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アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。

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西表石垣国立公園 石垣

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2013年10月08日西表石垣国立公園パークボランティア海岸清掃【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本

石垣も日没後は涼しい風が吹き、暑い夏の夜から秋へと移り変わりを感じる季節になりました。

西表石垣国立公園パークボランティア活動として、国立公園エリアである石垣市の大崎海岸で漂着ゴミなどを回収し、もともとある美しい自然海岸を保全していこうと石垣市市民保健部環境課の方にもご協力いただき海岸清掃を実施しました。


回収したゴミ分別作業時の様子

海岸清掃はパートナーを組んで、約300mの作業範囲を1時間半かけて行いました。当日は、雲の多いお天気でしたが、時折強い日差しも照りつけ汗だくになりながらの作業となりました。結果は、ペットボトル7袋、空き缶1袋、発砲スチロール類6袋、可燃物3袋、不燃物6袋、漁業用資材7袋の計30袋、重量約30㎏を回収し、その他ブイ7個、廃油缶4つを回収しました。これらの中には周辺国から漂着してきたゴミも数多く見受けられました。


海外の文字で書かれた漂着ゴミ


回収した海岸ゴミ

海岸を見渡しても一見ゴミがとても多いとは感じない方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に清掃をして海岸林や防波堤の隙間を見てみるとたくさんの海岸ゴミが溜まっていることに気づきます。八重山にはすばらしい海や自然海岸がたくさんあります。自然がゴミによって汚れてしまうのはとても残念です。今回は、短い時間での清掃活動だったため、回収できなかったゴミもたくさんありましたので、今後も海岸清掃を実施して少しでも海岸のゴミを回収していきたいと思います。海岸ゴミは、自然に分解されにくい物がほとんどなので、放っておけばどんどん溜まってしまいます。

みなさんのお近くの海岸や河川にも多くのゴミが漂着していると思います。多くの地域で、このような海岸清掃や美化清掃が実施されていますので、ゴミのない美しい自然を目指して、ぜひみなさんも地域の清掃活動に参加していただければと思います。

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2013年09月11日海の自然教室(米原)を開催しました。【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

こんにちは、春口です。
8月はあっという間に過ぎてしまいました。9月に入ってから石垣島もだんだんと秋に向かっているのか、夜は涼しくなってきたように感じます。それでも湿度や日中の気温は相変わらずで、暑さが続く毎日です。

 石垣自然保護官事務所では、毎年「海の自然教室」を開催しています。今までのAR日記をご覧になっている方はこの行事の内容をご存じかもしれませんが、この行事では国立公園、また身近な海の体験を通して参加者やその周囲の人々に石垣の海の豊かさと大切さを知ってもらうことを目的としています。毎回スノーケリングによる観察会を行います。
8月25日(日)、国立公園の海域公園地区に指定されている米原海岸で「海の自然教室(米原)」を開催しました。「米原キャンプ場」が整備され、島内外の多くの利用者で賑わう場所です。昨年から、キャンプ場を管理する石垣市との共催行事としています。米原海岸はサンゴ礁の地形によって浅瀬が続きますが、岸よりに一部深場があり、比較的大型の魚や周囲とは違った生き物を観察することができます。

 今回の行事は募集定員20名に対して当日キャンセルも数件あり、結局参加者は7名。参加者が少ないのは寂しい反面、少人数制はたくさんのメリットもあります。
少人数制の一番のメリットは、やはりスタッフとの距離の近さです。今回も西表自然保護官事務所、そしてパークボランティアの皆さんにお手伝いいただき、参加者への案内をしていきます。今回は参加者7名に対してスタッフは全員で13名!陸上やカヌーでの安全係を除いても十分すぎるほどの人数です。予定ではグループに分かれて海の中を観察する予定でしたが、参加者一人ひとりにスタッフがつく、スタッフマンツーマンでの案内としました。おかげで参加者の皆さんには、それぞれのスノーケリングのスキルに応じて海と親しんでもらうことができました。



