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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

夏の海の渡り鳥 アジサシが飛来しています。【やんばる地域】

2013年06月20日
やんばる
こんにちは。
やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの上開地です。

沖縄は今年6月14日に梅雨が明け、熱い太陽が肌を射す日々が続いています。
沖縄に住む女性にとって、日焼け対策はとても大変な事だと思います。
(ちなみに私は日々日焼け対策を怠っているので、梅雨明け前から黒くなり始め、今も順調に日焼け進行中です。)

熱い日差しの合間にカタブイ(沖縄地方独特の通り雨の事)して、綺麗な虹が見れたりと夏らしい気候になってきました。

山からは様々なセミの大合唱が聞こえ、事務所の中からでも夏を感じさせてくれます。
そして海へ出かければ、青空を背景に、夏の渡り鳥であるアジサシ達の姿を見る事が出来ます。

エリグロアジサシ(2013年6月)

沖縄にやってくるアジサシの仲間のほとんどは、夏になると繁殖のために南の国からやってくる渡り鳥です。美しい流線型の体の形をしており、海上から小魚を狙ってダイブし、エサを獲ります。
やんばる地域では主に、エリグロアジサシとベニアジサシを見る事が出来ます。

ポットで休息するベニアジサシ(2012年7月)

5月頃から少数が飛来し始め、梅雨が明ける頃には本隊も到着し、海辺の岩礁で営巣します。
親鳥は岩礁のくぼみや草の上に卵を産み、日差しで卵が熱くならないように抱いて守ります。親鳥が卵を抱かないと、卵の温度が高くなり、中の雛が死んでしまうのです。

やんばる自然保護官事務所では、国指定屋我地鳥獣保護区においてアジサシ類の繁殖状況調査を行っています。
(国指定屋我地鳥獣保護区についてはセンターホームページをご覧下さい。http://www.ufugi-yambaru.com/torikumi/hogo_yakati.html

昨年はエリグロアジサシ約100羽、ベニアジサシ約120羽の飛来を確認しています。しかし、これらの中から繁殖に成功し、無事に雛が巣立てる数はごくわずかです。ベニアジサシについては過去2年間、巣立ち雛の確認がありませんでした。

これから沖縄は台風が来る季節。
岩礁で繁殖するアジサシたちは、風雨や荒波に耐えなければいけません。

厳しい自然環境を生き抜いているアジサシですが、夏は私達人間の夏のレジャーが盛んな時期でもあります。
ジェットスキーや釣りなどで、人が岩礁に近づいたり上陸してしまうと、親鳥が巣から離れてしまいます。そのまま親鳥が巣に戻れず、長い時間卵が太陽にさらされてしまうと、卵が焼け死んでしまうこともあります。

ここ数年のセンターの調査では、観察されたアジサシの飛来数に大きな変化は見られないものの、
昔の海を知る方に話を聞くと、もっと沢山のアジサシたちが訪れていたそうです。(群れの向こう側の景色が見えないくらい!)

鋭い爪もくちばしも持たないアジサシたちは、厳しい環境ではありますが、外敵の少ない岩礁で営巣します。また、群れで営巣する事で、カラスなどの外敵から巣を守ります。集団が大きくなれば巣を守る力もきっと強くなることでしょう。

夏と冬で、長距離を移動するアジサシ。
沖縄に来るベニアジサシはオーストラリア北部から渡ってきている事がわかっていますが、エリグロアジサシについては、どこで越冬しているのかわかっていません。

アジサシ達の数が過去に比べて少なくなってしまった原因も詳しいことは分かっていませんが、
今後も、営巣状況をモニタリングし、人間にとってもアジサシたちにとっても住み良い海(環境)でいられるように、いろいろな方と協力していきたいと思います。

私達一人一人が出来る事から実行していきたいですね。
海のレジャーの際には、アジサシだけで無く、他の海の生き物への配慮もよろしくお願いします!

ご協力よろしくお願いします。