ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。

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西海国立公園

31件の記事があります。

2016年12月08日黒子島保全普及啓発活動関係者の研修活動支援

西海国立公園 佐世保 佐伯信吾

平成28年10月31日  

参加者46名(パークボランティア及び関係者)

西海国立公園平戸平戸・九十九島パークボランティアと 

黒子島は、平戸港の入り口にある楕円形の無人島です。

この日、数少ない西海国立公園特別保護地区そして国指定特別天然記念物になっている黒子島に上陸しました。昔、この島は平戸藩主松浦家の所有で樹木の伐採が禁止されていたため暖地性樹木が鬱蒼とした状態をなしており、1951年に国の天然記念物に指定されました。1969年に長崎県で開催された国民体育大会にご臨席なされた昭和天皇が、わざわざこの島に立ち寄りになられた程の島です。

黒子島

小雨の中実施されました。

平戸港から瀬渡船で約10分弱。

そこには桟橋もなくこの日のために簡易の浮き桟橋を準備しました。浮き桟橋と島とつなげる工事用足場が不安定だったので落水等の事故を心配しましたが無事上陸。

恐る恐る上陸不安定な仮足場

スタートは、まず平戸港正面の西海岸にある黒子島神社に参拝し、鳥居をくぐり裏山へ。

では参拝して入山鬱蒼とした林内の足下はツタがはい、これが足に絡まり何度か倒れそうになりました。林内では、フウトウカズラ、ビロウ、アオキ、タブ、スダジイが目に付きましたが特に目立った樹木はアコウの大木。おそらく樹齢数百年はたっているだろうと思われる見事なものでした。林内に塹壕と井戸のような跡がありました。

鬱蒼とした林内鬱蒼とした林内

大きなタブ木中でも大きなアコウ西から林を横切り急な斜面を降りて北海岸へ出たのですが、そこにはどうやってこんな大きな石を積んだのだろうと思わせる石積みの砲台跡がありました。説明によると2台の砲台があったが使用されたかどうかは分からないとのことでした。おそらく平戸瀬戸に入ってくる外国船を攻撃するためのものだったのでしょう。

帰りは東海岸を右周りに黒子島神社に戻ってきました。

砲台跡の石積み

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2016年12月08日平戸市中津良小学校 若宮浦干潟の観察会

西海国立公園 佐世保 佐伯信吾

日 時 平成28年10月23日(木)

場 所 平戸市中津良 若宮浦干潟

対 象 平戸市中津良小学校3、4、5、6年生

地元中津良(なかつら)小学校の総合的な学習の時間の活動協力依頼があり学校近くにある若宮浦干潟で生き物観察会を実施しました。

これは、地元在住のパークボランティアが地元の自然を小学生に知ってもらおうと学校に働きかけ、学校も是非にということで実施に至ったもので全校児童の25名で複式学級になっている小さな学校です。

干潟には敷佐川(しきさがわ)、中津良川の2つの川が流れ込み、干潟になっている(写真)

入り江は、細長く蛇行し以前は海苔養殖も行っていたそうですが今では跡形も残っていません。

若宮浦干潟

中津良地区は、中津良川のゲンジボタル棲息地と知られ、時期には観察会も実施されるなどから地域ぐるみで自分達の自然を大事にしようというムードが漂っているところです。

ノコギリガザミの一種ドロアワモチ

アナジャコの一種

今回の登場生き物は、ドロアワモチ(写真)、ケフサイソガニ(写真)、カブトガニの子ども(写真)、大きくて美味そうなノコギリガザミの一種(写真)そして児童達が見つけたアナジャコの一種。

中でも干潟をはっていたドロアワモチに児童達は特に興味を示し、不思議そうに手に取り観察しながら我々の説明に聞きいっていました。

カブトガニの子どもケフサイソガニ

カブトガニについては特別に剥製を持ってきて、雌雄の見分け方、この干潟のような産卵場所が年々減少しているため生息数も減少していること等を説明しました。

また、児童達は、底なし沼の様な干潟で遊び(写真)、長靴を干潟に取られた児童を助けに行った児童も足を取られる等面白い光景に笑ってしまいました。

干潟に足がはまり悪戦苦闘

おそらく、この干潟に入ったのは殆どが初めての児童達ばかりであったと思います。遊ぶことから自然環境保全が始まると考えます。これを第一歩として、若宮浦干潟でもっともっと遊んで欲しい。

