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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

口永良部島の今【屋久島地域】

2016年08月10日
屋久島 アクティブレンジャー 水川

みなさん、こんにちは!

屋久島自然保護官事務所の水川です。

昨年5月29日の新岳噴火に伴い噴火警戒レベル5と全島に避難指示が出されていた口永良部島は、約7か月後の1225日に一部地域を除き避難指示が解除され、島民の帰島が実現しました。

今年6月14日には噴火警戒レベルが3に引き下げられ、避難指示が続いていた一部の地域も寝待地区を除き解除されました。

そこで、7月26,27日に屋久島国立公園でもある口永良部島の噴火後の状況を確認してきました。

 

まず向かったのは、噴火時の避難場所である番屋ヶ峰(ばんやがみね)です。

標高約290mのこの場所からは、新岳や噴火に伴い発生した火砕流の跡を確認することができました。

双眼鏡で山肌を見ると、灰色に見えるところにも植物がありましたが、ほとんど枯れてしまっていました。

 

番屋ヶ峰の避難所とそこから見た新岳の様子

▲番屋ヶ峰の避難所とそこから見た新岳の様子。

 

噴火前と噴火後の新岳の比較写真

▲噴火前と比べると、緑に覆われていた火口周辺の山肌が灰色に変わっていて、植物が枯れてしまったことが分かります。(役場から撮影)

 

今年6月25日に避難指示が解除された前田地区は、住宅の近くまで火砕流が達していたことが分かりました。前田地区より先は警戒区域のため現在も立入り禁止です。

  

新岳と前田地区の様子

▲前田地区の規制線。火砕流などの影響でしょうか、民家すぐ脇の規制線から先の木が枯れてしまっていました。

 

火口周辺警報に伴う立入り規制区域の他に、全島避難中に発生した土砂崩れによって一部の道路が通行止めとなっていますが、行けるところはたくさんあります!

ここからは、巡視で再確認した、噴火後も変わらない口永良部島の魅力をご紹介します!

 

火山の島、口永良部島と言えば何と言っても温泉。

島民の方々による避難指示解除後の復旧作業によって、島内に湧き出る4箇所の温泉のうち3箇所の温泉が入浴可能です。

 

3箇所の温泉の写真

①本村温泉。平成20年完成の、休憩スペースも完備されたとてもきれいな温泉。フェリーが着く港から一番近い温泉です。

②湯向温泉。湯向地区に昔からある温泉。「湯の花」が舞う秘湯です。

③西之湯。海岸に面した開放的な温泉。満潮時に湯船の底から温泉が湧き出ます。お湯の温度はかなり高め。

 

温泉以外にも見所たっぷり!

各所に島の大自然を望む口永良部島八景があり、立入り規制区域内の4箇所を除き見て回ることができます。

 

八景①岩屋泊(いわやどまり)

山に囲まれた穏やかな入り江が広がります。

岩屋泊の写真

 

八景②番屋ヶ峰(ばんやがみね)

島東部の新岳、古岳などの遠景が望めます。

番屋ヶ峰の写真

 

八景③新村(しんむら)

波に削られ切り立つ海食崖景観が望めます。

新村からの海食崖景観

 

八景④永迫(ながさこ)

地形の起伏に沿ってうねり広がる牧場と牛、奥には屋久島を望めます。

牧場の写真

 

牧場で放牧されている牛の写真

 

八景には環境省が設置した標識があり、今回標識の補修や周辺の草刈りも行いました。

標識の補修作業の様子

 

島の東端はメガ崎と呼ばれ、広大な草原や灯台がある他、黒潮の荒波によって形成された断崖やタイドプールなど変化に富んだ自然海岸を見ることができます。

12㎞先の海上には2000m級の山々が連なる屋久島が浮かび、まさに「洋上のアルプス」といった景観が望めます。

※注)メガ崎までの道は分かりにくいため、ガイドなど道をよく知る方と一緒に行くことをお勧めします。

 

草原と海の向こうに見える屋久島

▲草原と屋久島。

 

メガ崎にある灯台

▲メガ崎の灯台。

 

断崖

▲草原の先は断崖。

 

タイドプール

▲タイドプール。

 

屋久島とは異なる動物相がみられることも口永良部島の魅力の一つです。

今回の巡視では出会うことができませんでしたが、島にはエラブオオコウモリが生息しています。

翼を広げると80㎝にもなる大型のコウモリです。

口永良部島とトカラ列島のみに生息し、絶滅危惧ⅠA類、国の天然記念物です。

  

エラブオオコウモリの写真

▲エラブオオコウモリ(昨年の巡視時に撮影)。

 

エラブオオコウモリ観察マップ

▲エラブオオコウモリ観察マップ(オオコウモリが利用する樹木)。

H26年度GW事業口永良部島における動植物の生息・生育状況把握事業報告書より】

地図に載っている木を探せばオオコウモリに出会えるかも‥!?

 

また、イルカの群れに遭遇することも!

屋久島と口永良部島を結ぶフェリーからはもちろん、近くを泳いでいる時は島からでも見えることがあります。

 

帰りのフェリーから見えたイルカの群れ

▲帰りのフェリーで出会ったイルカの群れ。

 

例年初夏に口永良部島の山肌を鮮やかなピンク色に染めるマルバサツキ(島ではエラブツツジと呼びます)の状況ですが、登山道方面の花は無事のようです。

いつの日か入山規制が解除された時は、またピンクのお花畑が見られるかもしれませんね(^^)

 

過去に撮影した古岳山頂周辺のマルバサツキの写真

▲古岳山頂周辺をピンク色に染めるマルバサツキ(2010年撮影)。

 

口永良部島には、今回の噴火で少し変わってしまったところもありますが、変わらない大自然がたくさんありました。

また島民の方からは、シカやノヤギが増えていること、海外からのゴミが海岸にたくさん漂着しているけれど回収にまで手が回っていないことなど、困ったことも聞くことができました。

噴火前の暮らしに戻るにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、島の方々は生活再建や復興に向け力強く前進しています。

私たちも、今回の巡視で見聞きした島の状況に対してどのように力になれるかをしっかり考えていきたいと思います。

 

※口永良部島にお越しの際は、警戒区域や避難所の位置をご確認ください。

警戒区域はコチラ↓

(屋久島町HP

http://www.town.yakushima.kagoshima.jp/t_yakushima/wp-content/uploads/2016/06/2291e85fb63ebea039e35ae782233511.pdf

※現在島は生活再建・復旧復興が最優先です。民宿は工事関係者優先のため予約が取りにくい場合があります。

島の情報はコチラ↓

(口永良部島ポータルサイト)

http://kuchinoerabu-jima.org/index.html

(口永良部島ガイド協会HP

http://kerabu.eco.coocan.jp/index.html