対馬野生生物保護センター

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2002年12月8日(日)第8回自然教室・エコツーリングと環境保護のあり方

2002年12月の活動

第8回自然教室は、12月8日に『エコツーリングと環境保護のあり方~イラワジカワイルカの例を通して~』という課題で行われました。講師は、東京水産大学客員教授でHAB研究所所長の岩重慶一氏です。
※HABはHumanAnimalBond =人と動物の絆

開講の挨拶をする岩重氏

 岩重氏はカンボジアで、絶滅の危機のあるイラワジカワイルカの研究・保護活動・および地域振興のためのエコツーリングを実践しています。 自然教室では、岩重氏の活動に関する多彩なエピソードを、参加者の男の子にもわかるように易しくかつユニークにお話していただきました。

講義中の岩重氏

 岩重氏は、三菱信託銀行財務相談部に勤務していましたが、ヘルニアを患って長期入院していたときに故郷・鹿児島の錦江湾のイルカに思いを馳せるようになり、後にそのイルカたちが埋め立てで姿を消したことを知り、イルカと関わって生きていこうと決意されたそうです。 東京水産大学の大学院で修士号を取り、29年勤めた銀行を辞め、私財を投じてカンボジアに「イルカの学校」を建てるなど、バイタリティあふれる生き方と思いは、その話し方からも伝わってきます。
 ※「イルカの学校」は、イラワジカワイルカについて学び、同時にイルカを観光資源として活用して地域振興を図るなど、イルカと人が共に生きていく方法を学ぶための学校です。

子どもに話しかける岩重氏

 カワイルカとツシマヤマネコは、どちらも絶滅の危機に瀕した動物です。自然が与えてくれた資源を守り・活用しながら地域振興を行うためにはどうすればいいのか、御蔵(みくら)島やカンボジアのイルカを例をあげながら、時には熱く、時には元銀行員らしい現実的な視点で語っていただきました。 キーワードはSLS(スロー・ローカル・スモール)エコツアーに関してはそのサイズを大きくすると提供したい良いサービスができなくなる。スピードを重視すると自然について理解をしてもらえないからゆっくり行うべき。ローカルはその土地の人がその土地の価値を見せてこそ、エコツアーは意味のあるものになる、という意味です。

スクリーンに映し出されたイルカ

 岩重氏いわく、一番大切なのは「好奇心」 何かに好奇心を抱いたら、それについて調べたくなり、調べたら人に伝えたくなる。人に伝えることで、人と人のつながりが生まれ、波紋のようにひろがって大きな力となっていく。
バブル経済の絶頂期と崩壊を銀行員として経験し、絶対安静のベッドの上で人生を振り返った岩重氏を今の仕事に導いたのも、故郷・鹿児島で出会ったイルカへの好奇心だったのかも知れませんね。

絵本の表紙

 カンボジアのイラワジイルカ救済キャンペーン絵本「おでこちゃんとイルカのねがい」(文・イラスト 岩重氏)です。 イルカと友達になった女の子が学んだ命の素晴らしさと、そのイルカたちを蝕む海洋汚染の闇を、真摯な文章とやわらかなイラストで描いています。
 「みんな みんな つながっている」
 女の子に託したイルカのメッセージです。人もイルカも、生命は皆ひとつながりの世界の中で生きているんですね。
HAB21のホームページ↓
http://www.dab.hi-ho.ne.jp/hab21/