終盤、平戸は歴史だけでなく稀少動植物の種類の多さでも特に貴重な島だから、地元の自然は地元の人が保全、保護する意識が必要なことを話して終わりにしましたが、この話に児童達が熱心に耳を傾けていたのが印象的でした。

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2016年11月30日九州特産物リレー11月 ~「椿」東の大島、西の五島~

西海国立公園 五島 竹下洋子

 こんにちは!五島自然保護官事務所の竹下です。毎月リレー形式で「その土地ならではの特産物」に関する日記を掲載していますが、11月の五島編では椿を紹介します。「東の大島・西の五島」といわれるほど五島列島は日本有数の椿の産地で、各地に椿の自生林や植林が多くみられます。椿の原始林は久賀島(ひさかじま)東岸の長浜にあり、広さ約1ヘクタールの長崎県指定天然記念物です。椿は長崎県の県木、新上五島町の町木・花、五島市の花木で、和名をヤブツバキといいます。花が散った後、椿実(五島ではカタシと呼びます)は9月初旬ごろまで成熟するため、1本の木に数個の口割れの実が出始める中旬過ぎから至る所で収穫風景を見かけます。


左:濃紅色が特徴のヤブツバキ

右:口割れした椿実に詰まった種

 かつて集落ごとにあった小さな製油所は機械等による効率化で集約され、現在 福江島には4つの製油所があります。製油所では圧搾機で搾油しますが、家庭にある器具でも手軽に椿油を作ることができます。修学旅行生や観光客等を対象とした椿油作り体験教室に私もスタッフとして参加しました。参加者は種を細かく砕くのにかなり時間を要しましたが、いくつかの工程を経た油が完成間際一気に白く変わった瞬間、ウォーッと歓喜の声があがりました!耐熱容器に注ぐ一番搾りのツバキ油は、黄金の雫のようにキラキラ輝いていました。この日の夕食は、五島の新鮮な魚介と椿油を使ったパエリアです。

  

初めて椿油作りを体験する子ども達。搾りたての椿油は炒ったナッツのような香りがしました。

 椿油は、昔から頭髪用・燈用・食用・石鹸原料・艶出し用・刃物錆止等さまざまな用途に使われてきました。椿油は、善玉コレステロールを減らすことなく悪玉コレステロールを減らす作用があるオレイン酸の含有量が85%とオリーブオイルを大きく上回ります。椿油を使った製品のうち、当地では遣唐使の時代に大陸から伝わったといわれる「五島手延べうどん」がお薦めです。五島手延べうどんは、五島列島特産の椿油で生地を延ばし島の良質な海塩を使い潮風による自然乾燥を行いますが、細く手延べしてもコシが強くつやがありのびないのが特徴です。上海テレビ祭のドキュメンタリー最高賞のマグノリア賞を受賞した「五島のトラさん」でも製造工程が紹介されたので、ご存知の方もいるかもしれませんね。


左:様々な用途に使われる椿製品

右:細くてコシのある五島手延べうどん

 西海国立公園鬼岳の中腹に位置する五島椿園には約3000本(約270種)のツバキが植林されているため、様々なツバキを花期に応じて長期にわたり鑑賞できます。椿の蜜を吸いにやってくるメジロも見られ、自然の豊かさを間近で感じることができます。ヤブツバキの中でも傑出して愛好家に好まれているのが、「玉之浦」という椿の種類です。玉之浦町の山中で発見されたこの椿は、ヤブツバキの突然変異で花弁に純白の縁取りがあり、深紅の花が満開の時期に潮風に吹かれて咲くさまは何ともいえない美しさがあります。以前は、幻の椿とまで言われてきましたが、今日では挿し木や接ぎ木でかなり普及するようになっています。

  


左:白く清楚な五島の銘花「久賀白(ひさかしろ)」

右:濃紅色に白覆輪のコントラストが美しい「玉之浦」

 ヨーロッパの教会ではバラの花が飾られますが、五島では教会のステンドグラス等に椿の花・葉・実があしらわれており、古くから島の人にとって生活や信仰の上で身近な植物だったことを教えてくれます。これからだんだんと気温が下がり冬らしい季節になってきますが、そんなときに凜とした赤い花を咲かせる椿を見ると、背筋がピンと伸びます。みなさんも、ツバキを五感で楽しんでみませんか!

