アクティブ・レンジャー日記
九州いきものリレー③~ヤクシマエゾゼミ~【屋久島地区】
2015年06月26日みなさん、こんにちは!
屋久島自然保護官事務所の水川です。
梅雨のまっただ中で、屋久島は毎日雨、雨、雨(@∪@;)!!
しとしと降ったりやんだりを繰り返すというよりは、どんだけ降るんだ!というくらい本降りの雨が続く...。
これが屋久島ならでは??なのでしょうか。
数日前、1日だけ晴れ間をのぞかせた屋久島では、いよいよセミの鳴き声が聞こえてきました!
夏はすぐそこ(≧▽≦)♪
ということで、いきものリレー第三弾は「ヤクシマエゾゼミ」です。
【和名】ヤクシマエゾゼミ
【学名】Lyristes esakii
【分類】カメムシ目セミ科クマゼミ族エゾゼミ属
【分布】屋久島
【形態】屋久島固有の小型種。胸背の斑紋や色彩はエゾゼミによく似る。
体長32-36mm;全長48-54mm;前翅の開帳93-100mm。
6月下旬から8月上旬、屋久島の標高800m~1800m程度の山地で、ギーーーーーと長く低い連続音で鳴くセミがいたら、それはヤクシマエゾゼミかもしれません。
ヤクシマエゾゼミは標高の高い場所に生息していて、さらに、ヤクスギやモミといった大きな木の枝先の繁みや葉の上にとまるため、声はするものの、その姿を見ることはなかなかできません。
この写真は、巡視中だった私たちが、宮之浦岳山頂で偶然発見し撮影したものです。
実物はもちろん、生体写真すらあまり見られないので、奇跡の出会いに大興奮で撮影しました。
周りの登山者とは少し温度差があったような気がしますが...('▽')♪
エゾゼミの背中には鮮やかなオレンジの模様があります。
歌舞伎の「隈取り」のようだとも言われ、かっこよく、とても美しいセミなんですよ♪
ヤクシマエゾゼミは屋久島のみに分布しており、本土にはいません。
名前に「エゾ(蝦夷)」と付いているヤクシマエゾゼミが、どうして日本の南方に位置する屋久島だけに生息しているのか、不思議ではありませんか?
これは、大陸とつながっていた最終氷期の時代に分布を広げたヤクシマエゾゼミの祖先種が、高い山があり、冷温帯の気候が存在する屋久島で生き残り、独自の進化をとげたものだと考えられています。
▲最終氷期の陸域
屋久島では、顕著な標高差が生み出す様々な気候帯や、それに応じて分布する植生など、特異な自然環境に適応した固有種が多くみられます。
また、氷河期の終わりとともに島に取り残された生き物、黒潮の影響で島に定着した生き物など、屋久島は多くの生き物の分布の南限・北限になっています。
例えば...
【屋久島が分布の南限】
・スギ
・ニホンマムシ
・ニホンヒキガエル
・コウベモグラ
【屋久島が分布の北限】
・テッポウユリ
・ズアカアオバト
・ムラサキオカヤドカリ
みなさんも、生き物を見つけたとき、その分布や起源をたどってみてください。
長い長い地球の歴史や、私たちが暮らす地域の自然環境など、生き物を通じて新たな発見があるかもしれません。
次回のいきものリレーは、対馬の竹澤アクティブレンジャーがお届けします!
お楽しみに~☆