対馬野生生物保護センター

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2005年11月6日:ツシマヤマネコ応援団「とらやまの森再生プロジェクト」市民参加の森づくり2005(イベント報告)

2005年11月の活動

 2005年11月6日(日)、峰町木坂の海神神社にて、森づくりイベントを行いました。参加者は一般参加・応援団あわせて40名ほど。昨年も参加したという方も多く、親近感あふれる和やかなイベントとなりました。北九州市からも、昨年に引き続き7名が応援にかけつけてくださいました。前夜から降り始めた雨も当日朝には陽が射すほどに回復し、天候にも恵まれてイベントを開催することができました。

※「とらやま」とは、対馬で古くから呼ばれるツシマヤマネコの地方名です。

木坂海神神社の「鎮守の森」

昨年の森づくりイベントでは、対馬の森の現状を知ることを目的とし、植林地や伐採地を巡りました。そして今年の開催地は峰町にある木坂海神神社。神社の社叢は「鎮守の森」と呼ばれ、信仰上の理由で残されてきた原生林に近い森です。この原生の森から、私たちの暮らしを守りいのちを育む森の価値を学び、これからの森づくりの参考とさせてもらうのが今回の目的です。

ツシマヤマネコ応援団メンバー

 海神神社前の園地に集まり、ツシマヤマネコ応援団の紹介と、とらやまの森づくりプロジェクトリーダーからの挨拶でイベントが始まりました。
 森づくりも3年目を迎え、メンバーにも余裕が見られます。現在地元市民を中心に30名で活動を行っています。

講師を引き受けて下さった先生方

 続いて、今回海神神社の森を解説案内していただく先生お二人を紹介しました。一人目は自然公園指導員として国定公園の管理に携わる傍ら、対馬が誇る龍良山原生林を中心にエコツアーガイドとして活躍中の長渡稔治先生(右)。もう一人は豆酘中学校校長で、「対馬の自然」の著者でもある國分英俊先生(左)です。さあ、お待ちかねの森林観察会、「鎮守の森」へ向かいましょう!

鎮守の森観察会

まず、外から森全体を眺めます

 「森に入る前に、まず外側から森を見てみましょう。大きな枝ぶりのケヤキが、丁度黄色く紅葉しています。」長渡先生は、様々な森の見方を教えてくださいます。木、一本一本を見るごく普通の植物観察会ではなく、森自体が大きな生物であるかのような、生命の誕生から継承の様子、お互いが助けあって存在している森の姿を見せてくださいました。

足もとには次の森を担う幼木が

 森の中に入っていくと、足元にスダジイの幼木がたくさん生えている場所がありました。「葉の裏側が黄色い幼木がスダジイです。ではその上を見てください。」上を見ると、老齢であろうと見てとれるスダジイの大木がありました。「このスダジイは自分の寿命が残り僅かと知って、子孫を残そうとしているのですね。では、幼木の生えている土質を見てみましょう。」幼木は砂利交じりの遊歩道脇に生えています。砂利の隙間に根を伸ばし成長するたくましさを感じました。

ひこ生え

 ふと大木の根元に目をやると、「ひこ生え」と呼ばれる枝のようなものがたくさん生えています。「主木をお父さんとすると、この子たちはお兄ちゃんお姉ちゃん。落雷に会ったり、台風で枝が折れたりと、実をつける準備が整う前に自身の危険を察知すると、こうやって子孫を残す手段をとります。」雑木林はひこばえが生えるため、人が伐採利用しても早く森が回復します。スギ・ヒノキにはない力です。

キセルガイの仲間

 雨上がりの森林散策、子供たちはカタツムリ集めに夢中です。「細長いカタツムリもおるとよ。」キセルガイの仲間です。「この貝は木に空いた穴(樹洞)に棲むとよ。」國分先生は鎮守の森で暮らす様々な生き物を教えてくださいました。子供たちは目を輝かせてキセルガイを探します。見つけてはうれしそうに見せてくれました。

ツシマサンショウウオ

 今度は中学生のメンバーN君が、ツシマサンショウウオや体の赤いツシマナメクジを捕まえてきて、見せてくれました。対馬固有のナメクジやサンショウウオを初めて見る参加者も多く、不可思議な生き物に一同大注目!「対馬には世界に自慢できる生き物がたくさんいるんです!」誇らしげに解説してくれたN君、ありがとう!

