九州地域のアイコン

九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

西海国立公園平戸・九十九島地域子どもパークレンジャー

2016年11月17日
佐世保 佐伯信吾

西海国立公園平戸・九十九島地域子どもパークレンジャー

「九十九島あそびたい」実施

10月14日(金)、環境省子どもパークレンジャー事業の一環として赤崎小学校3年生の児童を対象に、総合的な学習の時間を活用し長尾半島で自然で遊ぶ会(あそびたい)を実施しました。

レベルブックに添付された長尾半島の地図

長尾半島は、西海国立公園の表玄関、鹿子前集団施設地区の一角にある無人の半島です。また、赤崎小学校は、児童の縄張りにあります。地域の豊かな自然とそこに棲息する動植物と友達になり、自分達の遊び場が国立公園であることを認識して西海国立公園を故郷自慢にすることを目的として実施しました。

植物は、シャリンバイ、ツクシハギ、ネジキ、ホルトノキ、クスノキ、カノコユリ(佐世保市の花)等が自生する他、北九十九島を自然分布北限とする稀少なハマジンチョウやハカマカズラ、ハマオモト、ハマボウ、ハマゴウ等の当地の海岸植物があります。

長尾半島に自生している佐世保市花のカノコユリ

観察会は、児童達にできるだけ考えさせるという手法で進められました。

集合場所の駐車場では、落ちているドングリを手に取り表面の小さな穴を見つけさせ、この仕業は昆虫のオトシブミ科のハイイロチョッキリだということを教えて中を見せると児童達は自分で幼虫を探すため歯で実を割り中身を確認していました。早速、この日環境省からプレゼントされたユポ紙のレベルブック(水に濡れても字が書ける特別なフィールドノートで長尾半島の地図や図鑑付き)にメモやドングリの絵を描いていました。

濡れても字が書けるレベルブックを環境省が児童にプレゼントレベルブックに長尾半島の植物図鑑を添付歩き始めるとヌルデの虫こぶ発見、虫こぶは何が変化したものかと児童に尋ねると「葉っぱ」と元気よく答えが返ってきました。虫こぶが出来る原因は、アブラムシの一種の仕業。虫こぶの粉と鉄錆を混ぜてお歯黒の原料にしていたことなどの話もしました。(お歯黒:平安時代貴族の間で男女共に歯を黒く染める風習で成人を意味するものであったらしいです。また、歯に塗布することで虫歯の予防等の効果もあったとのこと)

ヌルデミミフシの中身ヌルデミミフシを手に持って説明海岸では、絶滅危惧種のドロアワモチを発見。児童達は手のひらに置き、奇妙な生き物に関心をよせていました。ドロアワモチについて、殼は持っていないが貝の仲間、干潮の時に干潟に出てきて潮が満ちて来ると肺呼吸のため潮の来ない岩陰に潜む、干潟の表面を泥ごと食べて栄養分を吸収し他は排出する、だから移動の跡に見られる線状のものは糞、この生き物も絶滅が心配されていること等の説明にびっくりしました。

干潟を移動するドロアワモチ(手前がおしりで先が頭)歩道法面に15センチ位の大きなヤマナメクジも登場。児童達に講師が天敵はと尋ねると「マイマイカブリ」と直ぐ児童の一人が答えたのには誰もが感心していました。手にとって体の表面を覆っている粘膜に触れさせると粘着力に驚き、接着剤のようだとビックリしていました。(ヤマナメクジ:カタツムリと同じく陸産貝類の一種。)このような体験をできることが、野外学習の最大メリット。シナリオに無い生き物達の出現に一喜一憂しました。

大きなヤマナメクジチガヤの葉を使って草笛も鳴らしました。各々が違う音色を出したりまた全く出せない児童は葉っぱを持ち替えたり取り替えたりと試行錯誤しながら手作りの楽器を楽しんでいました。

また、展望台から見える景色を通して佐世保の今の地形の成り立ちを講師が描く絵を見ながら確かめてもらいました。

終盤、半島内のネムノキをクラスの木として決めたもので、今後この木の幹周

りを定期的に計測したりすることで半島への愛着も更に深めてもらいたいです。

今回、児童達にふるさとの自然の大切さ等を学ぶまたとない機会を提供できたと思います。