対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第10号

 

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フィールドノートから テレメトリー調査編


 前号までで、捕獲の下準備から、捕獲したヤマネコに電波発信機を装着し、捕獲地点まで運んで放すところまで説明してきた。今回は、生態や行動を明らかにすることを目的としたテレメトリー(ラジオトラッキング)調査について話をしようと思う。
 テレメトリー調査の基本は、その時の対象個体のロケーション(位置)を定位することだ。長期にわたるロケーションの蓄積により行動圏内の環境利用や日周期活動、個体間関係などが浮かび上がってくるのである。テレメトリー調査に出かける時に準備しないといけない物は、指向性のハンディアンテナ、レシーバー、コンパス(これは知りたい地点の方位が覗くだけでわかる優れもの)、地図、時計である。

 それら5点セットを車に積み込みヤマネコ探しに出かける。もちろんレシーバーの電源はONにして、とりあえず車に着けたモービルアンテナに接続しておく。すぐに見つけられるときもあるが、色々な場所をまわってもなかなか電波を拾えず、山道を歩いて探すこともある。電波発信機を着けたヤマネコの近くを通るとレシーバーが「ピッ・ピッ・ピッ…」と鳴り、発信音を拾って知らせてくれる。電波の良く入る手頃な場所に車を止め、今度はハンディの八木アンテナをゆっくり振ってヤマネコのいる正確な方位を探し出す。アンテナを振っているときに人と出会うことがあり、「何をしているんですか?」と怪しい目で見られたり、「ここは携帯の電波は入るんですか?」と携帯電話の調査と間違われたりすることがたまにあるが、「ヤマネコの調査をしているんですよ」と説明すると皆さん理解して「頑張って下さい」と声をかけてくれる人もいる。
 対馬の地形は、山有り谷有りなので電波が反射していろんなところから発信音が聞こえるが、一番良く入るところを探し出し、その方向をコンパスで見る。で、地図に時刻、方位、“Act”か“Rest”かを記入する。ヤマネコが動いているときが“Act”で発信音が不安定に聞こえ、休んでいるときが“Rest”で「ピッ・ピッ・ピッ・・・」と安定した音で聞こえる。その作業を3ポイント以上の場所から行い、各方位の交点を地図におとすことでヤマネコの現在いる場所や、そこで休息しているのか、または動いているのかがわかる。この調査を毎日やることでヤマネコの行動範囲等がみえてくるのである。
 今まで蓄えてきたテレメトリー調査の結果は、センターに展示しているので、ぜひ見てもらいたい。テレメ調査はまだまだ続く。  <Mk><T2>



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