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九州地方環境事務所

ツシマヤマネコニュース

ツシマヤマネコ死亡個体の死因究明結果について(お知らせ)

2012年03月27日
ツシマヤマネコニュース
平成24年2月13日に対馬市上対馬町河内で収容されたツシマヤマネコの死体について、死因の特定のための検査の結果、死亡個体の咬傷からイエネコのDNAが検出されたこと等から、イエネコによる攻撃が死亡につながった可能性が高いことがわかりましたので、お知らせいたします。

Ⅰ.死亡個体について
1 収容された経緯
収容されたツシマヤマネコは平成22年1月2日(土)に対馬市上対馬町河内でイエネコに襲われているところを保護され、平成23年6月8日(水)に対馬市上対馬町河内で放獣され、その後は追跡調査により河内周辺で生存が確認されていました。対馬野生生物保護センター(以下「センター」といいます。)では追跡期間中の平成23年9月5日と平成24年1月2日の2回、捕獲を実施し、血液検査等の詳細検査により健康状態を確認していました。検査後は捕獲地点で放獣され、その後も追跡調査により2月3日(金)まで生存が確認されていましたが、2月13日、上対馬町河内でセンター職員が死体を発見し、回収しました。

2 個体の情報
(1)性別 メス
(2)年齢 成獣
(3)体重 1,850g
(4)個体の状況 栄養状態不良

Ⅱ.死因の究明の経緯について
1 外景検査
  収容後、センターで計測と外景検査を行い、やせていたことから衰弱死したものと推定しました。

2 病理検査
山口大学農学部獣医学科獣医病理学研究室(久保正仁助教)に依頼した病理検査の結果左胸部に直径1.5mmの孔が2cm間隔で2カ所認められた他、左胸壁の裂傷、肋骨の骨折、化膿性胸膜炎が認められました。何らかの小動物により襲撃され咬傷を負い、咬傷により化膿性胸膜炎が発症し、裂傷や化膿性胸膜炎によって衰弱し受傷数日後に死亡したものと診断されました。

3 咬傷周辺組織のDNA検査
長崎県環境保健研究センターに依頼した、咬傷部周辺組織のDNA検査の結果、死亡個体の咬傷部周辺の組織からイエネコのDNAが検出されました。

4 目撃情報
 平成24年1月30日、上対馬町河内の住民から、この個体と考えられるツシマヤマネコがイエネコに追いかけられている所を目撃したと情報提供がありました。

5 死因について
  病理検査結果及び咬傷周辺組織のDNA検査から、この個体はイエネコによる襲撃を受けて死亡したと考えられます。

Ⅲ.今後の対策について
  対馬市及び長崎県と協力し、対馬市ネコ適正飼養条例に基づき、ネコの適正飼養の徹底を図るため、市の広報等による普及啓発を全島的に行う予定です。


参考1 イエネコによるツシマヤマネコへの被害状況
イエネコによってかみ殺されたと考えられるツシマヤマネコは、平成23年7月に上県町鹿見で1頭見つかっています。また、今回死亡した個体は当初イエネコに咬まれたため保護されています。
イエネコの感染症であるネコ免疫不全ウイルス(FIV。通称ネコエイズウイルス)に感染したツシマヤマネコはこれまでに3頭が確認されています。また、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染したツシマヤマネコがこれまでに1頭確認されています。これらのツシマヤマネコは、闘争などによりイエネコからウイルスを感染させられたと考えられています。

参考2 対馬市におけるネコの適正飼養推進事業について
 対馬市ネコ適正飼養条例により、市内の飼いネコにはマイクロチップによる個体登録が義務づけられています。また、不妊化処置と室内飼育が推奨されています。
 現在対馬市では、対馬地区ネコ適正飼養推進連絡協議会により「ネコの健康生活サポートキャンペーン」が展開されています。このキャンペーンは、対馬市内の飼いネコにマイクロチップによる個体登録、不妊化処置、ワクチン接種などを無料で提供するものです。前身となる活動は九州地区獣医師会連合会によって平成12年から開始されており、平成24年2月末までに1,993頭のネコが参加し1,713頭がマイクロチップによる個体登録を受けています。

参考3 河内区における飼いネコの状況について
 上対馬町河内区で飼育されている飼いネコは、ほぼ全ての個体が対馬地区ネコ適正飼養推進連絡協議会による「ネコの健康生活サポートキャンペーン」により個体登録や不妊手術を実施済みです。