九州地域のアイコン

九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

スパルティナ属の生息状況確認に行ってきました!

2016年07月26日
野生生物課 古賀いずみ

みなさんこんにちは。九州地方環境事務所、野生生物課アクティブレンジャーの古賀です。

 

こちら野生生物課では、主に九州内の希少野生動植物の保護、有明海沿岸の干潟の保全、セイヨウオオマルハナバチやツマアカスズメバチなどの外来種対策、動物愛護等に関して業務を行っています。

今年度から新たにアクティブレンジャーが配属され、特定の現場ではなく遠方のあらゆる現場に向かわなければならないという点で他の自然保護官事務所、自然環境事務所とは違いがあり、毎日手探りの状態で業務を進めています。

みなさんに最新の情報をお届けできるように頑張りますのでどうぞよろしくお願い致します。

 

今回はこんなところへ行ってきました。

ここは熊本県宇城(うき)市を流れる大野川の河口です。

熊本市内から南に20㎞程離れたところにあります。海の向こうに見えるのは宇土半島で、この先には国立公園にも指定されている天草があります。

 

さて今回はここに何をしに来たのでしょうか。写真から分かりますか?

ボディーボードに乗り、干潟の上を緑の塊に向けて横切っている青年の姿、何とも面白かったです。

しかし決して遊んでいる訳ではありません。

とっても真剣な表情が伺えます。

実はこの青年、近畿大学農学部環境管理学科の学生さんで、この大野川の河口域に青々と勢いよく生育している植物の研究のためのサンプルを採取しているのでした。

この植物ですが、通称「ヒガタアシ」、学名では「スパルティナ属」と言い、特定外来生物に指定されています。日本では愛知県とここ熊本県の熊本市・宇城市の河口域のみで確認されています。侵入経路など不明な部分もあり、基礎知見の収集が行われています。

  

今回は昨今の豪雨のスパルティナ属への影響等を確認し、彼らのお手伝いもできればと思い、現地へやってきたのです。

この青々と茂った様子からどうやら豪雨の影響はなかったようです。豪雨でスパルティナ属が流されてなくなってしまえばよかったのにと思われる方もいるかと思いますが、下流へ流出すれば海岸部の干潟に分布域が拡大するということも考えられるので、その場に留まっていてくれてむしろ安心しています。

繁殖勢力が強く、成長速度が速いのがこの植物の特徴で、平成23年度から、関係者が連携し、人力、重機による駆除活動を開始しています。

このような植物をこのまま放置すると、草地化が進みまた堆積物が溜まりやすくなるなどの影響で、水辺の生きものの生息地や水鳥の餌場を奪ってしまうことになります。

今のところスパルティナ属の影響は少ないようで、水辺の生き物は元気です。その様子をご紹介します。

 

スパルティナ属の群落そばの干潟を辛抱強くじっと見つめていると、何とも愛くるしい生き物の写真を撮ることができました。

 

それぞれ何か分かりますか?

そうです、上の写真がトビハゼで、下の写真がムツゴロウです。飛び出た目が私のお気に入りです。産卵の時期なのでしょう。体色をピンク色に変えたトビハゼの姿もありました。

 

チゴガニも求愛ダンスを頑張ってました。3匹見つけられますか?

 

学生さんは泥だらけになりながらもこのようなことを言っていました。

「こんなに大きな干潟を見たのは初めてです。干潟って楽しいです!」と。

 

今日は、業務でやってきたのですが、水辺の生き物の生き生きとした様子と、現代っ子には珍しく無邪気な学生さんの姿に心和んだ一日でした。このような風景を残していくためにも外来種の駆除が必要なのです。