写真1.子どもにもスタッフがしっかり対応。一緒に参加したお父さんも安心の様子で、お子さんの近くで気ままに観察を楽しんでいました。


観察終了後は当初予定していたグループで集まり、案内してくれたパークボランティアの方々からのお話がありました。石垣の海のこと、米原という地域の特性、米原のリーフに広がっていたサンゴ、オニヒトデの大量発生や白化現象。私たち職員よりもっと長い時間石垣の海をその目で見てきたボランティアさんのお話に、参加者の皆さんはしっかりと耳を傾けていました。



写真2.観察後に海の中の様子やスノーケルについて振り返りました。感想から様々な話をするパークボランティアさん、さすがです。

今回の観察会を終えてアンケートを取ったところ、参加者の多くはスノーケリングの経験はあるものの、スノーケリングをする機会がないことがわかりました。また、安全面に不安があり、スタッフのいるなかで海に触れる機会を求められていると改めて感じました。この「海の自然教室」では気をつけるべき危険生物やスノーケルの使い方講習から行っていますので、自信がついたことだと思います。
 
海の自然教室は毎年2回を予定しています。次回の開催予定は9月29日(日)、国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターに集合し、近くの海の中を観察する予定です。島内にお住まいの方、島外の方もお待ちしていますので、安全で楽しい海との付き合い方を覚えてみませんか?問い合わせは石垣自然保護官事務所(0980-82-4768)、春口までお願いします。



写真3.観察できた魚の一種、サザナミヤッコの幼魚。この魚は子どもとおとなで体の模様が変わります。

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2013年08月06日富野小のコーラルウォッチ【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

 前回のAR日記で「接近中」とお伝えしていた台風7号は八重山地域を直撃しました。規模が大きかったため電柱はなぎ倒され、車はひっくり返り、地域によっては24時間以上も停電していました。もちろん電気系統は既に復旧していますが、市街地では窓をガムテープで補修した車が走っていました。
さて、台風が過ぎてしばらく経った7月23日(火)に石垣市立富野小中学校の小学生の皆さんとコーラルウォッチを行いました。富野小では、平成18年度と19年度の2年間、子どもパークレンジャー(JPR)の活動として地域の海に関する学習を行っており、平成19年度には日本で初めて学校の授業にコーラルウォッチを取り入れました。その活動はJPR終了後も学校の取り組みとして継続しています。さらに今年度からはPTAの方々が協力した新たな体制で実施するため、環境省職員もサポートすることになりました。今年度は5月に事前学習と1回目の調査を終えており、今回は2回目のコーラルウォッチとなります。
地域によって同じコーラルウォッチでも少し方法を変えています。八島小の児童と実施する真栄里海岸でのコーラルウォッチは、見つけたサンゴをランダムにチェックしています。一方の富野小ではチェックするサンゴを決め、毎回同じサンゴを調べます。適度な深場があり、特徴的な形のサンゴがたくさんある富野の海岸ならではの方法です。児童達と一緒になり、校長先生が調べるサンゴも決まっています。
3グループに分かれて行う富野小のコーラルウォッチ、今回私は高学年の担当となりました。児童にチェックするサンゴを覚えているか尋ねると「覚えてな~い」と少し気のない返事・・・。石垣の小学校は7月19日に終業式を終え、既に夏休み中。そんな中集まったので少しテンションが低めだったようです。それでも海に出てみると児童たちはちゃんと調べるサンゴを見つけてチェック。あまのじゃくな年頃なんですね。
調べたサンゴは前回の調査よりも色が濃く元気だったようです。気温が上がるとサンゴの健康度が少し落ちてしまうことが多いので、児童達は先生と一緒に「7月は気温が高いのになんで?」頭をひねっていました。(恐らく台風によって海水がかき混ぜられ、水温が下がったのでしょう。児童たちにはまだ内緒です。)



写真1.チェックするサンゴを見つけて早速調査。高学年となると手際がいいです。

コーラルウォッチの後は勝手に生きもの探しが始まります。今回のターゲットはウミウシ。女の子でも平然と手のひらに乗せてしまいます。ただ、ウミウシの種類によっては食べた生きものの毒をそのまま蓄える種類もいるようなので、不用意に触らないようにしましょう。


 
写真2.探すとたくさん見つかったムカデミノウミウシ




写真3.アオボシミドリガイでしょうか?でも触角が見当たらない・・・不思議です。
    ご存じの方はぜひokironc@coremoc.go.jp(春口宛)までご連絡ください!


