アクティブ・レンジャー日記
「右利きのヘビと左巻きのカタツムリ」講演会【石垣地域】
2014年10月16日
石垣
私たちの身近にいる様々な生き物たちは、長い年月をかけて互いに影響し合い、環境に順応しようと少しずつ生態や形などを変化させながら、進化し続けています。
さて、今回は、西表石垣国立公園パークボランティア研修会の一環として、9月23日(火)に進化生物学に関する講演会を開催しましたので、ご報告します。
写真1:講演会開会時の様子
講師は、京都大学白眉センターで進化生物学を研究され、西表島と石垣島を調査フィールドとしている特定助教の細将貴氏をお招きしました。私たちヒトにも利き手などがあるように、他の生き物にも利き手や利きあごのようなものが存在します。たとえば、片方のハサミが大きなシオマネキ、巻き貝やヒトのつむじの巻き方向の違い、ほ乳類が胸の左側に心臓が備わっているように、体の左右で違った機能をもっていることなどが上げられます。どれもなじみのあるものですが、なぜそうなっているのかは意識しないものばかりです。細氏は、そこに目を付け、進化生物学の観点から、ダーウィンの唱える自然選択説に反する非・適応進化について研究され、西表島と石垣島に生息しているイワサキセダカヘビとそこに生息しているカタツムリが奇妙な進化を遂げていることを発見し、進化がなぜ起きたのか、どのようして進化してきたのかを解明する研究をされています。
写真2:イワサキセダカヘビがカタツムリを捕食する実験映像
カタツムリを横から見てみると、らせん状に巻いた貝殻をしています。その殻の口が右か左かで右巻きか左巻きかがわかり、多くの種類は右巻きをしていますが、細氏はセダカヘビ類が生息している分布域には左巻きのカタツムリが少数ですが分布していることを発見しました。本来、カタツムリは逆巻き同士では交尾がうまくいかず、左巻きのカタツムリが突然変異で生まれても、左巻き同士のペアが巡り会わなければ、生涯、子を残すことはなく滅びる定めにあります。
セダカヘビはカタツムリを主に食べるヘビです。細氏はセダカヘビが「右利き」で、セダカヘビ類が生息している分布域に左巻きのカタツムリが分布しているのは、セダカヘビに食べられないよう進化を促進させているのではないかと仮説を立てたのです。セダカヘビの頭部の骨格標本の下あご歯列を調べると、右の歯が左の歯の本数よりも多く、右の歯を使って獲物を食べていることがわかり、「右利きのヘビ仮説」を証明したのです。さらに根拠を深めるために捕食実験をすると、右巻きのカタツムリは、すぐに捕食されましたが左巻きのカタツムリの捕食には、圧倒的に長く時間がかかり、うまく捕食できず、取り逃がしてしまうことがわかったのです。これだけ明確に左右非対称性の歯をもつ動物は他にいないそうです。
今回は、これらの興味深い研究についてスライドを用いて、わかりやすい図や実験映像を交えながら説明していただきました。
参加者のみなさんからは「これまで生き物の左と右について考えてこなかったので、お話を聞いてとても興味深く楽しかった」「進化はどのくらいで起こるのか」「小さい頃から左巻きのカタツムリを探している」などさまざまな感想が聞かれ、質問も多く上げられました。細氏は、いろいろな質問に丁寧にお答えしていただき、参加者からはいろんな意見が聞けて楽しかったと好評でした。
写真3:質疑応答時の様子
私も細さんの聴講をお聞きし、ユニークな研究でとても興味深く、生き物の進化の面白さを改めて知りました。今後もこのような講演会を開催していきたいです。
さて、今回は、西表石垣国立公園パークボランティア研修会の一環として、9月23日(火)に進化生物学に関する講演会を開催しましたので、ご報告します。
写真1:講演会開会時の様子
講師は、京都大学白眉センターで進化生物学を研究され、西表島と石垣島を調査フィールドとしている特定助教の細将貴氏をお招きしました。私たちヒトにも利き手などがあるように、他の生き物にも利き手や利きあごのようなものが存在します。たとえば、片方のハサミが大きなシオマネキ、巻き貝やヒトのつむじの巻き方向の違い、ほ乳類が胸の左側に心臓が備わっているように、体の左右で違った機能をもっていることなどが上げられます。どれもなじみのあるものですが、なぜそうなっているのかは意識しないものばかりです。細氏は、そこに目を付け、進化生物学の観点から、ダーウィンの唱える自然選択説に反する非・適応進化について研究され、西表島と石垣島に生息しているイワサキセダカヘビとそこに生息しているカタツムリが奇妙な進化を遂げていることを発見し、進化がなぜ起きたのか、どのようして進化してきたのかを解明する研究をされています。
写真2:イワサキセダカヘビがカタツムリを捕食する実験映像
カタツムリを横から見てみると、らせん状に巻いた貝殻をしています。その殻の口が右か左かで右巻きか左巻きかがわかり、多くの種類は右巻きをしていますが、細氏はセダカヘビ類が生息している分布域には左巻きのカタツムリが少数ですが分布していることを発見しました。本来、カタツムリは逆巻き同士では交尾がうまくいかず、左巻きのカタツムリが突然変異で生まれても、左巻き同士のペアが巡り会わなければ、生涯、子を残すことはなく滅びる定めにあります。
セダカヘビはカタツムリを主に食べるヘビです。細氏はセダカヘビが「右利き」で、セダカヘビ類が生息している分布域に左巻きのカタツムリが分布しているのは、セダカヘビに食べられないよう進化を促進させているのではないかと仮説を立てたのです。セダカヘビの頭部の骨格標本の下あご歯列を調べると、右の歯が左の歯の本数よりも多く、右の歯を使って獲物を食べていることがわかり、「右利きのヘビ仮説」を証明したのです。さらに根拠を深めるために捕食実験をすると、右巻きのカタツムリは、すぐに捕食されましたが左巻きのカタツムリの捕食には、圧倒的に長く時間がかかり、うまく捕食できず、取り逃がしてしまうことがわかったのです。これだけ明確に左右非対称性の歯をもつ動物は他にいないそうです。
今回は、これらの興味深い研究についてスライドを用いて、わかりやすい図や実験映像を交えながら説明していただきました。
参加者のみなさんからは「これまで生き物の左と右について考えてこなかったので、お話を聞いてとても興味深く楽しかった」「進化はどのくらいで起こるのか」「小さい頃から左巻きのカタツムリを探している」などさまざまな感想が聞かれ、質問も多く上げられました。細氏は、いろいろな質問に丁寧にお答えしていただき、参加者からはいろんな意見が聞けて楽しかったと好評でした。
写真3:質疑応答時の様子
私も細さんの聴講をお聞きし、ユニークな研究でとても興味深く、生き物の進化の面白さを改めて知りました。今後もこのような講演会を開催していきたいです。