対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第4号

 

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対馬野生生物保護センターの活動から


ツシマヤマネコの収容の連続!

飼育下繁殖のための捕獲・・・メスの捕獲に成功!
 1995年から始められた飼育下繁殖計画のための捕獲が、今年度も継続して行われています。ご協カをいただいている福岡市動物園のツシマヤマネコ専用獣舎(一般公開はされていません)には、10月末の時点でオスが3頭飼育されていました。獣舎は5頭分。残る2頭分の部屋をうめるべく、メスの捕獲をめざして開始されました。

11月17日 今年度第1頭目の捕獲
 23:09 上対馬町で1頭のツシマヤマネコを捕獲しました。残念ながらオスだったので、発信機を取り付け、12月3日に捕獲地点で放しました。

12月8日 メスの捕獲に成功!
 詳細は表紙をご覧下さい。

1月12日 今年度3頭目を捕獲
 17:40頃、今年度3頭目の捕獲に成功しました。翌日の性別判定や計測作業によって、6kgを越えるオスの成獣であることがわかりました。血液検査の結果でも異常は見られなかったので、1月23日に捕獲地点で放しました。

ツシマヤマネコ血液検査の実施

 ツシマヤマネコの保護事業を進めていく上で現在問題になっていることのひとつに、FIV(猫免疫不全ウイルス)などの伝染性ウイルスの問題があげられます。この現状を把握し、その対応の方法を考えるためにも、保護・収容された個体は全て血液検査を行うことにしています。

 これまでに20個体以上で検査が行われましたが、絶滅への引き金になるのではないかと懸念されるようなウイルスを持った個体は1頭しか見つかっていません。この1頭は前号で紹介したとおり、ウイルスの蔓延(まんえん)を防ぐために対馬野生生物保護センターで隔離飼育を行っています。
 ウイルス検査の対象となっているのは6種類。このうち2種類(FIV・FeLV)については簡易検査キットにより対馬野生生物保護センターでも調べることができますが、その他4種類については検査機関に送って調べることになります。この結果がでるまで、ウイルスによって1日から1週間がかかります。

対馬野生生物保護センターに収容されたツシマヤマネコのその後

死体が発見された場合
 対馬野生生物保護センターに連絡が来ると、すぐに死体の回収に向かいます。これは死体であっても死後間もなければ血液検査を行うことができるからです。回収の際には、発見場所や発見当時の状況などの詳しい聞き取り調査を行います。対馬野生生物保護センターに収容すると、まず血液の採取が可能かどうかを判断し、可能であれば採血を行います。その後性別の判定・体長や体重の計測、外傷の有無やその様子などをできるだけ細かく観察します。
 これらの作業が終了すると、死体を鹿児島大学に送り、獣医師の解剖によって詳しい死因や健康状態を調べます。また採血ができた場合には血液を検査機関に送り、ウイルスの有無や血液からわかる健康状態を調べます。血液や組織の一部は北海道大学に送り、ここで遺伝子の調査・研究の材料として用いられます。

生きている個体が保護・収容された場合
 死体同様、連絡を受けるとできるだけ早く現場に向かいます。怪我などをして対馬では充分な手当ができないと判断される場合には福岡市動物園へ送ることもありますが、通常は対馬野生生物保護センターヘ収容します。その後血液検査や計測を行い、血液検査の結果がでるまで隔離飼育を行います。この検査で問題がなければ、また自然の中ヘと帰すことになります。

相次ぐツシマヤマネコの死体発見

 昨年は4頭のツシマヤマネコが交通事故死しています。このため前号でお伝えしたとおり、9月にはツシマヤマネコの交通事故防止キャンペーンを行いました。11月までは交通事故等の死体の発見の報告もなく、今年は交通事故0になるのではと期待していましたが・・・。