 富野小では9月までの期間に月1回のコーラルウォッチを予定しています。夏場を中心に年に数回の調査を実施してきて7年目。これまで貯め続けた結果から、今年何かがわかるかもしれません。また、今後石垣のサンゴに大きなダメージがあった場合、最初に気付く小学生はきっとこの子達でしょう。モニタリングを根気強く継続している先生方にも感服します。私たちも自然の豊かさと海の楽しさを伝えつつ、サポートしていきたいと思います。

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2013年08月06日新城島インドクジャク銃器駆除【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本

最近の石垣は、毎日暑い日が続き、雨が降らないので農作物や水不足が心配になります。みなさん熱中症にも十分ご注意下さい。

さて、八重山諸島では、リゾート施設、小学校などから飼育個体が逃げ出したものと考えられるインドクジャクが野生化しており、現在、小浜島・黒島・石垣島・新城島・与那国島で繁殖しています。
インドクジャクは、キジ科の鳥でインドやスリランカなどに自然分布しています。トカゲ類や昆虫のほか、植物の芽・種子・果実を主に採食し、農作物に被害を与えることから、外来生物法の特定外来生物に準じる対策が必要な外来生物として、要注意外来生物に選定されています。

インドクジャクのオス

今回、八重山猟友会の皆さんや新城公民館の方にご協力いただき、新城島で猟犬や銃器を用いて、インドクジャクの駆除作業を実施しました。

駆除作業前の様子

新城島は竹富町にある島で、上地島と下地島の2つの島を総称しています。下地島にはインドクジャクは生息していませんが、上地島には、1969年にリゾート関連企業が宿泊施設で観賞用として飼育していた飼育個体が逃げ出し、野生化していました。その後、平成18年から23年に掛けて129羽を駆除し、現在は5個体以下まで減少していると考えられ、根絶が近い状況となっています。上地島は面積1.76平方キロメートルと小さな島ですが、集落以外の多くの場所は木や草がうっそうと生い茂っています。さらに、クジャクは木の上や草陰にジーと隠れて気づかれないようにしているため、1個体を見つけ出すことも一苦労です。
今回の駆除作業では、目撃情報の多い島内西側を重点的に朝から夕方まで捜索しましたが、1個体を発見するも、逃げられてしまい駆除することが出来ませんでした。これまで銃器駆除以外に捕獲罠を設置して捕獲を試みていますが、警戒心が強い個体が残っているため、罠に掛かる個体が少なくなっているのが現状です。島内にいる個体は、残り数羽と思われるため、再び増える前に駆除を実施していきたいと考えています。

新城島(上地島)内の様子

外来生物は、小さな島の中であっても一度繁殖してしまうと、駆除し、根絶するのに膨大な費用と労力を要します。生き物を飼育しているみなさんは、外来生物法の被害予防三原則である「入れない、捨てない、広げない」を心にとめ、責任を持って生き物を大切に飼育していただきたいと思います。今回の駆除作業に同行して、改めて外来生物を根絶することの難しさを痛感した一日となりました。

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2013年07月10日スノーケル練習会と海の危険生物【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

 ここ数日、石垣は本当に良く晴れています。観光でいらしている方々は「これぞ八重山!」と喜んでいるのではないでしょうか。ですが、現在台風7号が接近中です。みなさまどうぞご注意を。

 さて、夏まっしぐらとなる6月29日(土)、真栄里海岸にて職員とパークボランティア(PV)でスノーケルの練習会を行いました。石垣自然保護官事務所では毎年2度、「海の自然教室」と題してスノーケルを使った観察会を開催しています。この観察会を企画する私たち、そしてお手伝いいただくボランティアさんに求められるのが安全管理の知識と技術です。事故を未然に防ぐよう努め、事故が発生してしまった場合は冷静で早急な対応が求められます。職員は毎年1度の救命講習を受講していますが、すべてをマスターすることはなかなか難しいものです。そこで今回は過去に受けた講習内容を振り返り、特に重要な初期対応の練習会を行いました。

