アクティブ・レンジャー日記
出水にツルがやってきました!
2016年11月10日みなさんこんにちは!
出水自然保護官事務所のアクティブレンジャー、本多が今の出水の様子をお伝えします。
ここ、出水市は薩摩半島の北部に位置し、ツルの集団越冬地として毎年10月から翌年3月にかけて、合計1万羽を超えるナベヅル・マナヅルが飛来してきます。もう既にニュース等でご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、今季も無事、10月20日(木)に9羽のナベヅルが初飛来しました。また、11月1日にはツル観察センターがオープンし、出水のツルシーズンの本番を迎えたところです。
今回は、ツルの飛来地である出水平野の様子を、簡単ではありますが紹介いたします。
※左:ナベヅルの家族(左の個体は幼鳥)
右:上空を飛行するナベヅルたち
出水平野で一番個体数が多いのがナベヅルです。ナベヅルは、体の灰黒色が鍋の底のススを想起させることから、「ナベ」ヅルと呼ばれるようになったそうです。現在は飛来数も増加し、出水平野のあらゆる場所でみられるようになってきました。
左の写真のように基本的には家族単位で行動し、3,4羽程の群れの中に2羽の成鳥と1,2羽の幼鳥で家族群を構成しています。
※左:東干拓にいる越夏したマナヅル
右:今季の第一陣マナヅルたち
ナベヅルの次に個体数の多いものがマナヅルです。マナヅルより一回りほど大きいツルです。左の写真は、昨シーズンに飛来してきたマナヅルですが、翼の一部を痛めてしまったようで、北帰行できずに1羽で越夏しました。
右:特別保護地区の上空を飛ぶツルたち
次に、出水・高尾野鳥獣保護区内(842ha)にある特別保護地区(54ha)がどのように管理されているかを紹介したいと思います。特別保護地区は出水・高尾野鳥獣保護区の東に位置する東干拓にあります。
特別保護地区では3から10月まで稲作が行われていますが、毎年、ツル類の越冬を迎える11月より環境省がツル休遊地として農家さんから土地を借りています。また、鹿児島県ツル保護会の監視員や巡視員の方々によって毎日ツルのパトロールが行われています。
※左・右:防鳥ネットを張る作業の様子
毎年10月になるとツル越冬の準備が始まり、特別保護区内にある休遊地に人が立ち入らないよう防鳥ネットが張られます。こうしたネットを張る作業も、地元の人たちが主体となって行っています。私もお手伝いさせて頂きましたが(左の写真)、竹で出来た格子に防鳥ネットを針金で結びつける作業が延々と続き、これを毎年やるのはかなりの労力だと思いました。
こうした地元の方々の協力があるからこそ、ツルも安心して出水で越冬出来るのだと実感しました。
※左:監視小屋設置の様子
右:監視小屋に集まる人々
また、ツル監視の拠点としてこの監視小屋が東干拓に設置されます。地元の方や県外から訪れるバードウォッチャー(ツル・ウォッチャー?)が集まるため、良い情報交換の場にもなっているようです。
地元の方やバードウォッチャーのお話はとても興味深いです。例えば、飛来当初は警戒心が強く人から離れた場所で過ごしますが、越冬後期になると警戒心が次第に薄れ、人や車の近くでも採餌するという、出水で越冬するツルの特徴的な行動パターンであったり、ツルの撮影に最適な時間帯や機材であったり、様々なことを教えてくれます。図鑑には載っていない現場ならではの知識を得ることが出来、とても勉強になります。
※左:ツル観察センターの外観
右:開所式の様子
ところで、今季も11月1日にツル観察センターの開所式が催され、多くの方々で賑わいました。
※左:ツル慰霊祭の様子
右:オープニングセレモニーの様子
開所式では、まずは、ケガや衰弱などで命を落としてしまったツルたちの慰霊祭が行われました。その後、ツル観察センターオープニングセレモニーが行われました。オープニングセレモニーでは出水とツルをテーマにした楽曲や、園児たちによる太鼓のパフォーマンスが披露されたほか、企業から給餌用小麦の寄付や、地元の中学生が実施しているツル羽数調査のための防寒コートが贈呈されました。式典中はツルたちの声が絶えず響き渡り、時折上空を舞う姿を見られたのが印象に残っています。天候にも恵まれ、とても気持ちの良い一日となりました。
さて、出水では現在「万羽鶴」が見られるようになり、今後もたくさんのツルたちを目にすることができます。皆さんも是非、ツルを見に出水までお越しください。ツルの生態や今季の飛来状況については、出水市ツル博物館(クレインパークいずみ)HP(http://www.city.izumi.kagoshima.jp/cranepark/)にて公開されていますので、こちらも是非チェックしてみてください。