アクティブ・レンジャー日記
阿蘇の草原の「健康診断」! 地元の子どもたちが調査しました。【阿蘇地域】
2015年09月04日この夏、16年ぶりに大型台風15号が熊本に上陸し、各地で大きな災害が出ています。阿蘇でもハウスが歪んだり、看板が壊れたりしていました。果実や米が実る時期でもあり収穫などに影響が少ない事を祈るばかりです。被害に遭われた皆さまには心よりお見舞い申し上げます。
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さて、夏休み中に、草原の生物多様性を評価する「調査マニュアル」を使って、牧野組合の方々や地域の子どもたちを対象に、学習会を開催しました。この「調査マニュアル」では、草原の生物多様性を点数化し、健康状態のチェックをすることができます。
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調査区1:採草地として利用している
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調査区2:野焼きだけを行っている
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阿蘇市内の牧野にて地域の小学生10名と草原アドバイザーなど約20名で、「北外輪山地域(採草型草地)」マニュアルを使って、条件の違う2つの調査区(「採草地」と「数年前に採草をやめて、今は野焼きだけ」)を設定し、それぞれ2ヶ所の調査枠を設け、草丈や植生の違いを見ながら観察を行いました。
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専門の講師と草花を探しました
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マニュアルを見ながら草花の同定
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子どもたちは、最初は戸惑っていましたが、草花を見慣れてくると、隠れているものも見つけられるようになって、葉っぱの形やつき方なども興味を持って聞いていました。
また、調査の他にも筑後川の源流で水遊びをしたり、虫や動物の痕跡を見つけたり、草花の名前当てクイズでは、10数種類もあった草花の名前をみんな答えられるようになりました。
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肝心な草原の健康状態は、採草地はいずれも"最高の状態"となり、野焼きだけの所は"最高の状態"と"まあまあ"といった結果がでて、よく手入れされているということが分かりました。
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◎阿蘇草原の生物多様性評価用調査マニュアルとは
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平成22年から九州地方環境事務所が取り組んでおり、阿蘇郡市内の牧野を「北外輪山」「南外輪山」「中央火口丘」「波野村・高森町」などの6つの地域に分け作っています。「採草」、「野焼き」、「放棄」などの草原の管理形態によって見られる植物が異なるため、それぞれの管理により増えてくる植物を指標種とし各6種類を選定したものです。現在、5つの地域のマニュアルが完成しています。
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<調査の流れ>
■調査目的:牧野内に生えている18種類の植物を探して、草原の健康状態をチェック。
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■調査時期:8月上旬~9月上旬の盆花の咲く頃
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■調査場所:牧野の中で草原の健康状態を知りたい場所を2ヶ所選ぶ
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■調査方法:・草原アドバイザー(専門の講師)と同行し、周辺の草原の様子を観察し、記録シートに記入する。
・3m四方の調査枠を2ヶ所設置し、見つけた植物をチェックする。
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■調査する種
A採草していると増えてくる6種
(アソノコギリソウ、オミナエシ、他)
B野焼きだけしていると増えてくる6種
(ハバヤマボクチ、オオアブラススキ、他)
C放棄してしまうと増えてくる6種
(クマイチゴ、スイカズラ、他)
の計18種類を指標種として選定
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■採点:上記の項目に該当する植物の種数を書き(上限あり)、それぞれに点数をかけ、たしたり引いたりして合計点を出すと調査した場所の健康状態がわかる。
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上記の他にも、西原村にて牧野組合の方々が自主的にマニュアルを使った調査に取り組まれました。
牧野組合のみなさんにも活用してもらうことで、植物も覚えられ、数値化することで牧野の状態を実感することができるので、ぜひ取り組まれてみてはいかがでしょう!