 参加者は職員3名、PV2名の計5名。復習も兼ねて進行を行う私にはちょうど良い人数です。2名のボランティアさんは、日頃から海に出かけることがあり、友人に石垣の海を案内することもあるために参加してくださいました。
初めに行った講習は、要救助者がパニックに陥った状態で浮き輪やレスキューチューブを用いて救助する方法です。相手が溺れてパニックになっている場合、慌てて近寄るとつかみかかられ、二人とも溺れてしまう可能性があります。そのため救助の際はまずは浮き輪を渡して落ち着かせます。要救助者が落ち着いたら、状態を確認しながら岸へ戻ります。浮き輪を使った救助訓練の後は、救助者の状態を確認しながらの泳ぎ方や海岸から引き上げて人工呼吸を行う際の注意点など、一連の流れを確認しました。



写真1.レスキューチューブを使った救助訓練



写真2.練習の様子を参加者に見てもらい、改善点などを話し合いました。


今回の練習会では参加者同士で積極的に確認し合い、もう一度練習するなど少人数ならではの意見交換が行われ、充実した時間となりました。私自身も今回の練習会を企画し、事前に練習することで技術をきちんと身につけることができました。

 ここで無事に練習会終われば良かったのですが、最後にハプニングが発生してしまいました。こちらもご報告します。

私たちが主催する観察会や練習会では遠くに行きすぎないよう、目印のためにブイを浮かべています。練習後にブイを撤去し、そのまま潮の流れに乗って海岸に戻っていると、不意に頬から唇にかけて電流を流されたような激痛が走りました。何が起こったのかとよく目を凝らすと、小さく透明な浮き袋と鮮やかなブルーの触手。カツオノエボシ(※)です。この日は満潮で風が強かったため、外洋から流れてきたようです。
何が起こったか理解した途端、恥ずかしながら軽くパニックに陥りマスクを外してしまいました。既に足の付く場所だったので立ち上がり冷静さを取り戻しましたが、これが足の付かない場所だったら、落ち着きを取り戻せなかったら・・・考えるとゾッとします。救助の練習をしたその日に私が要救助者になるところでした。ウェットスーツを着ていたことで過信していたのかもしれません。反省です。



写真3.打ち上げられたカツオノエボシ。指のサイズと見比べて小さいことがわかります。(過去の職員が撮影)


 海には危険な生物もたくさんいます。6月から9月までは沖縄県より「ハブクラゲ注意報」が発令されるなど注意が呼びかけてられていますが、毎年必ず被害者が出ています。
これから私は、この経験を生かしてとしても皆さんに注意を強く呼びかけたいと思います。一人では海に行かず、危険生物の対処法について知識を身に付けましょう。野外へ出かける際はできるだけ肌の露出は控えましょう。海や山へ出かける際には注意事項を確認し、予防措置を取りましょう。小さな過信が大きな事故へ繋がらないよう、楽しいレジャーをお楽しみください。

※カツオノエボシ
 全長10cm~30cm程度。透明または青白い浮き袋を持ち、浮き袋からは長い触手が伸びている。自身に泳力はなく、海面を漂いながら風や潮の流れに乗って移動する。浮き袋は風を受ける帆の役割を持つが、しぼませて海中へ沈むこともある。肉食で、触手に触れてショック死した小魚などを食べる。人が刺された場合、電流が走ったような痛みに襲われる。2度目以降に刺されるとアナフィラキシーショックを起こす場合があり、まれに死亡するケースもある(日本での死亡例はない)。
海岸で打ち上げられている個体を発見しても、しばらくは刺胞が残っているためいたずらしないこと。刺された場合は、海水で触手を落とし、氷水で冷やすこと。ハブクラゲの対処法とは異なり、酢を使用してはいけません!(一部沖縄県HPより抜粋)

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2013年07月02日西表石垣国立公園標識の塗装【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本

沖縄は、これから台風が多くやってくる季節になりますので、台風対策は万全に。
今回、石垣島に設置してある西表石垣国立公園標識の塗装を行ってきましたので、ご報告します。

石垣島には、野底マ-ペ-と呼ばれる山があり、登るルートが2つあります。1つめの野底集落の山林から登る片道約1時間のルートと、2つめの野底集落と伊野田集落をつなぐ林道の間にある登山道から登る片道約15分のルートがあります。山頂は気持ちいい風が吹いており、見晴らしが良く、サンゴ礁と白い砂浜や水平線が一望できる石垣島のすばらしいスポットです。

