対馬野生生物保護センター

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2002年11月24日-第7回自然教室・御岳自然観察ハイキング

11月24日に上県町・御岳で行われた第7回(野外)自然教室「御岳自然観察ハイキング」の報告です。
天候にも恵まれ、また参加者・ガイド・スタッフも増え、楽しいイベントとなりました。

職員と國分英俊先生

まずは、センター職員から「御岳自然観察ハイキング」の目的・趣旨の説明と、行動上の注意を受けていただきます。
続いて、講師の國分英俊氏の紹介です。

國分氏は、上対馬町豊(とよ)小中学校の校長先生で、「対馬の自然」などの著者。乱獲によって減少したラン科植物やツツジなどの実生・増殖の運動もされています。

登山口に集まった参加者

御岳登山には、御岳登山口から登るコースと、平岳側から登るコースがあります。
平岳からの登山道は照葉樹林やモミが多く、林床の植物の種類がたくさんあります。今回の目的は植物観察なので、少し距離は長いですが、こちらのコースにしました。
標高490mの御岳山頂へ、いざ出発!

御岳の樹木について説明する長渡(ながと)さん

植物に詳しい長渡(ながと)さんと、野鳥の専門家の柚木(ゆのき)さんにガイドとして参加していただき、お話を聞きながらのハイキングとなりました。
ガイドの専門家の方・参加者・ボランティアスタッフも増え、みなさんの関心や、ツシマヤマネコをめぐる自然保護の輪がひろがっていることを実感しました。

九州森林管理局のツシマヤマネコに関する看板

大正12年、御岳は、日本ではここだけに生息するキタタキ(キツツキ科)の生息地として天然記念物に指定されました。その後生息の確認ができず、昭和47年に指定解除されましたが、同時に、サンコウチョウ・オオルリ・ヤイロチョウなどの鳥類繁殖地として天然記念物の再指定を受けました。
絶滅したといわれるキタタキは全長46cm。標高が高い地点の、林間が空いている場所が適正生息環境だったそうです。御岳の主、キタタキの羽音や木をつつく音(斧で木を切るようなすごい音だったそうです)がもう聞けないのは、さびしいことですね。
ツシマヤマネコが同じ運命をたどることがないよう、がんばらねば!

地面を見つめる参加者

何か発見したのでしょうか?
参加者の熱心な質問に、ガイドさんの説明にも熱がこもります。
小学生のツシマヤマネコ博士がツシマヤマネコのフンを発見し、大人の参加者にその特徴などを説明する一場面も。
スタッフはハイキング中に、日本最小の鳥「キクイタダキ」と小型のキツツキの仲間である「コゲラ」を見かけました。

巨大な倒木の根

御岳のいたるところで見られる巨大な倒木の姿です。
老木が倒れることによって、うっそうとした原生林に太陽の光が射しこみ、新たな植物たちが育っていきます。また、倒木は菌類の栄養分や昆虫たちのすみかとなり、やがて土に還っていきます。
深い森の奥で、こうした生命の循環が繰り返されてきたんですね。

岩の間に根を張っている樹木

頂上に到着!岩を割ってそびえる樹木の姿に、すさまじい生命力を感じます。
御岳では、サビバナナカマド、シャシャンボ、カマツカ、アオハダ、アカガシ、シロダモ、キガンピ、カクレミノ、などの樹木を見ることができます。

山頂の風景。雲間から光の筋

山頂からの眺望です。

山頂でお弁当を食べる参加者

今回は年配の参加者の方も多かったのですが、歩きなれてるのか、とてもお元気です。山頂で食べるお弁当はまた格別ですね。
ゴミはまとめて持ち帰ります。楽しいハイキングにするためには、マナーも大切です。

御岳神社で一休みする参加者

登山道の途中にある御岳神社(島大国魂神社)でひとやすみ。みなさん何を願ったのでしょうか?
ここで湧き水を汲むことができるので、持ち帰ってお茶やコーヒーに。
(生水には注意!)

神社裏のモミの木

神社裏のモミの樹です。御岳ではたくさんのモミの大木を見ることができますが、モミ・カヤ・イヌガヤは姿が似ています。その見分け方は
【モミ】 樹皮をさわってもチクチクしません。そして葉の先端が二股に分かれてとがっています。
【カヤ】 樹皮をさわるとチクチクします。そして葉の先端は一本でとがっています。葉をなでると硬い感覚があります。
【イヌガヤ】 葉の先はカヤと同じく一本でとがっていますがカヤの葉のように硬くありません。なでるととても柔らかいです。

今日のまとめの挨拶をする國分先生

御岳登山口に到着。参加者全員の下山を確認をしたのち、國分先生から今日の「御岳自然観察ハイキング」の総括をしていただきました。
参加者のみなさんからは「春にもハイキングをしてほしい」「今度も参加したい」「解説をもっと聞きたかった」などの感想が寄せられました。
今回ははじめての野外での自然教室となりましたが、ケガや体調をくずす方もなく、センター職員・ボランティアスタッフもひと安心です。

聴診器で樹木が水を流れる音を聞く参加者

おまけ。センター職員が準備した聴診器(樹木が水を吸い上げる音を聴くためのもの)に興味津々、街路樹を聴診している仲のよい参加者ご夫婦の姿です。