アジサイ
アジサイ【紫陽花】 ユキノシタ科アジサイ属 学名 Hydrangea macrophilla
低木、まれに小高木、または多年生の根茎をもつ草本で、つる性の種も少しある。 ひと雨ごとに緑深くなる6月。その緑のなか色鮮やかに咲くアジサイは、雨に濡れ絶妙なグラデーションをつくりだします。私は、この重苦しい梅雨の季節に彩りをそえてくれるアジサイが好きです。ここ棹崎公園でも、6月にはガクアジサイの花が咲き、私たちに初夏の訪れを教えてくれます。 皆さんも知っているようにアジサイの仲間は、初夏から夏にかけて開花します。有名な俳人達も、
紫陽花や帷子(かたびら)時の薄浅黄(うすあさぎ) 松尾芭蕉 紫陽花やはなだにかわるきのふけふ 正岡子規
と詠んでいるように、「紫陽花」「額の花」として、夏の季語として俳句に登場します。また、アジサイは花の色が日々微妙に移り変わることから「七変化」という別名でも登場します。花の色が移り変わるせいでしょうか、花言葉は、「移り気」ということだそうです。 アジサイの花の色が咲きながら微妙に変化するのは、土壌のpHが関係していると言われています。土壌のpHが酸性-中性-アルカリ性と変わると、花も青-紫-赤と変化するそうです。しかしその変化は種類や品種によっても異なり、まだその発色機構や色素の構造は、解明されていないようです。
このアジサイですが、日本原産の園芸植物だということを皆さん知っていたでしょうか。アジサイは、日本で自生していた野生種のガクアジサイが改良されて世界に広がったものです。1923年にオランダから日本にやってきた植物学者でもあり医師のシーボルトが、アジサイを自国に持ち帰り、それがヨーロッパに広がったと言われています。しかし、ヨーロッパにはシーボルトよりもかなり早く、1789年にイギリスの植物学者パンクス卿によって紹介されていたようです。どちらにせよ、アジサイは、日本からヨーロッパや欧米に広まり、様々な品種改良が進められて西洋アジサイ(ハイドランジア)として日本に逆輪入されているのです。日本のアジサイも、ガクアジサイを改良したものと考えられていますが、そのルーツは正確にはわかっていないようです。
シーボルトは、アジサイには特に深い関心を示していました。雨に濡れるアジサイの清楚な趣が彼のもつ日本的なイメージとあっていたからかも知れません。シーボルトがアジサイを「日本植物誌」に発表したときの、古い学名には“Hydorangea macrophylla Ser.va.Otakusa”と書かれていました。そんなシーボルトには、6年間の日本での生活で愛し続けた女性がいました。その最愛の女性の名前は『楠本滝』、お滝さんと言いました。そう、アジサイの学名の「Otakusa」はそんなシーボルトのお滝さんへの想いを託したものだったのでした。花言葉の「移り気」とは対称的にアジサイは、恋の花だったのですね。
皆さんは、アジサイの「花」とは、どこの部分のことをさすのかを知っているでしょうか。「バカにするんじゃない。」という人がいると思いますが、意外とアジサイの「花」がどこにあるのかを知っている人は少ないんじゃないかと思います。花には雌しべ、雄しべ、花弁(花びら)、がくなどのつくりがあります。これらの中で、もっとも美しく目立って見える部分は、ふつう花弁と呼ばれる部分です。しかし、1つ1つのアジサイの花を注意深く観察してみると、花弁だと思っていた部分の中央に雄しべや花弁を持った小さな花があることに気づくと思います。今まで皆さんが花弁だと思っていた部分は実は、がくと言う部分なのです。そして、アジサイの花は雌しべが退化しているものが多く、雄しべだけしかない単性花です。このように、雄しべ、雌しべが退化して機能せず、がくまたは花冠が大きく発達して目立つ花を装飾花と言います。ガクアジサイの花序の周辺部にある花は装飾花で、それ以外の部分に小さな両生花をつけているのが、よく観察して見たら分かると思います。ガクアジサイの装飾花は、昆虫を花序へ誘う役目をすると考えられています。ちなみに、園芸品種のアジサイは、花のすべてが大きながくを持つ装飾花だけになったものです。どうです皆さんの思っていたアジサイの「花」は、当たっていましたか。
<上の文章はツシマヤマネコの生態調査に来ている琉球大学の学生がボランティアで書いて下さいました>
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