野底マ-ペ-と呼ばれる由来は、むかし、土地の開墾のため黒島から野底集落へ強制移住させられた人々がいました。その移住者にマ-ペ-と呼ばれる娘がおり、黒島に残された恋人を思い野底岳に登ったが、石垣島にそびえ立つ沖縄県最高峰の於茂登岳にさえぎられ、黒島の姿さえも見えず、マ-ペ-は絶望のあまり山頂で石になったという伝説があり、このように呼ばれているそうです。

標高282.4mの野底マ-ペ-(野底岳とも呼ばれています)

その野底マ-ペ-に続く林道に設置してある西表石垣国立公園の入口標識を塗装しました。林道内は湿度が高く、木材で建てられた標識は、数年の間にカビが付着していたほか塗っていた塗料も剥がれていた状況だったため、防腐・防カビ・防虫のための塗装と標識付近の草刈りを行ってきました。

西表石垣国立公園の標識塗装

標識塗装後、塗装前と見比べて色が明るくなり、標識周辺の草刈り効果で視認性も高くなったため来訪者にも国立公園を意識してもらえると思います。馴れない塗装作業で服や靴に塗料が付着し、洗濯しても落とせなく落ち込むこともありましたが、うまく塗装が出来きました。石垣島には、貴重な自然が見られるいくつかのスポットに案内標識が設置されており、これらの標識等公園内の施設の点検・整備もアクティブレンジャーの大事な仕事のひとつです。

標識付近で面白いチョウを撮影しましたのでご紹介します。撮影したのは、リュウキュウヒメジャノメと呼ばれるチョウでした。琉球諸島に生息し、八重山では2月~12月の長い期間でこのチョウが見られます。蛇の目のような模様は、天敵である鳥等の捕食者の目をくらます効果があり、鳥が眼状紋の部分を突いても体本体の損傷を回避して逃げることができるそうです。

蛇の目模様の側に白い太線があるのが特徴のリュウキュウヒメジャノメ

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2013年06月25日明石小学校子どもパークレンジャー第2回・第3回【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

 前回のAR日記では明石小学校での子どもパークレンジャー第1回を紹介しました。今回は明石小での活動第2回と第3回を紹介します。まずは第2回目の活動から。

 5月22日に行われた第2回目の学習では、学校を飛び出してシュノーケリング体験を行いました。前日まで天気予報は雨マークだったのに当日の天気は快晴、野外学習日和となりました。
 このシュノーケリング体験学習は私たちレンジャーが児童にレクチャーするわけではありません。石垣島北部にダイビングショップを持つ「八重山ダイビング協会北部支部」の皆さん、昨年度の活動もお手伝いいただいた「石垣島沿岸レジャー安全協議会」の皆さんが児童達に海の楽しさや沿岸で生活するいきものの面白さを伝えてくださいます。(その間私たちは安全対策と記録係として周囲に目を配っています。)
 スタッフとして参加してくださっている方の中には、明石小の児童の父兄もいます。お父さんがダイビングのインストラクターということは、その児童の生活と八重山の海が直接生活と結びついているということ。このシュノーケリング体験学習は、きれいな海を守ることの大切さを直に考えてもらう機会でもあります。
 さて、明石小でのこれまで2回の学習で、児童達は水や海、そこで生活するいきもの達のことを少しずつ知り、豊かな海を感じることができました。第3回は、そんな地元の海について調べる方法を学習します。




写真左上:泳ぎになれていない低学年には児童一人ひとりにスタッフがつくので安心です。
  右上:慣れてきたら少し深いところへ行ってみます。見られるいきものが少しずつ増えていきます。
  左下:高学年は潜水の練習も行いました。
  右下:最初は緊張していた児童たちも最後にはリラックスして楽しんでいました。
スタッフのお兄さん達とも仲良くなれたようです。
 第3回の学習は、水平透明度の調査体験です。
※※※
水平透明度調査とは、文字通り海中の水平方向の透明度を調べる方法です。水平方向に白色板を伸ばし、取り付けられた1m毎にマークが入っているロープを巻いていきます。少しずつ距離を縮め、白色板が見えた距離を「水平透明度」として記録します。昨年度から八重山の海に関心の高い住民が集い、島の各地で水平透明度調査を実施する「八重山イノーの水のきれいさ調査隊」を結成し、年数回の調査を実施しています。今回の学習は、調査隊のまとめ役であり、石垣島でエコツアーガイドをしている内藤さんにご協力いただきました。※※※

