■概要
沖縄は亜熱帯地域にあり、島の周りはサンゴ礁に囲まれている。サンゴ礁はキレイな景観を与えてくれるだけではなく、天然の防波堤としても島を守っている。
なぜ天然の防波堤と呼ばれるのか。それは、サンゴを中心とした海の生き物達が造り出すサンゴ礁は、海にせり出した構造物のようになっていて、外からくる波を受け止め、砕いてくれるからだ。この波が砕ける場所の事を、礁縁(リーフエッジ)という。礁縁(リーフエッジ)から海岸に向かって、干潮になると浅場になる礁原(前方礁原)が広がり、礁原と浜の間には浅場の海ができる。礁池(イノー)と呼ばれるこの場所は、そんなお陰でいつも穏やかなのである。
また、沖縄は夏になると台風の通り道となってしまうのだが、風除けになる高い山が無いという特徴的な地形をしており、その中で人々は暮らしていくために、防風林を植える等、様々な工夫をして今日まで生活をしてきた。
ステップ1では、生徒たちが物語の主人公となりサンゴ礁の島で暮らしていくためにはどうしたら良いのか考えながら、人の生活と自然とのつながりに意識を向けていく。その視点で、指示書を手掛かりにサンゴ礁の島の地図を描く。ステップ2では、生徒たちはサンゴ礁の島のスライドを見て、サンゴ礁とはどんな場所なのか、どういう地形か、そこで暮らすためにはどういう生活様式があるのかなどを考える。グループごとに別れ、6つに分けた海のシートにパーツを使ってサンゴ礁が取り巻く島を描いていく。描き上げられた6枚のシートを貼り合わせてみると、サンゴ礁に囲まれている島、すなわち沖縄を上から見ている絵となる。ステップ3では、サンゴ礁の成り立ちや島のできかたをレクチャーする。さらに、人とサンゴ礁のつながりについても説明し、場所に名前がつけられる意味を学ぶ。また、沖縄における現況もふまえてディスカッションをおこなう。
生徒たちは、青くてキレイな沖縄の海をつくるサンゴ礁というイメージだけではなく、その地形や部位ごとの名前、人々の暮らしとのつながりを知ることで、地理学的にサンゴ礁について学ぶ。なぜそこにあるのか、なぜそのような形をしているのか、なぜそこでないといけないのか等、自然の壮大な力や、その自然とともに暮らしてきた人々の知恵を知る。沖縄の島はサンゴ礁によって守られていて、人々はサンゴ礁から生きていくための恩恵を受けていることを学ぶ。
■プログラムの進め方
- 生徒たちに、何もない無人島で生活するためには何が必要か話し合わせ、ポイントとなる“水”“食料”“雨風をよけられるところ”を引き出す。
- 指示書が提示され、この指示書をもとに、グループごとで島の探検と称して地図を描く。
- 各グループで作成した地図の発表をおこなう。
- ※小中学生なら、この進行を、生徒たちが漂流し無人島に流れ着いたという物語的設定でおこなうと、参加関心を高められることも期待できる。
▲南の島の探検隊
- この島は、サンゴ礁が海水面の変動や土地の隆起によって陸地となったもののようだ。
- 雨が降って地下水に浸み込み、その水が湧水となっている。この湧き出た水を溜めている場所がある。どうもかつての人々は、これを飲料水として利用していたようだ。湧水の周りに、人々が集まり、集落が出きている。
- 川や湧水、その井戸から水を引いて、田畑が作られている。山の麓(ふもと)や、川の近くに畑が多く見られる。
- 家屋は防風林に囲まれている。川や井戸の近くに家を建て、これらが集まり集落のようになっている。家屋や集落の山側に畑を作っているのは、きっと台風から畑を守っているからなのだろう。
- 川と海の水が混ざり合うような河口の場所に、珍しい木が生え群生している。普通の木とは違い、根が土より上に出ている。集落を風害や潮害から守っているようだ。
- 海と陸との端境(はざかい)は崖のようになっている。この部分は波で削られて窪んでいる。
- 海と集落の間を挟んで林がある。集落を風や潮から守っているようだ。木の高さは2〜3mぐらいの中木だ。
- 海岸沿いに、盤状の平らな岩層が数枚重なり、浜に平行に連なっている。その岩層は、サンゴの破片などが固結し、岩石状になったもののようだ。潮の満ち引きによっては出てきたり、隠れたりする。