 12月の特産物リレーは、屋久島の水川さん、野生生物課の古賀さんにバトンタッチです!

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2016年11月17日西海国立公園平戸・九十九島地域子どもパークレンジャー

西海国立公園 佐世保 佐伯信吾

西海国立公園平戸・九十九島地域子どもパークレンジャー

「九十九島あそびたい」実施

10月14日(金)、環境省子どもパークレンジャー事業の一環として赤崎小学校3年生の児童を対象に、総合的な学習の時間を活用し長尾半島で自然で遊ぶ会(あそびたい)を実施しました。

レベルブックに添付された長尾半島の地図

長尾半島は、西海国立公園の表玄関、鹿子前集団施設地区の一角にある無人の半島です。また、赤崎小学校は、児童の縄張りにあります。地域の豊かな自然とそこに棲息する動植物と友達になり、自分達の遊び場が国立公園であることを認識して西海国立公園を故郷自慢にすることを目的として実施しました。

植物は、シャリンバイ、ツクシハギ、ネジキ、ホルトノキ、クスノキ、カノコユリ(佐世保市の花)等が自生する他、北九十九島を自然分布北限とする稀少なハマジンチョウやハカマカズラ、ハマオモト、ハマボウ、ハマゴウ等の当地の海岸植物があります。

長尾半島に自生している佐世保市花のカノコユリ

観察会は、児童達にできるだけ考えさせるという手法で進められました。

集合場所の駐車場では、落ちているドングリを手に取り表面の小さな穴を見つけさせ、この仕業は昆虫のオトシブミ科のハイイロチョッキリだということを教えて中を見せると児童達は自分で幼虫を探すため歯で実を割り中身を確認していました。早速、この日環境省からプレゼントされたユポ紙のレベルブック(水に濡れても字が書ける特別なフィールドノートで長尾半島の地図や図鑑付き)にメモやドングリの絵を描いていました。

濡れても字が書けるレベルブックを環境省が児童にプレゼントレベルブックに長尾半島の植物図鑑を添付歩き始めるとヌルデの虫こぶ発見、虫こぶは何が変化したものかと児童に尋ねると「葉っぱ」と元気よく答えが返ってきました。虫こぶが出来る原因は、アブラムシの一種の仕業。虫こぶの粉と鉄錆を混ぜてお歯黒の原料にしていたことなどの話もしました。(お歯黒:平安時代貴族の間で男女共に歯を黒く染める風習で成人を意味するものであったらしいです。また、歯に塗布することで虫歯の予防等の効果もあったとのこと)

ヌルデミミフシの中身ヌルデミミフシを手に持って説明海岸では、絶滅危惧種のドロアワモチを発見。児童達は手のひらに置き、奇妙な生き物に関心をよせていました。ドロアワモチについて、殼は持っていないが貝の仲間、干潮の時に干潟に出てきて潮が満ちて来ると肺呼吸のため潮の来ない岩陰に潜む、干潟の表面を泥ごと食べて栄養分を吸収し他は排出する、だから移動の跡に見られる線状のものは糞、この生き物も絶滅が心配されていること等の説明にびっくりしました。

干潟を移動するドロアワモチ(手前がおしりで先が頭)歩道法面に15センチ位の大きなヤマナメクジも登場。児童達に講師が天敵はと尋ねると「マイマイカブリ」と直ぐ児童の一人が答えたのには誰もが感心していました。手にとって体の表面を覆っている粘膜に触れさせると粘着力に驚き、接着剤のようだとビックリしていました。(ヤマナメクジ:カタツムリと同じく陸産貝類の一種。)このような体験をできることが、野外学習の最大メリット。シナリオに無い生き物達の出現に一喜一憂しました。

大きなヤマナメクジチガヤの葉を使って草笛も鳴らしました。各々が違う音色を出したりまた全く出せない児童は葉っぱを持ち替えたり取り替えたりと試行錯誤しながら手作りの楽器を楽しんでいました。

