10月×日(×曜日) 08:54 はれ(雲多し)
さて、いつものようにヤツの世話をしに行くとしよう。昨夕は通常メニューに加えて鶏レバーも60g程やっておいたから今日はごきげんだろう。まずはモニターカメラでの作業録画を確認し、作業チェックシートを用意して、いざ隔離飼育舎へ。おーっとその前によ~く手を洗わなくては。消毒済みの飼育舎内に汚染を持ち込んでしまったら大変だ。隔離飼育舎に入ったら飼育室の手前で殺菌済みの作業用手術着に着替え、長靴を履いて消毒液のプールに足を浸す。飼育室内ではまず分厚いゴム手袋をしてから作業にとりかかる。これらもみんな室内と外界との隔離を徹底するためのルールなのだ。 「今日も元気にしているか?」とケージの中をのぞき込む。すると、フーッ、フーッ、カッ、と牙をむいて怒り出す。ウィルスに感染しているとはいえ、やっぱり野生動物だ。毎日見ててもたくましさにホレボレする。掃除してやるからちょっとこっちの部屋に入っていてくれ。よしよしエサはほとんど全部食ってるな。水も170ml飲んでいる。フンは全部で110g、状態も良好だ。おっと焼き捨てるまでフンはひとかけらも落とさないようにしなければ。
飼育ケージの消毒。これが一番やっかいだ。汚れは全てこそげ落とした上で消毒薬をスプレーし、ピカピカになるまで拭き取りを繰り返す。床・壁・天井、全部完全に消毒する。しかも作業着が汚染されないように気をつけないといけない。最も気を使うのは、使用後の拭き取り紙やフンなどの汚物の処埋だ。厳重にくるんでバーナーで灰にするまで気を抜けない。ふう。 水入れに新鮮な水300mlを入れて、ケージを施錠。飼育室に入る時とは逆に手袋の消毒、長靴の消毒、作業着の消毒を済ませて隔離飼育舎を出る。もちろん手もよく洗う。作業終了は09:49だ。 あとは昨日24時間録画しておいたビデオテープを起こして行動分析をしておく。これを見ると、夜中から明け方に盛んに活動しているのがわかる。タ方17:00頃にはもう1度隔離飼育舎に入って今度は清掃消毒とエサやりだ。消毒作業は結構骨の折れる仕事だが、ここはツシマヤマネコの重要な生息地の中なので、病原ウィルスを外に漏らすことは絶対に許されない。こんな狭いところで隔離飼育しなければならないようなヤマネコはコイツが最後であって欲しいと願うばかりである。
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