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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

約20年ぶりの野焼き 【くじゅう地域】

2012年04月09日
くじゅう
去る3月29日、国立公園地域の実情を熟知した地元住民の方等を雇用して行う「グリーンワーカー事業」の一環として、約20年ぶりに大将軍(だいしょうぐん)地域の野焼きを行いました。この場所は、ラムサール条約湿地のタデ原からほど近い、やまなみハイウェイ沿いの草原です。



写真を見ても分かるように、ここは長年放置され、森となっています。
野焼き当日、長者原ビジターセンターを訪れた利用者の方から、
「なぜ、森を焼くのか?」
「太古は森だったのだから、草原に戻す必要はないのでは?」という意見が寄せられました。

飯田高原では、戦前までは牧畜が盛んで、牛を放牧し、野焼きを行いながら草原を維持していました。
昭和20年代終わりに飯田高原を訪れた文豪・川端康成は、くじゅう連山が抱かれた、どこまでも草原が続く飯田高原の景観を見て、その美しさに涙を流したそうです。


夏の飯田高原

草原のカヤで屋根を覆い、肥料を作り、牛を飼い…
人間は必要な分の草を利用し、また草原にはその場所を必要とする生き物たちがくらしていた世界がそこにありました。

しかし、経済成長に伴う産業構造の変化で、農業や牧畜が衰退し、草原に手が入らなくなってしまいました。
その結果、草原景観はもちろん、長い間草原で世代交代してきた草原性の植物や動物の住みかが失われました。
それを復活させよう、というのが今回の取組みです。

草原が森林化してからも、しばらくの間は、草原性の植物は地下で種子として生き残り、動物は付近の草原に移動して生き残る例が知られています。
その意味では、いま草原に戻せば色々な草原性の動植物が復活し、往年の飯田高原の草原景観を取り戻すことができる可能性があるわけです。

これからどのような草原が復活してくるか、みんなで見守っていきましょう!