この調査の特徴は、水深が1m程の場所でも調査できるという親しみやすさです。前回の学習でシュノーケルの技術を身につけた高学年なら、決して難しい作業ではありません。
 調査場所は学校の敷地から歩いて5分で到着する海岸です。まずは児童達に白色板がどの程度の距離で見えるか予想してもらいました。最初の児童達の予想は15mほど。では、高学年の2人が実際に計ってみます。白色板から20m離れた位置から、砂を巻き上げないように慎重にロープを巻いていきます。15m…見えない。10m…まだ見えない。白色板が見えたのは、大きく予想を下回った4.5mでした。これには児童達もびっくりです。
 その後、石垣や小浜などこれまでの調査結果をまとめたポスターを用いて今回の明石の結果と石垣島周辺の結果を見比べてみました。透明度の高い場所では13m、低い場所では1mと場所によってばらつきがあります(詳しくは下のポスターへ)。違いを見比べながら、少しずつ疑問を見つけてくれた児童達。暑い中、本当にお疲れ様でした。



写真左上:内藤さんによる「きれいさ」のお話。児童達はしっかりと聞いています。
  右上:計測器具で身長を測ってみました!透明度を「○○君何人分?」で考えると予
想も楽しくなりますね。
  左下:高学年による計測です。20m先から白色板へゆっくり近づいていきます。
  右下:計測できなかった児童たちへの「見えない」から「見える」の体験。

 明石小の子どもパークレンジャーはこの3回で終了です。最後に行った水平透明度調査で児童達が持った疑問やこれまでの学習での関心事は明石小の総合学習「明石っ子探検隊」のテーマとなります。今後は児童達が調べ学習の時間となり、私たちは裏方でサポートです。まずは児童達がどのようなテーマを持つのか、気になるところです。今年度の子どもパークレンジャーは明石小学校のほか2校で実施しています。次回、また違った学校の取り組みを紹介したいと思います。

※「八重山イノーの水のきれいさ調査隊」は随時メンバーを募集中です。気軽にできる活動ですので、八重山にお住まいでご関心のある方はぜひ下記URL内の連絡先、または石垣自然保護官事務所春口(0980-82-4768)までご連絡ください。ホームページ内には学習で活用したポスターも掲載されています。
※当ホームページは現在仮設置中です。

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2013年06月25日今年もやってます!子どもパークレンジャー!【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

 平成14年度から続いている「子どもパークレンジャー」が今年も行われています。八重山の小学校を対象に、調査体験や自然ふれあい活動を通して地域の自然、そして自然との関わり方を学んでいく子どもパークレンジャー。今年度は一昨年度から継続している石垣市立八島小学校5年生、石垣市立明石小学校に加え、平成18年度、19年度にも活動を実施した石垣市立富野小中学校の小学生を対象として実施します。今回は明石小での活動を紹介します。

 明石小では今年度、全児童を対象に海をテーマにした体験活動を実施します。昨年度の子どもパークレンジャーでは、「サンゴ」をテーマに3回の学習を実施しました。今年度は明石小学校独自の総合学習カリキュラム「明石っ子探検隊」の一部として位置づけています。この活動は身近な海をフィールドにした体験学習を通し、児童一人ひとりが独自にテーマを決めて調べ学習を行うものです。子どもパークレンジャーでは、児童達が一年間かけて学習する「明石っ子探検隊」のテーマを決めるための動機付けとして3回の体験活動を実施します。

 第1回目は5月2日(木)に屋内で3つのアクティビティーを行いました。1つ目は人と水の一番身近な関係である体の水分について考える「アクアボディー」、2つ目の「魚をつくろう」は、様々な魚の特徴を組み合わせてタイトルの通りオリジナルの魚を作り出す活動です。



写真1.「魚をつくろう」では体の模様、体や口の形、繁殖方法といった魚の特徴を混ぜ合わせています。このグループはマグロの模様でナマズの体、コイの口、カダヤシの繁殖方法を参考にします。一体どんな生きものが生まれるのでしょうか。