また、展望台から見える景色を通して佐世保の今の地形の成り立ちを講師が描く絵を見ながら確かめてもらいました。

終盤、半島内のネムノキをクラスの木として決めたもので、今後この木の幹周

りを定期的に計測したりすることで半島への愛着も更に深めてもらいたいです。

今回、児童達にふるさとの自然の大切さ等を学ぶまたとない機会を提供できたと思います。

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2016年11月16日九州百名山~七ッ岳登山にチャレンジしよう!~

西海国立公園 五島 竹下洋子

 こんにちは!五島自然保護官事務所の竹下です。10月30日(日曜)、ふれあい事業として毎年実施している七ッ岳(ななつだけ431.1m)登山に私もスタッフとして参加しました。開催の数日前、安全確認のため登山ルートを事前調査し、台風等の影響による倒木等の処理を行いました。

左:登山道を遮る倒木の処理

右:登山道の急峻な岩場

 九州百名山に選定されている七ッ岳は、7つの岩峰が連なる鋸歯状の山で、荒川方面から七嶽神社へ向かう九州自然歩道からもその美しい姿を見ることができます。標高はあまり高くないものの山頂に近づくにつれアップダウンが多い登山道には急峻な岩場もあります。そのため、出発地の七嶽神社で参加者に対し、岩場での基本姿勢である三点支持等自然保護官から注意事項を説明しました。


左:荒川方面から望む七ッ岳

右:出発前の注意点事項説明

 旧七嶽神社奥殿へ続く参道は、石段を登るほどに間隔や奥行が狭くなるため1段1段足元を確かめながら進みます。父ヶ岳登山道との分岐点から七ッ岳山頂方向へ暫く登ると左右が樹林に覆われた比較的歩きやすい道が続きます。単調な道ですが、地面や岩肌をよく見ると見逃してしまいそうなくらい小さなシダ類・ラン類等の葉が見つかることもあります。今では九州百名山に選ばれたこともあり登山者も多くなりましたが、昔はミサゴの巣を山頂に近い岩壁で確認できたそうです。


左:旧七嶽神社奥殿への石段

右:登山道で見かけたウンゼンカンアオイ

 七ッ岳は、岩場登りや稜線歩きが中腹あたりから続きます。ここ最近少しずつ朝晩の気温が下がるものの日中は秋らしい清々しい日差しも射すため、登り道では羽織っていた上着を一枚脱いだり、袖をまくったりと衣類で調整しながら進みます。樹林に覆われた登山道から急に木々に隠れていた前方が開け、目指す山頂方向や玉之浦湾を見渡すことができ、参加者の中には初めて見る景色に歓喜の声をあげていました。


左:樹林に覆われた登山道を進む参加者

右:山頂付近より望む玉之浦湾

 七ッ岳山頂からは、東に福江島の米どころ山内盆地、西に五島列島の代表的な国立公園区域である玉之浦湾の大パノラマを眼下に見渡すことができます。

 参加者の方から、枝の幹半分がまるで白いペンキが剥げかけたように何かが白く付着した不思議な枝を拾ったと見せてもらいました。おそらくカビか地衣類が枝についたものと思いますが、ご存知の方はいらっしゃいますか。


左:山頂での昼食は最高!

右:白い何かが付着した枝

 下山後に参加者に行ったアンケートでは、「登山に興味はあるが1人では不安なので、このイベントに参加して七ッ岳の魅力を体験できて良かった。」等の声を聞くことができました。山に花が咲き始める春ごろ、一味違う景色を楽しめるかもしれません。みなさんも「七ッ岳登山」にチャレンジしませんか!

七ッ岳山頂で記念撮影(後方は山内盆地)

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2016年11月02日第10回 ひらどツーデーウオーク2016エコトレッキング

西海国立公園 佐伯信吾

AR日記

第10回 ひらどツーデーウオーク2016エコトレッキング

生月・御崎コースの歴史、文化、自然観察会実施

  1. 日 時 平成28年10月9日(日)

