対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第32号

 

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あめどりが教えてくれた対馬近海の油汚染


 2月15日、「浜に上陸して動けなくなっている“あめどり“が4羽いるから助けて欲しい」という連絡がセンターに入りました。
 対馬で“あめどり“と呼ばれる鳥はアビの仲間で、普段は海上で生活している海鳥です。陸上では歩くことができない彼らが陸に上がるというのは、通常はみられない事です。保護されてきたアビ類の体にはべっとりと油が付着していました。油汚染の被害に遭っていたのです。
 その後の調査・観察などを通じて、今回の海鳥油汚染被害について、特徴が見えてきました(下表)。

海鳥油汚染被害の特徴

被害地域 対馬全域で被害確認(詳細はP3参照)
時期 海鳥が多く渡来し、海の荒れる厳冬期から初春(2月~3月)に被害が集中している。
鳥種 対馬近海に生息する十種類以上の海鳥の中でも、アビ類に被害が集中している。
鳥の状況 全身油まみれの海鳥は少数で、大多数は部分的に油が付着している。
油の流出源 近海で大量の油が流出するようなタンカー事故などは起こっておらず、油の流出源は不明。
海岸の状況 西海岸でオイルボールや廃油缶、ムース状の油が見つかっている。

海鳥の死体

写真:続々と回収された死体。油が付着した箇所から水が染み込み、海に浮いていることができなくなり浜に上がってくる。そのまま衰弱し、死を迎える。


主に被害を受けたアビ類

オオハム

オオハム
 冬の間シベリアから日本近海に渡来する。魚食む(うおはむ)が語源。


シロエリオオハム

シロエリオオハム
 アラスカから渡来する。夏羽は後頸が銀色に美しく光る。


 海鳥の油汚染被害は、確認されただけでも114羽(詳細はP3参照)にものぼりました。実際の被害は更に多いものと予測されます。アビ類の上陸やオイルボールの打ち上げは数年前から島内各地で確認されていましたが、本格的な調査は行われておらず、これほど大規模な被害が確認されたのは今回が初めてです。
 そしてこの油汚染被害は、海鳥だけの問題に留まりません。海鳥は海洋生態系全体の油汚染を最初に私たちに知らせてくれる指標なのです。海にこんなにも油が流れているという事実は、海鳥の被害がなければ、私たちは気づかなかったことでしょう。
 対馬の豊かな海を蝕みつつあるこの油汚染問題は、来年も起こることが予想されます。彼らの死を無駄にせず、私たちに今からできることを考える時が来たのではないでしょうか。
 最後に、今回の油汚染対策では島内外の多くの方にご支援・ご協力いただき、被害に遭った海鳥の保護と海岸調査を行うことができました。この場をお借りして御礼申し上げます。

海岸調査

普段海上で生活している鳥を陸上で飼育するには様々な技術が必要でした。過去の海鳥油汚染被害に関った方々の技術に大変助けられました。


影響調査

連日、各浜の巡視・調査が行われましたが、発見した海鳥のほとんどは死亡していました。死体は回収し専門機関で油の影響を調べています。



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