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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州特産物リレー3月 ~あか牛料理~【阿蘇地域】

2017年03月31日
阿蘇くじゅう国立公園 アクティブレンジャー 藤田

=== 地元高校生が提案する阿蘇ブランドの料理! ===

こんにちは、阿蘇事務所の藤田です。1年間リレー形式で取り組んできた『九州特産物リレー』も最終回となりました。各地の特産物は、「ご当地に行って味わってみたい~!」と思うものばかりでした。食も文化も風景も、五感を豊かにしてくれる九州ってサイコーですね!

さて、阿蘇からは『肥後のあか牛』についてご紹介したいと思います。

 

 

 幾度となく繰り返されてきた巨大噴火により、九州の真ん中にできた大きなカルデラ地帯には、阿蘇五岳と称される中央火口丘群が連なり、その周辺には約22,000haもの広大な草原が広がっています。

 現在の日本の国土で草原の占める割合は約1%、そのほとんどが阿蘇にあると言われています。

全国の草原を見てみると、人工的に作られた草地である改良草地が3/4を占めているのに対し、阿蘇では、野草地が全体の3/4を占めているのが特徴です。

 

 火山の恵みのひとつ、豊富な水資源を利用して農耕文化が栄えてきました。約千年前に作成された平安時代の法律書『延喜式』の中に阿蘇の草原の記述が見られます。これには、「肥後の国の二重牧の馬は、他の群より優れた馬があれば都に献上し、他は太宰府の兵馬及び肥後国その他の国の駅馬として常備するように(意訳)」と記されています。このことから、当時阿蘇では優れた馬を生産する牧があり、その名が中央政権まで知られていたことが読み取れます。

 (ちなみに、この牧と思われる草原を管理している地域で刈り干し切りや野焼きなどの手伝いに出ることもありました)

 

 阿蘇の草原は、人が生活や農畜産業のために「放牧・採草・野焼き」など手を入れることにより、日本最大の規模を誇る野草を主体とした草原景観と、多様な動植物が生息・生育する豊かな草原環境が維持されてきました。そこには、牛馬を利用した農業生産と草資源の循環という、地域の文化が育まれてきました。

また、阿蘇での農業は火山灰土壌、高冷地という厳しい条件の下で、耕作の労働力であった牛馬の放牧や飼料用の草を得るための場、緑肥や堆肥・きゅう肥の生産の場として利用され、水田耕作や畑作とも密接に結びついてきました。現在でも、阿蘇は九州でも有数の肉用牛の生産地であり、草原は農畜産業を支える基盤となっています。

 

 芸術的な!?牛が草を食べながら歩いてできた牛道

 

 広大な草原に牛がのんびりと草を食む姿は、観光に訪れる人々を魅了する阿蘇ならではの風景です。みどりの草原に栄えるあか牛は、明治44年から阿蘇市にある熊本県立阿蘇中央高校(旧県立阿蘇農業高等学校)にて「スイス原産のシンメンタール種」と在来種を交配し、改良を重ねた固有種で、現在の「赤毛和種」として流通するようになりました。性格が穏やかで粗食に耐え、寒さに強く放牧に適するという育てやすい特徴があるものの、牛肉は筋肉質で固く、食用には向かないとされ、当時は役牛として用いられていました。

 近年、食生活の変化により肉用牛としてブランド化が進められています。

 (環境省阿蘇の草原ハンドブック、阿蘇草原再生全体構想第2期より一部抜粋)

 

【あか牛肉の特徴】

 ・広々とした草原で自由に動き回り、ストレスが少ない。

 ・主食は、繊維質たっぷりの野草

 ・脂肪分が少なく、旨みが多い、赤身主体の肉質。

 ・赤身肉には、タンパク質と鉄分(ヘム鉄)が多く含まれている。 

 ・ヘルシーで、ダイエットにも有効。お腹にもたれにくい。

  

 

 

草原にいるのは、主に母牛と子牛

 

 

 そこで、阿蘇の草原の利活用とあか牛の消費を増やすことを目的に、県立阿蘇中央高校農業食品科2年生がアイディアを出し合い、あか牛や地元食材を使った創作料理を提案し、地元の観光関係者や生産者を対象に試食会を実施されています。

 この取り組みは、県の阿蘇世界文化遺産登録推進教育モデル校事業として今年で5年目となり、これまでに7品が商品化され「道の駅阿蘇」などで販売されています。

 

 

 

 

 

写真提供:阿蘇中央高校

 

今年も、地元食材とあか牛をつかった料理7品が紹介されました。 

◆パプリカとブロッコリーで溶岩と草原を表現した「阿蘇火乃山あか牛丼」

◆あか牛ひき肉のシュウマイ

◆あか牛ひき肉と高菜を混ぜたご飯を油揚げに詰めた「阿蘇のあか牛田舎揚げ」

◆阿蘇産トマトソースのスコッチエッグ

◆阿蘇の米を使ったライスバーガー

◆きびご飯のビビンバ

 

 

  

 

◆あか牛ひき肉と波野産のそば粉を利用した「阿蘇ガレット」

  

  

 

昨年のあか牛料理

  

 どれも食べてみたいメニューですね!

 (注)お昼前に見るとお腹がグ~グ~鳴ります(^_^;)

 

 

  

 

 そば粉ガレットを考案したお二人から、「肉が苦手な人にも食べられるような料理を作りました。」

「おいしく食べてもらえたらうれしいです。」

  

 

 担当の後藤先生は、阿蘇の食材を阿蘇で消費できる環境づくりを目指すことで、新しい景観づくりや畜産や米・野菜など就農する生徒を増やしていくことで、阿蘇の担い手育成に繋げていけたら・・・と熱く夢を語ってくださいました。

 

 参加者のアンケートからも「がっつりあか牛を食べている感じがした」「食材のバランス、味、見栄えが大変よかった」「店頭で並べられていたら気になるメニュー」など、高い評価が得られています。

 また、多くの方が「地元の高校生が地域の名産品を使った料理を考え、地元のすばらしさを伝えることがなにより効果的!!」「若いアイディアが新鮮!」との声があげられていました。

この中から、店舗、ホテル、旅館等でメニュー化されるかもしれませんよ!

 

 私たちが取り組んでいる草原環境学習を、小中学校で学んだ子どもたちが地元の活性化や草原再生に取り組んでくれるかも!?と夢を膨らませつつ、阿蘇の未来を語っていきたいと思いました。

 

 阿蘇では、あか牛丼やあか牛ハンバーグ、焼き肉などのメニューを取り扱う店舗が増えています。阿蘇に来られたときは、ぜひ立ち寄られてくださいね♪