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九州地方環境事務所

ツシマヤマネコニュース

とらばさみ

2015年02月03日
センター職員日誌 國吉

こんにちは。センターで獣医をしています國吉です。

みなさんは、「とらばさみ」というワナをご存じですか?

中央の板に足を置くと、バネ仕掛けで、足を強く挟み込む金属製のワナです。かかった動物に対し、長時間苦痛を与える等の理由から、現在では法律で使用が原則禁止されています。

平成22年8月、このとらばさみに左後肢をかかったところを救護されたオスのヤマネコがいます。この個体は、今年1月に九十九島動植物園へ移動となるまでの4年間という長きにわたり、治療を続けてきました。

わなにより左後肢先端を骨折し、筋肉や靱帯までも損傷していたため、当初から断脚を検討しなければならないほどひどい状態でした。

しかし、野生復帰を目標に掲げ、複数回にわたり手術を実施し、治療に臨んできた結果、

断脚は免れ、飼育下であれば支障なく生活できるまでになったのです。

今後は繁殖に貢献し、飼育下で子孫を残していってくれることを祈るばかりです。

しかし一方で、治療に携わってきた獣医師としては、複雑な想いもこみ上げてきます。

とらばさみにさえかからなければ、この個体は今頃対馬の自然の中で子孫を残し、里山で元気に狩りをしていたのだろう。

私に知識・技術があれば、もっと早期に治してあげられることができたのかもしれない。

もしくは、

早く区切りを付けて、断脚してあげた方が、毎日毎日、治療に耐える必要もなかったのかもしれない。例え三本足になったとしても、その方が幸せだったのではないだろうか・・・。

治療の度に「ウ~!!シャー!!」と威嚇してくるヤマネコ。

来る日も来る日も、ヤマネコのそんな声にならない声を聞いていると、本当に胸が苦しくなりました。

幸いこの個体以降、センターにはとらばみによる被害の報告は来ていません。

ですが、今一度、この個体を通して、「とらばさみ」というワナが、動物達にとっていかに悲惨で残酷なワナであるかを考えてもらえればと思います。

なお、ワナを仕掛ける方の多くは、ご自身の鶏小屋を守ろうという考えから、設置されているようです。

しかし、周辺にワナを仕掛けてその個体を捕獲したとしても、また別の個体がやってきます。

根本解決にはならないのです。一番の対処法は、小屋を補修し、襲われにくい頑丈なものにすることです。

皆様の、ご理解とご協力の程、どうぞよろしくお願いいたします。