12月1日 上県町内の国道の脇でツシマヤマネコが交通事故死?
15:30頃、御嶽登山道入口付近の道路工事現場近くの茂みで、建設作業員がツシマヤマネコの死体を発見。死体は対馬野生生物保護センターに収容されました。ツシマヤマネコなどの動物の死体が発見されることが多いのは、交通事故によって頭部を損傷し、ほぼ即死状態で路上・路肩で死んでいる場合です。しかしこの個体は頭部には特に外傷はなく、太股から腰の辺りを骨折していました。死体の状況から交通事故と考えられますが、事故にあった直後に茂みの中に入り、しばらくはまだ生きていたものと考えられます。すぐに気づいて手当をしていれば、もしかしたら助かったのかも知れないと考えると、とても残念に思います。

12月26日 上県町佐護椋梨でも交通事故?
椋梨(むくなし)の住民が路上でツシマヤマネコの死体を発見。対馬野生生物保護センターに収容して性別確認・体重等の測定を行いました。その結果オスの成獣で、頭部を骨折していたことから交通事故によって死んだ可能性が高いことがわかりました。交通事故死と考えられる死体の発見は今年の2頭目です。

1月8日 上対馬町泉でも死体発見
8:30頃、道路工事の土砂捨て場で建設作業員がツシマヤマネコの死体を発見。この時死体はまだ暖かかったそうです。その後死体を対馬野生生物保護センターに運び、血液検査のための採血・計測等を行いました。骨折はしていませんでしたが両耳の後ろと腰に刺されたような傷があり、私たちが見た限りではそれ以外に外傷は確認されなかったので、交通事故ではないようです。
交通事故ではないと考えられる死体の発見は1996年9月以来のことです。前回は上県町中山で発見されたメスの個体で、これは寄生虫による衰弱死と見られています。

1月12日 棹崎まで 犬に噛み殺される?
22:05、対馬野生生物保護センター職員が棹崎公園入口の門を出たすぐ先に1頭の犬がおり、その向こうに横たわっているツシマヤマネコを発見。犬はもう1頭おり、近づくとヤマネコの体に噛みつき、こちらに向かって吠えてきました。この2頭を追い払って確認したところ、ツシマヤマネコは既に死んでいたもののまだ暖かく、死後間もないようでした。オスの成獣で体重は5.5kg。右足の付け根を脱臼もしくは骨折していただけでなく腹部と肛門付近に噛まれたと思われる傷があり、犬に噛み殺された可能性が高いようです。
この犬の1頭では首輪がついていたことを確認しており、飼い犬であるか飼われていた犬であると考えられることから、犬の飼い方についての指導も今後の課題のひとつであると考えています。

※上記の4個体は全て解剖のため鹿児島大学へ送りました。現在死因や病気の有無などの詳しい調査が行われています。この結果は次号でお知らせする予定です。

ツシマヤマネコを保護収容

12月10日 豊玉町仁位でツシマヤマネコを保護・収容
保護・収容して健康状態を調べましたが問題がなかったので、19日に現場近くで放しました。しかし23日に同じ現場で再収容され、このとき前足が倍以上に腫れ上がる怪我をしていたため、急遽福岡市動物園へ移送され、手当を受けました。大変心配されましたが幸い骨に異常はなく、現在野外復帰をめざしてリハビリが行われています。

1月8日 今度は峰町で
死体発見の連絡と前後して、峰町狩尾でツシマヤマネコが捕まりました。住民がノラネコを捕獲しようとしてかけた箱ワナにかかったもので、外傷はありませんでした。すぐに対馬野生生物保護センターヘ運び、健康状態の検査等が行われました。検査でも問題がなかったため、12日に放しました。

 これまで、2ケ月間に4頭もの死体が発見されたことはなく、同様に2頭が保護収容されたこともありませんでした。これは事故そのものが増えたのかもしれませんが、島民の皆さまの間にツシマヤマネコへの認識が高まり、情報が私たちに届くようになったのかもしれません。これからもツシマヤマネコの発見・目撃などの情報がありましたら、対馬野生生物保護センターヘご連絡下さい。今回ご連絡下さいました皆様、ご協カありがとうございました。 <E>


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