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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

ヨナグニマルバネクワガタの生息木調査【石垣地域】

2017年01月31日
西表石垣国立公園 アクティブレンジャー 仲本

沖縄気象台によると、沖縄地方の2017年1月の平均気温が1946年の統計開始以降、最高を更新したと発表がありました。今年の1月上旬は石垣地域もびっくりするほど暖かく、半袖シャツでも過ごせるほどの日もありました。

さて、今回は国内希少野生動植物に指定され、与那国島のみに生息しているヨナグニマルバネクワガタの調査について、ご紹介したいと思います。

与那国島は、小さな島ですが島固有の動植物が数多く生息する亜熱帯の大自然に恵まれた日本最西端の島です。与那国馬が放牧されている広大な牧場や岩肌むき出しの断崖、サンゴ礁と白い砂浜など島ならではの素晴らしい景観が広がっています。

▲与那国馬が放牧されている広大な牧場

近年は、台風が何度も与那国島を直撃して、一昨年は最大瞬間風速81mを記録した猛烈な台風が与那国島を襲来しました。このような強い台風が度重なり、ヨナグニマルバネクワガタが生息するスダジイが倒木しています。過去には、土地改変などによるスダジイ林の伐採で生息地が脅かされ、種の保存法で国内希少野生動植物種に指定される以前の販売目的の採集圧によって個体数もかなり減少しています。

今回の調査は、専門家の先生のご指導のもと、ヨナグニマルバネクワガタの生息環境や生息木の状況を把握するために行った調査です。調査は、地元の方に調査員となって頂き、まず調査の方法を学ぶ講習会を行いました。その後、2日間実際に山に入り、どれだけヨナグニマルバネクワガタにとって生息しやすいスダジイが生育しているのかを調べました。

▲生息木調査の様子

調査中、小さな沢に大きなアメンボが集まっていました。それは、トゲアシアメンボと呼ばれる日本では与那国島にしか生息していないアメンボでした。オスのほうがひとまわり大きく、あしにトゲがあることが名前の由来です。成虫は赤色の羽を広げて水面から直接飛び立ちます。最近では、農家の高齢化などが進み、生き物が棲みやすい水田などが減ってきているため、アメンボなどの水生昆虫が減少しています。

▲水面に浮かぶトゲアシアメンボ

たくさんの大きなキクラゲも発見しました。朝方に降った雨のおかげで大きくかさが開き、おいしそうでした。与那国島ではキクラゲのことを「みんぶる=耳たぶ」と呼ぶそうです。

▲自生したキクラゲ

鳥獣保護区の制札の建て替え作業も行いました。台風で根元から折れたり曲がったりしていたためです。時間のない中で、建て替え作業を行うのは一苦労でしたが、必要なすべての制札を建て替えることができました。

▲鳥獣保護区の制札の建て替え作業

今回の調査では、台風にも負けずにたくましく生育しているスダジイ林を確認することができました。今後の調査でも健全なスダジイ林とそこに生息するヨナグニマルバネクワガタがいつまでも確認できるよう島の皆さんと一緒に保全施策を考えていきたいと思います。