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とらやまの森第10号 |
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対馬の動物シリーズその10 |
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ハヤブサタカ目 ハヤブサ科 ハヤブサ 対馬は野鳥の宝庫である。日本で知られる鳥類のうち、その半数以上の約320種程が対馬で観察されている。 上県町棹崎の断崖絶壁の岩棚にはハヤブサの巣があり、2000年5月9日、親鳥がエサを運んでくると、「ピーピーピー」とねだる幼鳥の声を聞いた。無事に育ってくれればいいのにと思った。5月20日には、巣の前でウロウロしている若鳥の姿を観察することができ、巣立ちの日も近いなと感心しながらその場を後にした。6月に入ってからも一度だけ観察に行ったのだが、その時は親鳥しか見ることができなかった。もう巣立ってしまったのかもしれない。 7月2日午前10時頃に上県町佐護湊の漁師の方によってハヤブサの若鳥が、対馬野生生物保護センターに持ち込まれた。この方の話によると、棹崎沖で疑似餌を船で引っ張って漁をしていたところ、海の中の疑似餌にハヤブサが飛びつき足に針が掛かったということだった。巣立ったばかりのハヤブサに間違いないと思った。早速、段ボール箱の中を覗いてみると、羽が海水で濡れており、足に少し傷を負っていた。幸い翼も足も骨折等が無く少しホッとした。羽が乾いてから体力の回復を待って放鳥することに決めた。そこで、スーパーの精肉売場へ行き、鳥レバーと手羽先肉を約400gずつ購入した。ハヤブサが入っている段ボールの箱の蓋を開けると、「ハーッハーッハーッ」と口を大きく開けて威嚇してくる。レバーを程良い大きさに切り分けてから箸で摘んで嘴の前に差し出すとパクッと食いついてきた。それを何度も繰り返し、食べるだけ食べさせてみると、150g程食べたあたりで嘴を閉じたまま開かなくなった。次の日の朝、様子を見るために蓋を開けると相変わらずこちらを威嚇してくる。少し餌を食べさせて巣の見えるひらけたところまで連れていき放鳥を試みたが、まだ体力が回復していないのか充分に羽ばたいて飛ぶことができない。次の日もその次の日も試みたが失敗に終わった。センターには傷を負ったヤマネコ等をリハビリさせて再び野外へ返せるようにするためのフェンスで囲まれた野外飼育ケージがあるので、その中でリハビリテーションを行い、飛べると判断できるまで飼育することにした。7月7日には餌の食いも良好で、フェンスの端から端まではきちんと羽ばたいて飛べるようになった。これならいけると思った。 7月8日いよいよ放鳥の日、気温の上がらない午前中が放鳥には適しているため、朝のうちに餌を少しだけ食べさせて輸送用の段ボール箱へ移した。ハヤブサなどの猛禽類は嘴と足には充分注意しなくてはならない。こちらがケガをしかねないからだ。棹崎公園内にある一番高いと思われる砲台の跡地の近くに箱をおいた。適度に風があって絶好の放鳥日和だった。蓋を開け、とまり木を掴ませて箱の外へ出すと勢い良く羽ばたき気持ちよく空を旋回して姿が見えなくなった。その後も棹崎付近で蝶を空中で捕まえて食べていたり、悠々と大空を旋回しているのを9月には行ってからも確認することができた。 |
読者の声コーナー |
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このコーナーは、読者の方々から寄せられたご意見を取り入れたり、ご質問にお答えするコーナーです。毎回発行後にはたくさんの反応をいただきますが、今回は本誌の愛読者である東京都のMさんからいただいた励ましのお便りを紹介いたします。
前9号の表紙を飾った福岡動物園のツシマヤマネコの仔ネコの写真は、Mさんをはじめ、たくさんの方に好評をいただきました。仔ネコは9月末現在も元気ですくすく育っている模様です。棹崎公園でも幼さの残る若いヤマネコだと思われる個体が何頭か目撃されています。彼らが安心して暮らしていける対馬を残していきたいものです。 Mさんには、「対馬花の絵はがき」をお送りいたします。これからも、「とらやまの森」をどうぞよろしくお願いします。 <Ask> |
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