アクティブ・レンジャー日記
林道パトロール ~忘れて欲しくない忘れ物~【やんばる地域】
2016年01月21日明けましておめでとうございます。
やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの上開地です。
2016年がスタートし、気持ち新たに頑張りたいと思います。
今年もよろしくお願い致します。
今日のタイトルは、「林道パトロール ~忘れて欲しくない忘れ物~」。
昨年は、森の中にはあって欲しくない"忘れ物"が例年よりも沢山ありました。
これはいったい何でしょう?
正体は昆虫トラップです。
ストッキングに果物を入れて、クワガタやカブトムシなどを誘引するために主に使われます。
けれど、このトラップを見つけたのは昨年2015年12月14日です。もうクワガタやカブトムシは活動していません。中に入っている果物らしき物も黒く変色し、カピカピに乾燥していました。
よく見ると、オキナワヒラタクワガタのメスがストッキングの繊維に絡まって死んでいました。
おそらく、採集者がトラップを放置した後に絡まって死んでしまったのだと思います。
このようなトラップを放置すると、森のゴミになるだけでなく、他の生き物が誤って絡まり死んでしまうこともあります。
昆虫採集に使われるトラップはこれだけではありません。
電池式のライトを使ったトラップもありました。
光が漏れるので、林道から見えないように大木の陰に設置されていました。
このトラップは秋に見つけたものですが、金具のサビ具合や、落ち葉、雨水の溜まり具合を見ると、長い間放置されているようでした。
この場所は希少生物が多く生息する地域です。長時間放置すれば混獲され、死んでしまう可能性があります。ライトには単三電池が8本ほど使われており、このまま放置すれば土壌汚染にもつながります。
やんばる地域ではこのような事をふまえ、2011年度から地域の人たちと連携協力し、希少種の密猟・盗掘防止のための林道パトロールを実施しています。
パトロールのミーティングの様子
「林道パトロール実施中!!」チラシ
http://www.ufugi-yambaru.com/shiryou/panfu.html
※過去の林道パトロールの紹介記事(ウフギー自然館HPニュースレターNo.22)
http://www.ufugi-yambaru.com/shiryou/documents/NL22.pdf
研究や調査目的で設置する器具には、必ず調査者の名前と連絡先のラベルを付けていただくようお願いします。
昨年の夏は、特にたくさんの採集者無記名の昆虫トラップが見つかりました。
パトロールでは他にも、姿や声が確認された生き物や、外来生物の情報などを記録しています。記録を重ねることにより、季節によってみられる自然の移り変わりや、その地域のどんな場所に生き物が生息しているかどうかが分かってきています。
パトロール中に見られたハロウェルアマガエルの抱接の様子
やんばる地域だけでなく、南西諸島の島々には世界中でそこにしかいない生きものたちが生息していますが、中には過剰に採取(密猟・盗掘)され、数を減らしているものもたくさんいます。
島の自然は地域の宝物です。
昆虫採集は自然に親しむ最もポピュラーな手法の一つですが、採集方法のマナーやモラルについて見直さなければいけないのかも知れません。
そしてどんな地域や場所でも、必ず自然と繋がりがあり、
たくさんの方々が身近な自然の素晴らしさや大切さに気づくことが、宝物を守る重要な鍵になります。
みなさんの地域にはどんな自然との出逢いがありますか?
誰かに紹介したくなるような、素敵なところを探してみて下さい。
今月の一枚「センダンの実を頬張るシロハラ」
右下のシロハラの大きな口にご注目。