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九州地方環境事務所

ツシマヤマネコニュース

ツシマヤマネコ保護個体の移動について(お知らせ)

2015年01月16日
ツシマヤマネコニュース 西野

環境省では、絶滅危惧種のツシマヤマネコの保護を図るため、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(通称「種の保存法」)に基づく保護増殖事業を実施しています。その一環として、(公社)日本動物園水族館協会(以下、「日動水」)に依頼し、国内の計9施設において飼育下繁殖事業に取り組んでいます。

このたび、平成22年8月に対馬市豊玉町で脚を負傷した状態で保護され、対馬野生生物保護センターにおいて治療を行っていたツシマヤマネコ(オス、成獣)について、野生復帰が困難な状態であることから、飼育下におけるファウンダー候補(注)として導入するため、同センターから西海国立公園九十九島動植物園に移動することとしましたのでお知らせします。(1月16日移動予定)

注:ファウンダーとは、野生由来で、繁殖のため飼育下に導入し、繁殖に成功した個体をいいます。

(保護収容個体の飼育下導入に至る経緯等)

1.保護の経緯

○平成22年8月6日、住民からの通報を受け、豊玉町曽において、とらばさみに脚をはさまれているところを対馬野生生物保護センター職員が保護収容。オスの成獣で、左後肢先端を負傷していた。

○当初、患部の化膿及び壊死が見られ、脚の切断が検討されるほどひどい状態であったが、野生復帰させることを目標に、脚の切断は行わずに長期にわたって複数回の手術を含め治療を施してきた。

○その結果、足裏の負担を軽減し、定期的に傷口の確認を行う等の飼育管理を行えば、積極的な治療はほぼ必要ない状態まで回復した。

2.個体の取扱いに関する検討内容

 ○脚を温存することはできたものの、野生復帰させた場合、傷の再発、悪化の可能性が高いなど野生復帰させることは困難と判断される。

 ○本個体は、繁殖が期待できる年齢(5歳程度と推定)であることから、ファウンダーとなり得る可能性は十分にあり、本個体が繁殖に貢献できれば、飼育下個体群の維持や遺伝的多様性の向上の観点から効果は大きいと考えられる。

○傷の状態は安定しており、かつ左後肢以外は健康なことから、適切な管理を行えば飼育下繁殖には支障がないと考えられる。

○以上のことから、本個体は飼育下におけるファウンダー候補として活用することが適当と考えられる。

○なお、本個体の飼育にあたっては、足裏への負担を軽減するための床材を敷くなど施設の改良や傷の状態の定期的な確認が必要。

※ 日動水と協議した結果、施設の改良等対応可能と申し出のあった飼育下繁殖第一拠点施設である西海国立公園九十九島動植物園に導入することとした。

3.今後の対応

○使用が禁止されているとらばさみによる負傷事故の再発を防止するため、引き続き、とらばさみの使用禁止等の普及啓発を行うとともに、とらばさみを発見した場合の情報提供を求める。

なお、平成22年の本個体の保護以降とらばさみによるツシマヤマネコの保護は発生していない。

○引き続き、日動水と連携しツシマヤマネコの飼育下繁殖の推進に取り組んでいく。