皆さんは「ヒゴタイ」という奇妙な名前の植物を御存じですか。ヒゴタイはキク科の多年生草本で、その仲間は世界に120種ほどあると言われています。日本での自生はまれで、本州(愛知県、岐阜県、岡山県、広島県)、四国、九州など山野の暖かい地域に分布し、また、中国、モンゴル、ロシアにも生育しているそうです。ユーラシア大陸と九州が陸続きだった昔に分布した残在植物として知られています。今回はこのヒゴタイについて紹介したいと思います。
ヒゴタイ
キク科ヒゴタイ属の多年草 平江帯 学名:Echinops setifer
ヒゴタイは、高さ1mを越す大形の草本(茎が木のように硬くならない植物)で、日の当たる原野に生え、ススキ、ネザサなどの草丈(植物の伸びた高さ)の高い草原に点在して生育します。茎は太く、直立して長く伸び、くも毛を密生して白い色をし、上部で少し枝を分け、先端に花をつけます。葉はアザミに似ており羽状に切りこみ、縁には短いトゲが生えていて、葉の裏面には茎と同じ白色の綿毛(やわらかく曲がっていて綿のような感じ)の密な白毛があります。花の咲く時期は8月~10月(夏~秋)で、実生からでは2年目以降に花がさくと言われています。花の大きさは径約5cmの球状(ゴルフボールぐらい)で1個ずつ別々のそうほうに包まれた筒状花がたくさん集まった球形をしていて、筒状花を包むそうほう片ともにとても美しい瑠璃色(紫色をおびた紺色)をしています。果実は円柱形をしていて黄褐色のを密生し、鱗片状の冠毛が生えています。ヒゴタイという和名の語源は明らかではありません。
九州ではかつては草原に普通に見られ、盆花にされていましたが、生育地の開発や乱獲により減少し、絶滅危惧種とされています。対馬での分布は上県町のみに限られるそうですが、最近その数も激減し、絶滅寸前の状態だそうです。早急に保護対策が望まれるのではないかと言われています。もし皆さんが、草地などでヒゴタイを見つけられても、折ったり引き抜いたりしないで、そのまま自然の状態で残せるように、絶滅することがないように、心掛けていただければと思います。 <AB>
頭花は径約5cm内外。小花は管状花、深く5裂し、裂片は反り返る。これらがたくさん集まって球形になる。
<参考文献> 「九州の野の花(夏)」初島住彦・佐藤武之著 「対馬の自然」浦田明夫・国分英俊著 「原色野草検索図鑑」池田健蔵・遠藤博著 <写真>上:「九州の野の花」より 下:「原色野草検索図鑑」より
|