対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第4号

 

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ある日のツシマヤマネコ飼育日誌(2)


1月×日(×曜日) 16:38 快晴(北西風が冷たい)

 対馬野生生物保護センターでは、前号で紹介した個体番号No.2(隔離飼育舎で飼育しているウィルス感染オス)とは別に、いろいろな理由で一時的にツシマヤマネコの飼育をすることがある。今回は、自然林の一部をそのままフェンスで囲い込んだ「野外飼育ケージ」で飼育中の個体番号Mn-04(通称コテツ)の世話について紹介しよう。コテツは、1998年12月10日に豊玉町の民家の鶏小屋に忍び込んでいたのを保護収容され、健康検査後に野外に放されたが、12月23日に再び同じ場所で今度はワナにかかって怪我を負ってしまったため、野生復帰のためにリハビリテーション中のオスのツシマヤマネコである。

 記録用具一式を持って、センター本館からは少し離れた野外飼育ケージ付属の保護観察棟に向かう。保護観察棟でモニターカメラを操作して、コテツが近くにいないことを確認してからエサを用意する。野生復帰が目的の飼育だから、人に慣らさないようにいろいろと気を使う。例えばエサは生きたものを使うことにして、狩りの訓練をさせる。エサを与える時刻は、定時にならないようにランダムにしている。与える場合も、なるべく気づかれないようにこちらの姿を見せないのはもちろんだが、人の気配も殺すように努力している。しかし相手はさすがに野生動物、もうこちらの気配に気づいている。

 今日のメニューはハツカネズミ(マウス)だ。保護観察棟の小窓からマウスをそーっと野外フェンス内に出す。モニターで観察していると、なかなかマウスの方には寄って来ない。人の気配が怪しいからかな。しばらくすると、尻尾をヒクつかせながら身体を低くしてゆっくりと忍び寄り、パッと飛びつく。が、失敗。逃げられてしまう。しかしよく観察すると、前足でつついたりして遊ぶためにわざと逃がしているようにも見える。マウスの方も必死だ。巣箱の下に逃げ込んで命拾いした。「コテツはまだ下手だな」と思ったのもつかの間、今度はきちんとしとめている。マウスが息絶えるまで頭に食らいついて放さない。完全に動かなくなると少し休憩してから食べ始める。モニターで観察していると、高いところが好きみたいで、木で作った障害物にしょっちゅう登っては毛づくろいなどしている。リハビリ中とは言え、身のこなしはなかなかのものだ。

 あとは、コテツができるだけ早く野生に戻り、自力で食べ物を捕り、事故などにもあわずに長生きしていってくれることを願う。 <Mk>


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