  2. 場 所 平戸生月町 生月海浜公園~大婆鼻灯台(おおばえばな灯台)自然歩道

    強い秋風が吹き肌寒く感じましたが、トレッキングには持ってこいの秋晴れそして大きなうねりとなって打ち寄せる波が海岸線を一際美しくしていました。  

    波打ち際

    風と波が演出する白い海岸線と青い空のもと目的地である大婆鼻灯台を目指しました。

    行く手方向の左に見える小値賀島(おじかじま)、野崎島、宇久島(うくじま)の案内から始まり、後方に見える安満岳(やすまんだけ)山頂付近が神道、仏教、キリシタンの共通の聖地であったこと、猿の横顔に似た岩の紹介、歩道沿いに開花する秋の花々、年に一回越冬地である鹿児島県出水平野に飛来するナベヅルとマナヅルが、繁殖地であるロシア南東部と往復する時の飛行ルートの一つに生月島の上空がなっていること等を説明しながらのトレッキングでした。

    1. 猿岩
  3. 自然歩道の様子

途中展望所牛放牧場沿いに歩道あり白バナノダケ草原で見つけたタヌキマメ

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2016年10月18日平戸市安満岳トレッキング

西海国立公園 佐世保 佐伯信吾

 平成28年10月2日(日)に17名の参加者とともに「平戸市安満岳(やすまんだけ)トレッキング」が開催されました。

ぎりぎりまで天候が心配されましたが、予定通り実施し事故も無く終了しました。佐世保市から集合場所である鯛ノ鼻(たいのはな)に向かう途中は濃いガスに包まれていたので天候を心配しましたが、鯛ノ鼻展望所から生月五鼻への眺望が素晴らしいのですが、今回は五島列島方面は晴れていましたが生月方面だけが雲の下。私事ですが、もう少し早く到着すれば滅多に無い素晴らしい雲海であっただろうと少々残念でもありました。

鯛ノ鼻からの展望

      

生月方面雲海   

  講師のパークボランティア副会長の邑上先生が、安満岳の地形、歴史、植物等の多分野にわたっての笑いをおりまぜながら案内をされました。中身を少し紹介します。安満岳は、この山が神道、キリスト教、仏教の重層信仰の聖地であること、平戸のお殿様が毎年1回志々伎山(ししきさん)と安満岳の通称両山巡りを2泊3日の強行スケジュールでこなしていたこと、この時使っていた道である下方(しもかた)街道を最近探しあてた事、山頂近くの二の鳥居横にある楊柳山西禅寺(ようりゅうざんせいぜんじ)の説明、このまた脇にある五輪塔のこと等のウイットにとんだ解説が更に参加者を引きつけていました。観察会風景

※参考

○安満岳の説明

この鳥居から安満岳山頂まで続く石畳安満岳は、神道、キリスト教、仏教の重層信仰となった隠れキリシタンの聖地です。また、自然の聖地でもあることから、秋の一般向け自然観察会を実施しました。

輝石安山岩が主体の北部に有る本島最高峰の安満岳(536.4m)。特に西側の生月島からは、原生林が広がる雄大なメサ(残丘)地形を眺める事が出来ます。

鳥居をくぐり山頂へ山頂までアカガシを主体とする原生林で覆われた石積みの階段は、荘厳な雰囲気があります。安満岳山頂岩場と西側に開けた鯛ノ鼻自然公園からの生月方向の展望は雄大で、西海国立公園の平戸北部の名所となっています。(立ち入り防止柵があるので注意!)

この山の原生林、岩場及びその周囲には貴重な植物が生育していて、平戸の植物のホットスポットとも言え、特に春秋のトレッキングは十分楽しむことが出来ます。

ヤマホトトギスウスヒラタケ(食用キノコ)

マルバオウセイ  

○春日地区の説明

平戸島は長崎県の西端にあり、その中でも西側の海岸にある春日地区。その山間には広大な棚田が広がっています。この風景は400年前からほぼ変わることなく、今もそのまま残っています。

春日は「かくれキリシタン」の伝統文化を持つ地域で、平成22年2月に国の重要文化的景観に選定されました。

安満岳からの春日棚田春日集落にある棚田はまだ観光地化されてはいないので、まさに日本の里山の原風景を見ることができます。安満岳から豊かできれいな水が流れていて(春日川)、棚田の稲作に利用されています。海から標高200メートルほどの山間までずっと棚田が連続しています。田植えの後の棚田は、緑が映える美しい光景になります。

「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は世界遺産の登録を目指していて、春日集落はその一つである「平戸島の聖地と集落」を構成する大切な地域です。