- 浜には、海の潮位が一番高くなる満潮と、一番低くなる干潮の際の潮位線が、海の漂流物で描かれている。
- 干潮の時に、沖合いまで歩いていけるような場所が海から出てくる。
- 海の浅場には、おそらく波で削られて窪み、まるでキノコのような形をした岩がある。
- 海岸から沖側の浅くなる所までの途中が凹み、干潮時には海水が残り、浅い水域となる場所がある。深くても干潮時の水深は2〜3m以下。魚やヒトデ、サンゴやウニ・ナマコ等、沢山の生き物が住んでいる。
- 潮が引いた後、少し深く窪んでいる部分に海水が溜まり残っている。ここには、小魚や、カニ、シャコ、ナマコ、ウニ、ヤドカリなどの小さい生物が沢山いる。
- 波が穏やかな浅場で、一面に草が繁っているところがある。海にいる少し大きめの動物が食べているのを見かけた。
- サンゴの塊(かたまり)がある一定の高さで水平に切り取られたようになり、火鉢のようになっている。横から見ると、他の塊も同じ高さで切り揃えられたようになっている。この塊には、沢山の小魚や小さな生き物がいて、隠れ家として利用しているようだ。浅場で多く見られる。
- 沖合いに、比較的平坦な地形をしていて、干潮時に干上がる場所が広がっている。
- この先から外海になるに連れて、なだらかに深くなっている。波があたってくだけ防波堤のようになっていて、水が常に循環しているからだろう、サンゴが発達し、大きな魚も多くいる。このなだらかな斜面は切込みがあり、それがまるでくしの歯の形のようになっている。
- 川から流れてきた水が海へ流れ込む延長線上、沖合いの平らな場所に水路がある。この場所は、おそらく川の淡水が流れているためサンゴが発達せずに、水の通り道となったのだろう。
- 生徒たちはスライドショーによる島の模擬観察をおこなう。スライドの観察で得られた情報は随時記録し、最後に自分達の周りにある海と何が違うのかをクラス内でディスカッションする。
- 次に「サンゴの島シート」を使った地図作りをおこなう。「研究者による島の地理調査結果」をもとに、ヒントを得ながら作成するように伝える。地図は干潮時間を想定して描く。
- 各グループが完成したら、6枚のシートを貼りあわせる。シートを貼りあわせると、南の島を上から見た絵となる。
▲南の島の探検隊実施風景
- 生徒たちと完成した絵を見ながらそれぞれの場所の詳細について説明をしていく。サンゴ礁の説明にあたっては、その成り立ちと種類(裾礁、環礁、堡礁)についても加える。絵の構成要素から読み取ることができる「人との関わり」についても、具体的な例(イノーでの漁労、水資源の確保、集落のでき方など)を用いて生徒たちに紹介する。
- サンゴ礁の中を詳細に名称付けした資料を掲示し、かつての人々がサンゴ礁と深く関わりを持っていたことを学ぶ。
- 最後にサンゴ礁の島について学んだことをまとめる。
- 沖縄の島はサンゴによってつくられ、サンゴ礁によって守られている。
- 沖縄では、古くからサンゴ礁は人とのつながりがあり、人はサンゴ礁から恩恵を受けており、その証拠にサンゴ礁にはいろいろなところに名前がついている。
- 修学旅行でサンゴ礁の観察や海岸トレッキングを実施する。実際に海岸に立ち、サンゴ礁地形を観察することで、みんなで描いたサンゴ礁の実際の姿を自分の目で確かめることができる。イノーには人々が家を建てる際にサンゴ礁を切り取った石切リ場がある。そういった場所を見る事で、人々がサンゴ礁と密接に関わっていたことが分かる。
- 可能であれば、それらの写真記録をとり観察情報も加えて観察記録とすると、実りある地理研究学習となる。
- 実際のサンゴ礁地形や海と人とのつながりの説明を、研究者たちから聞いてみる。また昔から住んでいる地元のおじい、おばあから生活の様子の話を聞くことができれば、さらに興味は深まる。
■プログラムツール(クラスを36人と想定して)
- 巻物の指示書 1枚
- サンゴやサンゴ礁と関わる人々の生活、島全体、海岸付近のスライド
- 研究者による島の地理調査結果資料 2枚
- サンゴ礁の島シート 1枚(6分割にできる)
- 各イラストパーツ 1セット
▲サンゴ礁の島シートと各イラストパーツ
▲各イラストパーツ配置イメージ