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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで50日前】

2010年08月27日
屋久島
九州いきものリレー ~屋久島の生物多様性(16)屋久島の高山植物~

みなさん、こんにちは。今回は、COP10まであと50日ということで、『日本のいのち、つないでみよう!』と『九州いきものリレー』を共同開催します。
さて、今回紹介するいきものは屋久島の高山植物です。屋久島の高標高域では、今が花の見頃です。


【和名】ツクシゼリ
【科名】セリ科
【撮影日】2010年8月26日
【撮影場所】屋久島の標高1700m付近
【備考】屋久島分布南限 絶滅危惧Ⅱ類 (鹿児島県2003)
登山道沿いの岩の割れ目に生えていました。白い花弁と黒い雄しべが、特徴的な花です。


【和名】イッスンキンカ
【科名】キク科
【撮影日】2010年8月26日
【撮影場所】標高1700m付近
【備考】屋久島固有変種 絶滅危惧Ⅰ類(鹿児島県 2003)
森林限界を超え、明るい環境の湿った場所に生えていました。一寸ほど(約3cm)の草丈に似合わない、大きな花をつけていました。


【和名】ヒメコナスビ
【科名】サクラソウ科
【撮影日】2010年8月26日
【撮影場所】標高1700m付近
【備考】屋久島固有変種 絶滅危惧Ⅱ類(鹿児島県2003)
登山道沿いの崩れた斜面に匍うようにして生えていました。

今回紹介した植物は、矮小植物といわれています。矮小化とは、気温、風、栄養・水分条件などの要因で、小型化することをいいます。矮小化するきっかけは分かっていないことが多いく、これからの研究で解明されていくと思います。

屋久島のツクシゼリは高さ3cmほどで、屋久島以外のツクシゼリはなんと高さ20cmを超えるそうです。研究が進むと、屋久島のツクシゼリは、ヤクシマツクシゼリに分類が分かれるかもしれません。
イッスンキンカはアキノキリンソウが、ヒメコナスビは、コナスビが矮小化した種であると言われています。確かに、花の雰囲気はそれぞれの種によく似ています。また、背丈や葉の大きさはかなり小さくなっていますが、なぜ花の大きさが小型化しないのかとても不思議に思います。なお、屋久島環境文化村センターで京都大学の篠原渉先生が「屋久島の高山で進化したミニチュア植物」という演題で講演されます。
詳しくはこちら、http://yakushima.or.jp/htdocs/index.php?action=pages_view_main&page_id=48

屋久島の高標高域では、屋久島固有の種、分布南限の種が数多く生育しています。つまり、屋久島の高標高域は生物多様性のホットスポットと言うことができます。しかし、温暖化による寒暖の差の増加、降水、降雪量や利用者による踏み付けと登山道崩壊によって、生育環境が悪化しつつあります。この素晴らしい生物多様性の宝庫を次の世代に残せるように、自分のできることをしっかりとやっていきたいと思います。

【参考文献】
南方新社 屋久島高地の植物