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とらやまの森第3号

 

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ヤマネコの保護は自然を大切にすることから始まります その2 〈ヤマネコの生息と田の広さについて〉


鹿児島大学農学部獣医学科
阿久沢正夫

 ※前号で鹿児島大学の阿久沢先生から頂いたお便りを掲載しました。その中で田の減少がツシマヤマネコの個体数減少の要因ではないかというお話をされていましたので、私達は近年の対馬での稲の耕作地面積とその減少率を調べ、町別にグラフにして掲裁しました。
 それによると最も多く田が残り、減少率も低いのは厳原町で、反対に最も田が少なく、減少率も高いのは上対馬町でした。厳原町ではヤマネコの生息情報は少なくなってきていますが、上対馬町には現在も多くのヤマネコが生息していると考えられます。

 この前「ヤマネコの数は田の広さと関係がある」と書いたところ、「田の広さが減っているのは上対馬町のほうが厳原町よりも著しい」、とのご意見がありました。そこで、また書くことにしました。
 先日テレビでトンボの生態を放送していました。トンボが住み易いのは、田があってその後ろに山がある所だそうです。そこでは、トンボは田で餌をとり、山で休むのだそうです。つまり、餌場と休み場所(または隠れ場所)が近い所が住み易い所なのです。そのテレビを見て、ヤマネコもその通りだと思いました。よく友人に「ツシマヤマネコの調査をやっています」と話すと、「ヤマネコに噛みつかれるような怖いことはないか」、と聞かれます。実際には「ツシマヤマネコは普通のイエネコと同じくらいの大きさだ」というと、皆驚きます。ヤマネコというと、なにやらクロヒョウのような、真っ黒で大きな動物が歩き回っているように想像をする人が多いようです。ところが、真実はヤマネコは体重3-4kgでイエネコぐらいの大きさの、それほど強い動物ではありません。人、犬、猫、テン、イタチ、それから自動車、などに追われながら、びくびくして住んでいます。いつも心休まるところがなく、何か来たらすぐに逃げられる所、または隠れることができる所が、近くにないと生きていけない状態です。
 そういうわけで、餌場となる所(田)があっても、その近くにすぐに走って逃げ込めるような所(山)がないと、ヤマネコは好きになれません。餌場と隠れ場所が近くにある気に入った場所では、繁殖ができ、数が増えていくことができます。ですから、ただ田が広いだけではだめで、ヤマネコが使いやすいような広さの田があって、周囲を森が取り囲んでいるような所が良いのです。山に囲まれた田のある所といえば、上対馬町でしょう。ところが、山に囲まれた田は、実際は湿田になりやすく、日当たりも悪く、良い田ではありません。ですから、減反するとなると、真っ先に耕作を止めてしまう所でしょう。
 そんなわけで、ヤマネコのためには、狭くて、山に囲まれた田があり、人(自動車)、犬、猫が近くに少ないことが、住む環境として適していると思われます。しかし、その様な所は次第に滅ってしまうのが残念です。


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