アクティブ・レンジャー日記
九州特産物リレー 10月 ~火山のめぐみ『シラス』~
2016年10月25日錦江湾にある火山といえば、桜島!!
鹿児島県には、この桜島をはじめとする火山がたくさんあり、本土には火山噴出物が堆積したシラス台地が広がっています。"シラス=桜島の灰"と思いがちですが、実はそうではありません。シラス台地とは、桜島よりもっともっと大きい火山が噴火した時の噴出物が堆積したものです。
【鹿児島の土台「シラス層」】 【崩れやすい砂質のシラス】
桜島が浮かぶ錦江湾には、「阿多北カルデラ」と「阿多南カルデラ」、そして「姶良カルデラ」の3つのカルデラがあります。火山が噴火して地下にあったマグマや火山灰が噴出すると、地下に空洞ができて地面が陥没することがあります。これがカルデラです。熊本県の阿蘇カルデラが有名ですね。
今から約10万年前、「阿多北カルデラ」と「阿多南カルデラ」の噴火・陥没により、錦江湾の入口ができ、その後「姶良カルデラ」ができて、現在の錦江湾の形が出来上がったと考えられています。この約3万年前の「姶良カルデラ」の噴火は超巨大噴火で、噴煙の高さは4万m、遠くは東北地方にまで降灰が及んだと言われています。シラス台地を形成しているのは、主にこの時の火山噴出物です。ちなみに桜島は、姶良カルデラの噴火の後にカルデラの隅っこにできた火山です。
【桜島から左側が姶良カルデラ。大きい!】(上図の赤丸地点からの景色)
シラスの最大の特徴は水はけのよさ。このことから甲子園の土にも使われています。
水はけが良すぎて田んぼを作りにくかったため、代わりに栽培されたのが、さつまいもです。鹿児島を代表する農作物もシラスあってのものかもしれませんね。
また、シラスは軽くて断熱性にも優れているため、瓦や壁材にも利用されています。
そして、最近ではシラスバルーンという新素材が開発され、様々な製品に活用されています。シラス中の火山ガラスを乾燥して熱すると、粒子が膨張して中が空洞の発砲粒となります。これがシラスバルーンです。
このとても小さな粒子を用いた石鹸で洗うと、毛穴の奥の汚れもきれいにとれ、お肌がつるつるになります。
また、シラスバルーンを用いたガラスクリーナーは、粒子の細かい研磨剤となり、頑固な水垢やガラスの曇りなどもとってくれます。その上、汚れをつきにくくするコーティング作用もあるため、電車やバス、新幹線の窓ガラスや動物園の展示ガラスのお掃除でも重宝されているそうです。
【シラスバルーン配合の石けん】 【ピカピカに磨かれたガラス】
その他にも、透水性・保水性・断熱性を活かしたブロックも開発されており、街中の歩道や緑化に利用されています。鹿児島市の街中も市電の軌道敷緑化によってずいぶん景観が美しくなりました。ブロック内に貯えられた雨水が蒸発する際に熱も発散させ、また緑化効果も高いので、温暖化対策にぴったりです。緑化された軌道敷とアスファルトでは、真夏で20℃近い温度差があるそうです。
【シラスブロックの歩道】 【シラス緑化ブロックを活用した電車軌道敷】
先日の阿蘇山噴火のように、火山の噴出物は日常生活や農作物など、良いとは言えない影響ももたらします。鹿児島でも火山灰やシラスは厄介者扱いされてきました。しかし、そこでへこたれないのが火山列島に生きる私達です。火山が生み出す様々な可能性、もっとたくさんありそうです!