アクティブ・レンジャー日記
第10回全国草原サミット・シンポジウムと第2回全国子ども草原サミット開催報告【阿蘇地域】
2014年12月08日12月に入り、阿蘇の山々にも雪が積もり、例年よりやや早く寒気がやってきたので、慌てて冬用タイヤに取り替えました。
平成26年11月22日~24日の3日間、第10回全国草原サミット・シンポジウムが阿蘇市内牧の阿蘇プラザホテルにて開催されました。
22日はオプショナルツアーがあり、草千里ヶ浜周辺の景観改善・草原再生のための森林伐採後の状況や、野焼きを再開した牧野にて急勾配での輪地切りの様子、子どもたちが作った草泊まりなどを視察されました。
23日のシンポジウムは、全国各地から総勢500名以上の参加があり、基調講演や草原に関する活動の事例報告、5つの分科会、全体討論会が行われました。
■基調講演 「草原が持つ公益的機能と経済的価値について」
宮崎大学 西脇 亜也教授
■事例報告
・阿蘇中央高校では、50年以上続く野焼き・輪地切りなどの活動、草泊まりや茅葺き屋根などの技の伝承活動
・山口県秋吉台 草原の観光と保全の両立を目指した活動の紹介
・静岡県「世界農業遺産としての茶草場を利用した茶生産と生物多様性」
などについて発表されました。
午後からは、5つの分科会が開かれ、どの分科会もほぼ満員でした。
■第1分科会
「草原の公益的機能と経済的価値について」~本当に知っていますか?草原の恵み~をテーマに、草原の地下水涵養や生物多様性保全機能、二酸化炭素固定機能、観光を含めた経済効果について紹介があり、草原の価値試算などの調査結果は、たいへん意義のある興味深いものでした。
■第2分科会
「草原を地域の宝として輝かせる」をテーマに、牧野組合長や地元で活動する若手グループ、また静岡県の茅葺き屋根職人の方からお話を伺いました。若手の方々の取り組みに、参加者から積極的に質問が出るなど熱気に包まれていました。
■第3分科会
「草原を次の千年にどうつなげていくか?」をテーマに、野焼き支援ボランティア活動が16年継続している理由や、農村と都市との連携、官民一体の取り組みについてなどを話し合われました。
野焼き支援ボランティアのみなさんの"ボランティア精神"に、会場から賞賛の声が聞かれました。
■第4分科会
「火入れの安全性確保について」をテーマに、全国の火入れの状況や安全対策マニュアル及び事前研修の重要性、賠償保険、事故を起こさないための安全な作業方法について情報交換等がなされました。
■第5分科会
「第2回全国子ども草原サミット」は5年前の北広島での開催に次いで、第2回目の開催となり、司会進行や発表・まとめまで全てを、子どもたちだけで進めます。今回は副題に「~ふるさとの草原は宝の山!ボクたち草原まもるモン!」と称し、広島市や山口県秋吉台、大分県、阿蘇郡市内より2校、合計4校1団体の参加がありました。各地域の草原学習の成果を寸劇やパネルを使って発表し、それぞれの取り組みに刺激を受けて、多くの質問や感想などが出ていました。
子どもサミットでは、「草原を地域の宝として、大切に思い、守り、伝える活動に取り組みます」と宣言し、採択されました。
第5分科会には、総勢約230名の参加があり、思いのこもった発表に大人の方々も感銘を受けていました。
■全体討論会
各分科会の代表者がそれぞれの報告を行い、シンポジウム宣言が採択されました。第5分科会の代表として登壇した阿蘇市立坂梨小学校の児童は、「草原を守るために、大人の人たちに何をしてほしいですか?」との質問に、「私たちにできることは伝えること!学習を発表する場を提供してほしい」、「大人になっても、草原の草花たちが見られるよう、草原を守っていってほしい」など、自分の意見をしっかり伝えていました。
最終日の24日は、第10回全国草原サミットが開催され、全国から14の市町村首長が集い、前回開催地の群馬県みなかみ町から第9回サミットの報告や、各自治体からは、草原特区(阿蘇地域)や環境学習について取り組みの紹介や草原保全の課題などの発表を受けて意見が交わされました。また、それぞれの地域での草原環境学習が一定の成果が出ており、今後も継続して行っていくと意気込みを話されました。
サミット宣言では、草原の重要性と公益的機能を国民にアピールするため「草原100選」の制定や自治体間の連携強化に向けて全国組織の推進と充実化などを盛り込んだサミット宣言文が採択されました。
3日間で延べ740名の参加とこれまでにない大きな規模の大会となりました。全国の草原を持つ地域の方々と交流することができたり、ご縁がつながったり、新しい発想が生まれたりと、とても有意義な時間を持つことができました。次回は、兵庫県新温泉町にて開催予定です。