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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

御岳山頂から見渡す360度の自然美

2016年07月14日
五島 竹下洋子

 こんにちは!五島自然保護官事務所の竹下です。7月上旬、福江島南西部に位置する御岳(おんたけ)へ現地調査に行ってきました。

 登山口に入った瞬間、「ウィーンウィーン」と集団で鳴くヒメハルゼミの合唱に圧倒されます。御岳は標高177mと高い山が少ない五島列島の中でも低い山で、登山口から5分程で山頂と白鳥神社への分岐点です。山頂へはここから1km、反時計回りに螺旋状の遊歩道を20分程歩きますが、平坦で山に登っている感覚がしません。

 

左:御岳登山口の案内板

右:御岳分岐点(御岳展望所1.0km、白鳥神社1.4km)

 道の両側は、木々が生い茂り時折涼しい風が吹きわたります。道脇のアオノクマタケランがちょうど見ごろで、薄暗い林の中で白い小さい花が映えていました。山頂が近づくと、自生しているソテツが目立ち、日差しが肌に突き刺さるようです。

 

左:アオノクマタケラン。ランという名称がつくがラン科ではなく、ショウガ科

右:山頂付近に自生するソテツ

 山頂の展望所からは、周囲に視界を遮るものは全くなく360度玉之浦地区を見渡すことができます。この展望所は、明治初期から末期にかけてブリ等を捕獲する際の「見張り所」として使われていました。山頂から北側の白鳥神社までは、自然豊かな西海国立公園第1種特別地域に指定されています。

 

左:展望所に立つと足がすくみましたが、目を見張る自然美がそこにありました!

右:展望所から南東方向を望む、波静かな玉之浦湾の湾奥

展望所から北方向を望む、島山島(中央)と嵯峨島(左奥)

 山頂から分岐点まで戻り、さらに40分程白鳥神社に向けて海沿いの林の中を歩きます。こちらは歩く人が少ないのか、遊歩道が雑草に被われて方向が分かりにくい箇所がありました。湿気がある道には近づくとサーッと巣穴や木陰に逃げていくアカテガニをたくさん見かけました。他にも、アキノタムラソウがかわいい薄紫色の花を咲かせていました。

 

左:夏の大潮の夜、集団で産卵するアカテガニ

右:7月から11月頃まで咲くアキノタムラソウ

 海岸線近くの大鳥居を通り抜け石段を上ると、白鳥神社の社殿に到着です。

 社叢林は、スダジイを主木とする自然林がよく保存されており、長崎県の天然記念物に指定されています。毎年9月中旬には白鳥神社例大祭があり、夜には五島神楽(国指定 重要無形民俗文化財)が行われるそうです。神社の石段に座り、周囲の社叢林と目の前の青く波静かな玉之浦湾を眺めていると疲れがふきとびます。

 

左:玉之浦湾に面した白鳥神社の社叢林

右:日本武尊(ヤマトタケルノミコト)を祭神とする白鳥神社の社殿

 御岳は、大瀬崎の展望所からも見ることができます。螺旋状の遊歩道は樹木にかくれ、玉之浦湾に浮かぶように周りの自然に溶け込んでいる姿が何とも言えずうれしい気持ちになります。

 みなさんも御岳の遊歩道を歩いてみませんか?

大瀬崎の展望所から眺める御岳と七ッ岳、父ヶ岳