平戸島はフランシスコ・ザビエルが布教を始めた場所であり、日本でキリスト教が最初に伝来した場所でもあります。しかし、16世紀末以降は厳しい禁教政策が行われました、平戸では多くのかくれキリシタンがその信仰を守ってきました。春日集落の真ん中にある「丸尾山」の山頂にある石祠のあたりからは、キリシタン墓地が発掘されました。

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2016年09月21日アカハラダカ観察会

西海国立公園 佐世保 佐伯信吾

 パークボランティアの研修の一環でアカハラダカの観察会を実施しました。場所は、全国でも鳥愛好者の間ではよく知られている長崎県佐世保市烏帽子岳(568M)です。また、ここは西海国立公園第2種特別地域です。

 この日もアカハラダカシンドロームにかかった方達が大きな望遠レンズで狙っていました。

遠路はるばる数日間の予定でやって来られる方が多く殆どが宿泊所を利用されているようです。中には、キャンピングカーを利用されている方もおられます。この日は、島根県や福井ナンバーの車がありました。

冒頭、日本野鳥の会長崎県支部会員である講師の今里先生がアカハラダカの生態、越冬地までの飛行方法、ルート等についての説明おこなっている途中も「アカハラダカが来てる」という声かけでやむなく中断し空を見上げ、通過後再び説明を続けるといった調子の大変忙しい観察会でした。

8時から10時まで次から次へとひっきりなしに頭上や真横を通過して行きました。観察場所の正面付近では毎年通っている当方でさえ滅多に見れないような大群の鷹柱が確認される等、屋外ならではの充実した素晴らしい研修となりました。

※この日の参加者は、13名でした。お疲れ様でした。

観察会スタートアカハラダカの鷹柱アカハラダカハチクマ

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2016年08月29日高島清掃

西海国立公園 佐伯信吾

 九十九島の会の皆さん(16人)に同行させていただき、グリーンワーカー事業による高島海岸の清掃、動植物調査と遺跡、戦跡の学習をしてきました。

 高島は佐世保市の中心部から車で約30分走った相浦港からフェリーで約30分で着きます。前回の日記で取り上げた伊島よりもずいぶん近い場所にあります。

 高島も西海国立公園の特徴の一つである九十九島の多島海景観を構成しており、九十九島の中では黒島に次ぐ2番目に大きな島で陸繋島となっており、その陸繋砂州上の平地に集落があります。住人の多くが漁業関係者で水産加工業として「ちくわ」の製造所もあります。佐世保名産となっている高島ちくわの原料は、近くの海域で獲れるアジやエソがふんだんに使用され澱粉等のつなぎは使用されていません。大量生産ではなく工場でひとつひとつ大切に製造され、一般のちくわに比べて魚の量が多いため香りも味も濃厚でおまけに歯ごたえのある食感です。食べ方は、とろ火で焼いたり、加熱した温かい状態で豪快に丸かじりこれが最高です。この味でゆずやわさび醤油で食べると美味さが倍増します。

  

 島には、標高136mの番岳(ばんだけ)があります。この番岳は本土側から平戸五島列島まで見渡せる適地であったため昔より国防上の重要な役割として位置づけられていました。

 また、宮ノ本遺跡もあります。これは、弥生時代(2300年~1700年)の遺跡。最南端の番岳と北部の山間部をつなぐ間が平地になっており島の集落の中心部になっていました。ここでは散発的に人骨が出土しており、そのたびに現地の人々は「骨さま」と称した石塚に埋葬していました。最も重要な弥生時代の包含層からは、中央部の墓地から40基の墓と40体の人骨、多数の副葬品が出土しています。墓は箱式石棺、土壙(どこう)、甕棺(かめかん)が混在。石棺は男性が中心で土壙は女性が中心であることから、性別による埋葬法の差別化・区別化があったと推定されます。8体の女性は左手首にイモガイ腕輪をつけて埋葬されていました。弥生時代から宝物として珍重されていたイモガイは、南西諸島原産であるにもかかわらず、宮ノ本独自の加工が施された物が、北海道の有珠10遺跡でも発掘されており、宮ノ本が貝の東シナ海流通ルートの中継拠点だったことが実証されました。その一翼を船で担っていた宮ノ本弥生人は、内陸弥生人に比べ足よりも上腕が発達していたことが判明しています。

  

