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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

新高塚小屋の土壌処理型トイレは冬季閉鎖しました           【屋久島地域】

2015年12月17日
屋久島国立公園 アクティブレンジャー 菊地

いろいろな集落でイルミネーションが点き出して(都会に比べるとささやかなものですが...)、屋久島も

少しクリスマスらしくなっています。

山でも荒川登山口のマイカー規制の解除、携帯トイレテントブースの撤去など、夏場とは異なる点がいくつかあるので登山を考えている方はご注意ください。

 

さて、みなさんは屋久島の山中のトイレには、いろいろな種類があるのをご存知でしょうか。

汲み取り式、おがくず式バイオトイレ、浄化循環式、携帯トイレ...

というように場所にあわせて異なる種類のトイレがあり、それぞれ長所も短所も異なります。

その中でも、新高塚小屋には環境省が設置した土壌処理型トイレという一風変わったトイレがあります。

土壌処理型トイレとは、し尿の固体と液体を分離しつつ、固体は微生物の働きで分解、液体は専用の土壌を通して浄化、蒸発散させて最終的にはほとんど何も残らないというトイレです。

昔の人の使っていた肥溜めと畑のシステムをもとに開発されたトイレだそうです。

電気は必要なく、流すための水は雨水を貯めて使えるので山の奥地や管理人のいない避難小屋でも採用

しやすくなっています。

▲新高塚小屋                  ▲土壌処理施設

 

世界遺産になって登山者が急増する以前、屋久島の山中にあるトイレのし尿はそのまま土に埋めて処理していましたが、水質汚染やさらなる登山者の集中が懸念され、2008年から人力によるし尿の搬出が始まりました。

しかし、し尿の搬出費用にあてられる募金が不足し、満足にし尿搬出できていないのが現状です。

▲トイレ裏に溜められたし尿

 

そんな中、土壌処理型トイレはし尿を担ぎ下ろす必要がなく、汲み取り式に比べてトイレ室内の悪臭が

少ないなどといったメリットを考慮され、2011年に設置されました。

それから約2年間は開放していたのですが、屋久島特有の多雨多湿な環境が主な原因と考えられる異常が

確認され、閉鎖されることとなりました。

その後も点検を継続、改善策を試行錯誤した末の今年5月、供用再開の目処がたち、ついに再開放

されました。

また異常が発生するのではないか、ちゃんと処理が進んでいるのか、ヒヤヒヤさせられながらも、

今シーズンを乗り越えることができました。

▲4月に行った関係者による現地確認

 

冬場は貯水タンクの水が凍結し、利用できなくなる為、雨樋の取り外しや貯水タンクの水抜きなどの

冬季閉鎖をしに行ってきました。

来年3月に無事開放できるよう、問題が起こらないことを祈るばかりです。

▲閉鎖した土壌処理型トイレ2室

 

12月から2月までの冬季閉鎖中に新高塚小屋でトイレをされる方は、汲み取り式のトイレか

携帯トイレブースをお使いください。