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九州地方環境事務所

ツシマヤマネコニュース

下島におけるツシマヤマネコの生息情報について

2012年05月24日
ツシマヤマネコニュース
今般、環境省から長崎県に委託し実施している調査の中で、平成23年12月から平成24年1月に下島北部で採取されツシマヤマネコのものと判定された3個の糞について、詳細なDNA分析を行った結果、3個の糞が全て同一個体の糞である可能性が高いことが確認されたのでお知らせします。
 また、平成24年2月29日に厳原町久和で採取された糞のDNA分析の結果、ツシマヤマネコのものが確認されたのでお知らせします。

1 確認の経緯
 環境省及び長崎県は、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種であるツシマヤマネコの生息状況を把握するための調査を実施している。ツシマヤマネコの生息数は、対馬全体で80~110頭と推定され、特に、対馬の下島においては、近年、確実な生息情報は非常に限られたものとなっている。
 対馬の下島における調査については、近年わずかに生息の可能性を示す情報がある下島南部の厳原町内山周辺を中心として、平成18年度以降、痕跡調査、自動撮影調査を行ってきたところであるが、平成21年12月に同町小浦周辺で、ツシマヤマネコの亜成獣が保護され、平成22年9月に美津島町黒瀬(城山)においてツシマヤマネコのオスの糞が採取されたことから、それまでの調査範囲を拡げてきたところである。
 平成24年1月24日に記者発表したとおり、平成23年12月から平成24年1月にかけて、下島北部の美津島町黒瀬(城山)において糞2個とビデオ撮影1回、同町今里において糞1個の確実なツシマヤマネコ生息情報が得られた。
 これら3個の糞について北海道大学の増田准教授に詳細なDNA分析を依頼した結果、全て同一個体である可能性が高いことが平成24年4月26日に確認された。
 また、平成24年2月29日に厳原町久和において採取した糞について、ツシマヤマネコの可能性があったため、長崎県環境保健研究センターにDNA分析を依頼したところ、ツシマヤマネコの糞であることが平成24年5月17日に確認された。
 なお、厳原町久和で採取されツシマヤマネコの反応があった糞については、今後、北海道大学にさらに詳細なDNA分析を依頼する予定である。

2 これまでの下島における調査の成果
 下島においては、ヤマネコのものと思われる糞等の痕跡は、1990年代まで確認されていたが、平成17年度公表の生息状況調査では、確実な生息情報を得ることができなかった。平成19年3月に下島において自動撮影カメラ調査によって昭和59年以来23年ぶりに確実な生息が確認されてからの確実なヤマネコの生息情報は以下のとおりとなっている。
 今回、詳細なDNA分析の結果、平成23年12月13日美津島町黒瀬(城山)、平成23年12月31日同町今里、平成24年1月10日同町黒瀬(城山)で採取された糞が同一個体である可能性が高いと判定された。

3 結果の評価
 今回の結果により、下島北部に生息するツシマヤマネコが美津島町黒瀬から同町今里までを行動範囲としていることが分かった。2地域は浅茅湾に面した半島部である地形的条件等を勘案するとツシマヤマネコの移動距離としては10数km離れており、この個体はこれまで知られているオスの行動範囲よりも広く移動している可能性がある。
 一方、厳原町久和における糞の発見により、平成20年7月以降はツシマヤマネコの生息が確認されていなかった下島南部で改めてツシマヤマネコの生息が確認された。今後、詳細なDNA分析の結果を踏まえ、関係行政機関、専門家等と協議し、追加の調査等について検討していく予定。