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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

ヒゴタイの盗採について 【くじゅう地域】

2011年09月12日
くじゅう
みなさん、「ヒゴタイ」という植物を知っていますか?



トゲトゲしたなんとも不思議な花をつけるキク科の植物で、8~9月に見ごろを迎えます。

九州ではくじゅうや阿蘇など、草原のある場所に生育しています。
まだ日本が韓国や中国と陸続きだった大昔に日本に入り、以後、現在に至るまで生存している、“生きている化石”とも言える植物なんです。

ヒゴタイは、草原環境がなければ生きていくことができません。
くじゅうでは毎春、野焼きを実施して草原を維持しているため、かろうじてヒゴタイの姿を見ることができるのです。
現在、大分県では近い将来絶滅の危険性が高い種として「絶滅危惧IB類」に指定されています。

そして9月11日(日)、九重の自然を守る会のみなさんと、泉水山麓の車道沿いにあるヒゴタイの保護活動に行ってきました。
後日行われる予定の草刈時に誤って刈ってしまわないよう、あらかじめヒゴタイの周りの草を刈っておく作業です。



さっそく、ヒゴタイのニョキッと突き出た「トゲトゲボール」を探そう!

と思いきや、ない! トゲトゲボールがない!

「おかしいな。それじゃあ、葉っぱを探そう…」
と思ってヒゴタイの葉っぱを見つけたところ、



花が付くはずの茎には刃物で切り取った跡があり、花はありませんでした。
残念ながら“盗採”です。
車道沿いを確認した結果、ヒゴタイの花の6~7割が盗採されており、その被害は想像を絶するものでした。

花は、植物にとって種子を作る重要な繁殖器官です。それを採ってしまうことは、植物のその年の繁殖の機会を奪うことになり、個体数の減少や絶滅を招くことになります。

採ってしまう人のモラルには驚きましたが、まずはここが国立公園であり、そして、ヒゴタイが希少な植物であるという事実を改めて啓発していく必要があると、九重の自然を守る会のみなさんと再認識した活動となりました。