写真左上:それぞれの魚の特徴を組み合わせたら、生息場所も考えます。
  左下:写真1のグループが生み出した魚、「ロイシズ」と名付けられました。
 右上下:この2種類の魚は縞模様や口の大きさは真逆ですが、どちらもカラフルです。
右下の魚は海藻に卵を産む様子も描かれています。

そして最後は「サンゴ島会議」。このアクティビティーではサンゴ礁に囲まれた無人島に、ホテルや桟橋、ゴミ処理場や発電所などを建設するリゾート開発を計画してもらいます。どこにどのような施設を建設すれば利用者が自然を楽しみ、同時に環境への影響が少なくなるのか、自然との上手な付き合い方を考えてもらいます。低学年には難しい「サンゴ島会議」でしたが、高学年が上手にリードして計画図を完成することができました。
特徴的だったのが、「サンゴ島会議」で飛行場を作るなど開発に積極的なグループでも「発電所は風力発電にする!」とエコな生活を考えてくれていたこと。風力発電所の建設は、分かれた3つのグループ全てに共通していました。「発電所の建設」は決められていましたが、どんな発電所にするのか指定されているわけではありません。自然エネルギーを用いることは、児童達が独自に考えてくれました。子どもパークレンジャー3年目の中高学年の児童たちの中には自然を大切にする心、自然とうまく付き合っていく考え方が身についているようです。今年度最初の学習で、これまでの学習の成果を見ることができたことはとても喜ばしいことでした。

 今年度第1回目の子どもパークレンジャーは良いかたちで終わらせることができました。次回の活動では、海に出てシュノーケリングと調査体験を行います。詳細は次回のAR日記でご紹介します。ぜひご覧ください。

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2013年06月03日交通事故多発・カンムリワシ放鳥【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本

 沖縄は梅雨に入り、ジメジメした天気が続いています。私は数時間の外出ですぐに日焼けしてしまいました。これからの季節、外出時には皆さん日焼け対策や熱中症対策をしっかりしてお出かけください。
 さて現在、石垣島ではコウライキジ、インドクジャクなどによる農作物の被害が問題となっています。農家さんは農作物を守るために防鳥用のテグスを水田に設置して対策を行っていますが、残念なことに水田のカエル等を捕食するために降りたカンムリワシがテグスに絡まる事故が今年に入って石垣島で2件発生しました。幸い2件とも早急な発見と救護のおかげで、無事に放鳥することができましたので報告します。このような事故が再び起きないよう農家の皆さんは防鳥用ネットに蛍光テープやリボンを付けるなど、鳥がネットに近づかないような対策のご協力をお願いします。


今年1件目に水田のテグスに絡まったカンムリワシの放鳥時の様子

 先月、救護されたカンムリワシの放鳥に立ち会いました。今年1件目のカンムリワシは、今年3月下旬にテグスに絡まって動けなくなっているところを救護された幼鳥です。救護時は片翼を痛めていたため、県の事業で行っている「野生生物ドクター」によって治療を行い、野生復帰までの期間「保護飼養ボランティア」のご協力のもと、保護ゲージで様子を見ていました。その後、リハビリを受け元気になったことから5月13日(月)に救護場所近くの小学校グランドで児童が見守る中、放鳥しました。
 放鳥時、児童たちは間近で見るカンムリワシに「かわいい」と嬉しそうに興味津々で飛び立つまで見守っていました。雨が降る天候でしたが、カンムリワシは元気いっぱいに羽を広げて森へ飛び立っていきました。


今年2件目に水田のテグスに絡まった事故時のカンムリワシ

 今年2件目のカンムリワシは、4月17日(水)に救護され、目立った外傷もなく元気であったため、4月23日(火)には放鳥されました。

 また、今年はカンムリワシの交通事故も多発しています。石垣島での平成24年の交通事故件数は7件でしたが、平成25年に入ってから5月現在で交通事故件数は6件となっており、前年の1年間の件数に並ぶ勢いです。これから石垣島は夏本番を迎え、生き物の活動も活発になるほか、観光で訪れる方も多くなります。特に夜間や早朝に自動車やバイクを運転する際は、野生動物が道路上に急に飛び出してくることもありますので、カンムリワシをはじめ、野生動物に気を付けて安全運転を努めてもらいたいと思います。


