アクティブ・レンジャー日記
九州特産物リレー8月 ~島原半島のそうめん流し~
2016年08月24日8月になってしまいましたが初めまして。雲仙自然保護官事務所のアクティブレンジャー 羽澄 美枝子です。九州特産物リレーの今月の担当となり、アクティブレンジャー日記をやっとスタートする事ができます。
島原半島は長崎県の中でも特に農産物の生産量が多い場所です。それは島原半島を形成してきた火山の歴史があり、その恵みのおかげです。それらの話はまた改めてお伝えしますね。今回は島原半島の流しそうめんをご紹介します。これもまた火山の恵みのたまものです。
まず、島原半島のそうめんの歴史からお話しします。有名な島原・天草の乱の結末を、私はこちらにに来てから知りました。一揆軍は、約3万7000人で原城に立てこもり、最後には全滅してしまったそうです。その結果島原半島の千々石断層より南部の集落のほとんどの住民がいなくなり、天草の一部とともに無人地帯が現れました。
そこで政府は日本各地から人を移住させようとし、全国から同じ文化風習を持った人々が地区ごとに入植し、多様な文化がモザイク状に分布する風土が形成されました。その中の小豆島から移住した人々が、素麺製造技術を持ち込んだようです。もう一つ、中国の福建省から渡ってきた技術者によって伝えられたという説もあります。どちらにせよ、湧水が沢山有り、きれいな水が豊富・雲仙岳から吹き下ろす乾燥した風・有明海の塩・肥沃な土地で栽培される小麦等、素麺製造に適した土地柄であったため、島原素麺は沢山作られるようになりました。そして、豊富にある湧水を利用した流し素麺が始まったのは自然の流れですよね。そう、島原半島には湧水が沢山あるのです。山の上の方から町中までいたるところに湧き出ています。
焼山湧水は、江戸時代の噴火(このときの溶岩は粘度が低いタイプであったそうです。今のハワイにあるキラウエアみたい。25年前の新しい平成新山噴火の溶岩は、粘度が高いタイプです。)で流れ出た溶岩の一番先端部分の下から湧き出ています。ここの水温は13度位で、湧水の中でもかなり冷たい方です。平成新山の噴火前はこの水をそのまま使って、自然の流しそうめんをしていたそうです。
そうめん流しのお店 丸テーブルの周りを水が回っています。
下にゆず胡椒。
そして今こちらの流し素麺屋さんの方式は、真ん中にある丸テーブルのまわりが丸く囲まれていて、いつのまにかそこに湧水がわき出てきて回り始めます。そこに素麺を流して食べるのです。湧水とテーブルをつないでいるのでしょうね。お店の池ではニジマスも沢山泳いでいます。薬味はネギとわさびだけでなく、島原半島特産のゆず胡椒もでてきます。ゆず胡椒の中身も知らなかった私ですが、こちらの新鮮な手作りの味を知ってはまっています。ゆず胡椒と流し素麺ははじめて食べましたが、最高に合います。この組み合わせ新しくないですか?
一枚岩の斜面を登ります。
先端はこんな感じです。
焼山湧水から山道を登って行くと、途中には小さな風穴がいくつかあって、穴からは涼しい風が吹き出てきます。そんな山道を登る事15分位で一枚岩と呼ばれる場所に到着します。ここは先ほどの流れ出た溶岩の上側先端部分です。そこからの眺めは絶景ですよ。海まで一気に見渡せます。
私もここに来てみてはじめて分かったダイナミックな自然と歴史、国立公園に最初に指定された訳がわかります。これからも意外と知られていない島原半島の魅力を伝えていきますね。