も川が流れています。湿原という繊細な環境で生息する貴重な植生を有するため、国立公園の中でも重要な場所として位置づけられています。

草原や湿原を維持するためには野焼きが重要なのですが、この場所での野焼きは一時中断されていました。


▲野焼きには多くの人の手が必要。事前に何度も話し合いをし、作業の確認を行います。一歩間違えれば死亡する可能性もある危険な作業だからです。

1960年代までは地域の住民らが放牧を行っていたため、昔から野焼きが行われていました。しかし様々な理由によって野焼きが行われなくなり、森林化がすすんでいました。

1995年頃に湿原の保全、野焼きの復活をしようという動きがあり、2005年から野焼きの実施に向けた調査や準備が進められてきました。その中心となっているのが「猪の瀬戸湿原保全の会」と「城島高原オペレーションズ」です。湿原内に進入してきた樹木の伐採、大量の不法投棄のゴミの撤去、外来種の駆除活動などに加え、植生調査、野鳥調査などを行い、野焼きを行うことの効果についてもデータとして蓄積、研究しています。

猪の瀬戸湿原で野焼きが復活して今年で6年目になります。少しずつ焼く範囲が広がっており、昔のような湿原の姿を取り戻しています。


▲野焼きのあとは真っ黒な大地となります。しかしよく見てみると、草の根までは焼けていません。

自然観察ができるトレッキングルートもあるので、野焼き後の湿原の散策をしてみてはいかがでしょうか。灰の下から新芽が顔を出しているかもしれませんね。

猪の瀬戸湿原保全の会では自然観察会を行っていますので、興味のある方はそちらもどうぞ!

黒い大地に、緑が増えていく、これからの季節が楽しみですね♪