 そして、時代とともに地形から国防上の役割も強化されていきました。

 江戸時代の1640年には平戸藩により番所(警備の詰め所)がおかれ外国船発見など有事の際ここで火を立て(狼煙)小佐々の冷水岳を通して平戸城下に知らせたり、幕府直轄領の長崎にいち早く知らせるため高島から針尾へ早舟(6人漕ぎ)で通報したりしていました。さらに、1941年太平洋戦争が始まると日本海軍によって高島にも軍港防備のための高射砲台が建設されました。

 高島番岳砲台は佐世保市が初めて空襲を受けた1944年7 月以降たびたび飛来する敵機に対し砲撃を加え撃墜の記録も残っています。89 式12.7 センチ連装高角砲2 基、97 式聴音機、150 センチ探照灯を装備していました。砲座は解体されましたが、山頂に聴音機跡や探照灯跡、聴音照射指揮所跡や兵舎跡が良好な状態で保存されており、兵舎跡には風呂や発電機の跡がわかりますよ。

番岳山頂は現在公園として整備されており、2カ所の展望台と複数の説明板も設置されています。長尾半島から株分けしたトビカズラもすくすく生長しています。

  

 清掃では、ハマナタマメ、ハマヒルガオ、ハマオモト、ハマゴウ、ハマナデシコ、ハマダイコン等の海浜植物が自生する海岸の漂着物の回収を行いました。休憩に平尾会長の夫人がサービスされるキンキンに冷えたお茶が炎天下の作業にとっては命の水ように感じました。ありがとうございました。

   

高島集落

 

回収したゴミの量

   

狼煙を上げた場所

   

遺構説明

   

聴音照射指揮所跡

   

ノシラン

   

ハマナタマメ

   

ハマゴウ

   

高島の場所:地図の左端の細長い島。

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2016年08月15日長崎県西海国立公園 九十九島地区 伊島海岸清掃と生き物調べ

西海国立公園 佐世保 佐伯信吾

九十九島の会の皆さん(22人)に同行させていただき、グリーンワーカー事業による伊島の清掃、動植物調査をしてきました。

グリーンワーカー事業は、地域の自然や社会状況を熟知した地元の住民団体等により、地域の実情に対応した迅速できめ細やか自然環境保全活動を推進し、国立公園の管理のグレードアップを図ることを目的に行われています。

今回は、北九十九島の玄関口である臼ノ浦港から出港。伊島まで約30分。浅瀬に囲まれるため接岸するのが大変困難な瀬渡し船泣かせの島です。大小2隻の船で近くまで行き、接岸する時は、小さな船を使います。人にとっても、足場となる岩に海藻やフジツボが着生しているため滑りやすく上陸には危険を伴います。

伊島紹介:佐世保市にある南北に細長い無人島。海岸を歩いて一周するのに約2時間。島の南西側は、強い風の影響を受け低木ばかりで、この下には一面コシダ(シダの仲間)が繁茂していて歩くのが大変です。樹高は、北側に行くに従い高くなっています。

また、島では、カラスバトを春から夏にかけ確認していますが、繁殖の確認はありません。南側の海岸は、大きな岩が重なりあい洞ができています。平成6年、クロサギの3ペアが、この洞を利用し繁殖したことがあります。

伊島

※カラスバト:ハト科。全長約40センチ。本州中部以南の限られた島嶼に分布しています。全身黒色で頭部には紫赤色、嘴は暗青色で、先端は緑色。足は赤色。島での開発や頻繁な人の出入りが生息環境を悪化させ生息数が減少しています。

カラスバト

※クロサギ:サギ科。全長約62cm。本州以南に分布しています。こちらでは、黒色型が殆どですが、南西諸島では白色型が多くなってきます。他のサギに比べくちばしが、太くて長いため頑丈そうに見えます。確認される場所は、海岸の岩場を好みますが、干潟や海岸に近い湿地で見ることもあります。

クロサギ

清掃では、漂着物の回収をしましたがペットボトル、漁業関係の発砲スチロールが殆どでした。昼食時には、炎天下の作業で皆さん日焼けした中、冷やしてわざわざ持って来た素晴らしく美味しいスイカを頂き充実した一時でした。

 

冷えたスイカ美味しかった 

ハネビロトンボ

 

ハマオモト

 

ヒトモトススキ

伊島の場所:地図の中心の付近に小さな島が2つ並んでありますがその一つ。

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