アクティブ・レンジャー日記
正月行事~鬼火(おにび)たき~【屋久島地域】
2017年01月16日明けましておめでとうございます。
屋久島自然保護官事務所の水川です。
2017年も、アクティブレンジャー日記【九州地区】をよろしくお願いします!
さて、私の2017年最初の日記は1月7日に屋久島で行われたお正月の伝統行事「鬼火たき」についての紹介です。
鬼火たき(焚き)とは九州地方に伝わる正月の伝統行事で、正月飾りなどを燃やして悪霊を払い、無病息災や一年の幸せを願うものですが、「どんど焼き・とんど焼き・左義長」など様々な呼び名で全国各地でも行われていることでしょう。
屋久島では毎年1月7日に行われており、今年は私も朝の準備から参加してきました。
屋久島の鬼火たきは集落ごとに行われ、モウソウ竹やコサン竹(布袋竹)を組んで、てっぺんに鬼の顔が描かれた旗を掲げて燃やすのですが、中でも原(はるお)集落の鬼火たきはとても手が込んでいます。
なんと十数メートルのスギの木を鬼火の芯に使うのです。
▲芯になるスギの木。原集落の鬼火の準備はバックホーまで出動する大仕事となります。
スギの周囲には十数本ものモウソウ竹を取り付け、モウソウ竹の周囲にはコサン竹を取り付けます。
▲スギにモウソウ竹とコサン竹を取り付ける様子。太く大きな竹がモウソウ竹、細く小さな竹がコサン竹です。
まだ終わりません。外側にコサン竹がびっしりと取り付けられた柱に、今度はウバメガシの枝を一本一本手で刺し込んでいくのです。
▲コサン竹を取り付ける右側の人達とウバメガシを刺していく左側の人達。
▲柱にウバメガシの枝を刺し込む様子。柱を立てた時に枝が飛び出ていると格好が悪いので、枝の傾きが柱の中央に向くように刺していきます。根気の要る作業です。
ウバメガシの枝を柱全体に刺し終えたら、いよいよ柱を立てます。
▲柱を立てる様子。バックホーでゆっくり引っ張り、徐々に柱を立ち上げていきます。
驚くのはそのバランス!
巨大な柱を支えるのは四方向に張った細い番線のみで、柱は地面に固定されていないのです。
こうして鬼火の柱は立ち、あとは根元に竹や各家庭の正月飾りを積み上げて完成です。
▲完成した鬼火。てっぺんには鬼の顔が描かれた旗がついています。
火入れの時を待ち、静かにたたずんでいます。
夕方、人々が集まりいよいよ火入れです。
通常は七草祝いをした集落の子どもの役目ですが、今年は強風で危険だったため青年団が火をつけました。
▲火をつける様子。
▲鬼火たきの様子。バチバチ、ゴーゴー、パンパンと、ものすごい音と勢いで燃えました。
この音と火で悪霊(鬼)を退治するのです。
そして各家庭は、ウバメガシや竹の葉、割木を束にしたものをこの火で半分焼いて持ち帰ります。
持ち帰った束を家で再度燃やすことで、まだ家に残っているかもしれない悪霊を払います。
魔除けとして玄関に置いたりもします。
▲葉と割木の束を燃やす様子。
こうして集落からも家庭からも鬼はいなくなり、一年の無病息災と一家の幸福を願い、新たな年が始まるのです。
鬼火たきを終えた夜は、子どもや青年が各家庭を回り、大きな声で祝い歌を合唱します。
「祝い申そう」や「くせもんいい」や「門回り」といいます。
小班に分かれて家々を回るので、集落内のあちらこちらに、太くたくましい青年の歌声と活き活きと若さあふれる子どもの歌声が縁起良く響きます。
今年も皆さんにたくさんの幸福が訪れることでしょう(^^)
古くから受け継がれる地域の伝統行事、大切にしたいですね。
みなさんの地域にはどんな行事がありますか?