足元をよーく見て!

 「足元にあるツタの葉、ある履物に似ていると思いませんか?」みな地面にしゃがみこんで観察します。「これはテイカカズラといって、地面を這うツル性の植物です。ふ入りのものは雪駄に似ているのでセッタカズラと呼ばれています。」この地面を這うツルにはきちんと意味があり、これから土となり養分となる落ち葉が雨で流されないように支えているのだそうです。そして子供たちが集めているカタツムリは落ち葉を土へと変える分解者!森のつながりが見えてきました!

セッタカズラ

 鎮守の森はたくさんの生き物の住処であるとともに、たくさんの生き物に支えられて存在しているのですね!

対馬の現存植生図の紹介

対馬の現存植生図

 お昼休みには、東屋に貼り出した対馬の現存植生図を自由に見てもらいました。対馬は島の89%が森林で覆われていますが、そのほとんどは植林や何度か人の手が加えられている二次林です。

神社の大楠

 残されている自然林は、信仰上の理由で守られた山の山頂部や、神社の社叢林などで、森林全体の僅か5%にすぎません。

霊山「御岳」

 地図を見ると、上島はコナラの二次林(薄黄緑)、下島はシイ・カシの二次林(緑)が目立ちます。

海岸植生も自然度が高い

 そして、昨年度から伐採が始まったスギ・ヒノキの植林(深緑)は対馬の森林の3割を占めます。この植林が伐採された後の土地に、早く対馬の生き物の暮らしが戻るよう、私たちは対馬産の苗をつくり、植樹の準備を進めています。

ポット苗づくり

北九州市のみなさんは作業が早い!

 午後からはどんぐりポット苗づくりです。スダジイ・ツブラジイ・マテバシイ・コナラなどのどんぐり約1200個を、ポット175個、トロ箱10箱に植えました。この他、今回はオニグルミ・エゴノキ・ヤブツバキなどの種子も植えてみました。

作ったポットを前に、最後に記念撮影

当日神社で拾った「?カシ」も、芽がでてきた時のお楽しみで子供たちが植えました。作ったポット苗は各自持ち帰り、山に植える日まで世話をします。発芽時期は種類によって異なりますが、かわいい双葉が楽しみです!

昨年のどんぐりたち

コナラ・アベマキの苗

 三年目を迎えた森づくり活動、一昨年播いたコナラやアベマキは、もう腰の高さまで成長しています。

マテバシイの苗

 昨年播いたマテバシイは、やっと四つ葉まで大きくなりました。今年2月に播いたウラジロガシポットも、スクスクと育っています。

今回作ったポット各種

 今回のどんぐりたちも大きく育ちますように・・・。みなさんのお家のどんぐりポットが芽を出したら、ぜひご一報ください!そして、来年の森づくりイベントへも是非継続してご参加ください。ツシマヤマネコをはじめとする対馬の生き物が多く暮らす、豊かなとらやまの森をみんなで未来に残しましょう!

今年2月に植えたウラジロガシ

ツシマヤマネコ応援団
※「ツシマヤマネコ応援団」は、対馬とその自然に想いを寄せる地域住民によるボランティアグループです。

ツシマヤマネコ応援団連絡先
〒817-1603長崎県対馬市上県町棹崎公園
対馬野生生物保護センター内事務局(担当 木村・前田)
TEL:0920-84-5577 / FAX:0920-84-5578
E-mail:twcc97@yahoo.co.jp