カンムリワシ交通事故防止のため設置した看板(石垣市富野)


<カンムリワシの救護連絡先>
〇石垣島
環境省石垣自然保護官事務所 0980-82-4768
石垣市教育委員会文化課   0980-83-7269
〇西表島
西表野生生物保護センター  0980-85-5582

カンムリワシの救護情報はカンムリワシリサーチHPをご覧ください。
http://kanmuriwasi.web.fc2.com/



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2013年03月04日「世界湿地の日」名蔵アンパル自然観察会【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本

毎年2月2日はラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(World Wetlands Day)」とされています。この時期は世界各地のラムサール条約湿地で催し物などのイベントや活動が実施されています。ラムサール条約湿地に登録されている名蔵アンパル(石垣市)では、この日を記念して石垣自然保護官事務所主催の『「世界湿地の日」名蔵アンパル自然観察会』を日本野鳥の会石垣島支部、西表石垣国立公園パークボランティアの方々の協力を得て実施しましたので、その内容をお知らせします。


西表石垣国立公園パークボランティアさんの解説

名蔵アンパルは、石垣西部に位置する名蔵川と海をつなぐマングローブ林が広がる河口干潟で、国指定鳥獣保護区及び国立公園にも指定されており、平成18年11月にラムサール条約湿地として157haが登録されました。干潟にはカニやエビ、貝、小魚などの多様な生き物が生息し、八重山地域を代表するカンムリワシや世界各地から渡ってくる珍しい水鳥たちがやってきて休憩場所や絶好のエサ場(サンクチュアリ)として利用しています。ほかにも亜熱帯地域を代表する数種類のマングローブ林を見ることができる貴重な場所となっています。

・今年の世界湿地の日のテーマは「湿地は水を育む」です。

今回の観察会は、マングローブ林の植物や生き物を観察しながら湿地の大切さを知っていただくことを目的に、マングローブ林の落葉などを食べるキバウミニナと呼ばれる日本最大のウミニナ(貝)の採食実験やアナジャコの巣穴を観察したほかに、なかなか日頃入ることの出来ないサンクチュアリでの野鳥観察などを通して、多くの生きものを育む湿地の生物多様性を体感していただけたと思います。


キバウミニナ採食実験の様子

今回は、幸運なことに絶滅危惧IB類(EN)(環境省レッドリスト)に指定されているクロツラヘラサギを確認することができました。クロツラヘラサギは、ヘラ状のくちばしを左右に振って、砂底に生息するカニやエビなどの底生生物を採食します。推定生息個体数は約2000羽と世界的にもとても希少な鳥です。10月下旬頃から3月下旬頃まで越冬地として沖縄などで過ごし、4月初旬から繁殖地である中国大陸や朝鮮半島へ渡っていきます。


2羽のクロツラヘラサギと手前に小さく見えるのはイソシギです。

湿地は、様々な生き物が利用していますが、釣り・潮干狩り・ハイキング・バードウォッチングなど私たち人間も楽しめる場所です。いろんなレクレーションができるほかにも、海への土砂流失を防いだり、防災の役割をはたすなど、農業・漁業・観光といった資源を生み出している私たちにとってもなくてはならない大切な場所となっています。しかし、身近にある分、さまざまな開発や私たちの生活のために湿地が失われ、汚されてしまっているのが現状です。そこで、世界の国々が協力し合い、大切な湿地を保全し、恵みを賢明に利用することを目的に「ラムサール条約」が結ばれており、日本には46カ所の条約湿地があります。これからの貴重な湿地を未来にずっと残していけるように、私たちみんなで湿地について理解し、守っていきたいと思います。

今後もこのような観察会を実施して、数多くの方にすばらしい名蔵アンパルの自然を楽しみながら大切さを知っていただけたらと考えています。きっと、毎回新しい発見に出会えるはずですよ。当主催の観察会以外にも暖かい夏場や一年を通して名蔵アンパルで催しものが開催されていますので家族や友人を誘って、ぜひご参加して下さい。


【ラムサール条約と条約湿地についての詳細は以下のリンクから】
http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/

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